基本データ・おススメ度
『ラブ・アゲイン』
原題:Crazy, Stupid, Love.
2011年 アメリカ
監督:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア
出演:スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ジュリアン・ムーア、エマ・ストーン、マリサ・トメイ、ケヴィン・ベーコン
おススメ度★★★☆☆(3/5)
ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの「ラ・ラ・ランド」の前の共演作。けっこう笑わせてくれます。そして切ない。ラブコメにしては、あり得ないほどのハッピーエンドでもなく人生の切なさを残したラストが良い。中年夫婦、若い男女、思春期の恋…三世代の恋を描いた良作。 それにしても邦題がひどい。それで敬遠する人もいるのでは?僕はキャストに惹かれて観ましたが…。
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◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
20年以上連れ添った妻に浮気され離婚を突き付けられたキャリー(スティーブ・カレル)は、妻を見返そうとバーに通い、ナンパ男・ジェイコブ(ライアン・ゴズリング)と知り合う。かわるがわる女を持ち帰るモテ男に、服装から会話術まで指南を受ける。
最初はうまくいかなかったマジメ中年のキャルだったが、やがて、同じく中年の女性・ケイト(マリア・トメイ)のお持ち帰りに成功する。途端に自信をつけ、計9人の女と寝るキャル。
一方、ジェイコブは、身持ちの固そうなハンナ(エマ・ストーン)に惚れるが、あまりに女たらしのジェイコブを、ハンナは相手にしなかった。
キャルの家には17歳のベビーシッター・ジェシカがいて、息子のロビーはジェシカのことが好きだったが、ジェシカは実は密かにキャリーに熱をあげていて、友達のイケイケ女に「うんと年上の人を好きになった。どうすればいい?」と相談していた。イケイケ女に「そんなもん、セクシーな写真を送りつけてやれば一発で落ちるよ」とアドバイスされる。
妻(ジュリアン・ムーア)は、浮気相手のデイビット(ケビン・ベーコン)と楽しくやっているが、どこかで元夫キャルのことが気になっていた。
それぞれの悩みを抱えた彼らの恋愛群像コメディ。
==以下ネタバレ==
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ネタバレあらすじ
息子・ロビーが学校で問題を起こし呼び出された元・夫婦は教室の廊下で再会する。お互いの気持ちを話すうちに、復縁に向けて良いムードになってきた…ところが、ロビーの担任は、キャルがバーで持ち帰った中年女・ケイトだった。
ケイトは息子の話などそっちのけで「独身って言ってなかった?」「勃ちが悪いからって45分もフェラさせたよね?」などと妻の前で思い切りキャルをなじる。当然、妻のエミリーは激怒。
ハンナはつきあっていた彼氏の煮え切らなさにイラつき、女たらし・ジェイコブの元にやってくる。二人は付き合いだすことに。
ジェイコブは、真面目な女性との付き合い方がわからず、キャルに電話で相談する。
キャルは妻と復縁しようと、15歳の時の出会いの思い出である風車の模型を庭につくり、息子たちの協力を得て、妻に復縁を迫る計画だった。
しかし、そこに現れたのはジェイコブとハンナ。ハンナは実は、キャルが17歳の時に妻との間に出来た長女だった。
ジェイコブの女たらしぶりを散々見ているキャルは当然、二人のつきあいを認めるわけもなく「別れろ」と怒る。
一方、ベビーシッターのジェシカの家では、両親がジェシカのタンスの中から「キャルへ」と書いたジェシカの全裸の写真を発見する。以前に友達にアドバイスされたやつだ。しかし、実際にはただタンスの中にしまっていただけなんだけども、誤解した父親は激怒し、車でキャルの家へ向かう。
キャルとジェイコブたちが揉めているところへ、ジェシカの父親が殴り込んでくる。タイミング悪く、妻の浮気相手デイビットも登場し、登場人物勢ぞろいの修羅場となる。
誰より傷ついたのは息子のロビーだった。思春期の彼にとって、ずっと好きだった女の子が、自分の父親のことを好きだったという事実は耐えられないもので、父・キャルに軽蔑の視線と親子断絶の意志表示を示す。
ロビーの中学校の卒業式。ロビーは卒業生代表でスピーチをすることに。ロビーは壇上で「この世に真実の愛なんてない」とグレたことを言う。それを聞いて思わず壇上にあがってしまう父・キャル。
キャルは、ロビーが以前にジェシカのことを「ソウルメイトだ」と言っていたことを話し「この子は、真実の愛を信じているんだ。私も信じてる!」という。笑顔と取り戻したロビーはその場で「ジェシカ好きだ!」と叫び喝采を浴びる。
それぞれが「真実の愛」に向けて、再び歩き出す…。
つまりこういう映画(語りポイント)
ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの息が本当にピッタリで、実際に、劇中のセリフにある「ソウルメイト(魂の伴侶)」なのかも知れないとさえ感じる。
エマ・ストーンは声の低さが魅力。見た目は言うほど美人でもないのに、風貌と声のアンバランスさが魅力倍増の秘密かも。容赦なくライアンに突っ込みを入れるキャラクターがかわいい。
主人公が浮気する中年女性…は、「ザ・レスラー」でストリッパー役を演じたマリサ・トメイ。ちょっと恵まれない系の中年女の悲哀を感じさせたらピカイチ。妻と三人になってしまう教室のシーンが笑える。今回は完全にコメディ芝居に徹してます。
▼これは「ザ・レスラー」の時ですね。
前半は、まるでバブル期のようなイケイケナンパの話で先行きを心配したのですが、中盤からは、それぞれの揺れ動く想いを丁寧に、かつ笑わせながら見せてくれる、良質な映画になっていく。
別れた妻の気を引こうと、無理してバーでナンパを繰り返したり、服装を綺麗にしたり、でも、そんな努力はまったく別方向のことで、結果、妻の気持ちがさらに遠くに行ってしまうという構図は男女かかわらずフラれたほうが必ずやってしまう間違い。相手はそんなこと求めてないっていう。アルアルで面白かったです。
なにより良かったのはラストの扱い。
アメリカのラブコメなので、当然、ある程度はお約束の「みんなハッピーで良かったね」に向かうのは確かなのですが、その中でも…、
息子・ロビーと17歳のジェシカ…が、簡単にくっついて終わりではなく、息子は「卒業してお父さんに似てきたらプロポーズする」と言い、ジェシカもまた、お父さんのために用意した全裸の写真をロビーにプレゼントして「それまではこれ見て我慢して」と言い残し、去っていく。
ここでのジェシカの後ろ姿は、ずっと「子供に見られたくない。大人の女になるにはどうしたらいい?」と悩んでいた彼女が、これから大人のイイ女になっていくであろうことを確信させる心地よい色気に満ちている。当然、そう狙って撮っているカットですが。
登場人物全員の「成長」をこのワンカットに集約させている感があり、非常にセンスの良いカットだと思います。
それを受けてラストカットに少年の顔を持ってくるところも「この映画で最もピュアだったのはこの二人だったろ?そこ忘れずにいたいねって話なんだゼ。」とドヤ顔で親切に教えてくれているようで、ラブコメ観るやつの読解力なんてこんなもんだからちゃんと説明しなきゃ、なんて思われているようで、ムカつきながらも納得。
キャルと妻も「じゃ復縁しましょ」とは明言せず、お互いの気持ちをじっくりと探りあっている良いムード…まで見せたところでエンドロール。
たいした脈絡なく、適当に残った男女をくっつけてハッピー、なんてラブコメが多い中で、これは好感が持てます。
もしかしたら、やはりダメなのかも知れないという切なさと、でも、大いなる希望を抱かせて終わる。非常にバランスのとれた良いラストです。
中年夫婦の悩み、若い二人の想い、思春期の悩み…三世代の姿を描き、すべての世代に響くように作ってあるところが強い。
そしてズルい。
▼この映画では「変なおばさん」だったマリサ・トメイ。これは良かった~。