基本データ・おススメ度
『セブン・シスターズ』
原題:What Happend to Monday
2017年 アメリカ、イギリス、フランス、ベルギー
監督:トミー・ウィルコラ
出演:ノオミ・ラパス、グレン・クローズ、ウィレム・デフォー
おススメ度★★★★★(5/5)
これは面白い!人口過多からの一人っ子政策が施行されている2070年。月曜、火曜、水曜、木曜、金曜、土曜、日曜…と名付けられた7つ子が、ひとりの人間になりすまして生きている。もう、その設定だけで勝ちですね。想像以上のヴァイオレンス描写とキレッキレのアクションに脱帽。号泣ポイント多数。文句なしに楽しめる快作。
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◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
2040年、人口過多と食料不足。遺伝子組み換え作物は、副作用として人体に影響を及ぼし多生児の出産が相次ぐという逆効果となった。地球はピンチに陥り「児童分配法」が施行された。いわゆる「一人っ子政策」だ。
二人目以降の子供は、冷凍保存され、未来で目覚めさせるという。
老年のセットマンは、7つ子を産んで命を落とした娘の代わりに、生まれた7人の娘たちを秘密裏に育てることにした。7人の名前は、月曜、火曜、水曜、木曜、金曜、土曜、日曜。
政府の執拗なチェックを潜り抜けながら、カレン(たち)は、自分の名前と同じ曜日だけ外出を許された。
30年後、成長した7人のカレンは「冷凍保存されて良い時代に目を覚ますほうが良かった。」「週6日は監禁された人生なんて死んでるも同然。」と、自分たちの置かれた状況を嘆いている。
月曜は中でも、カレンに一番近いキャラで「私は私の人生を生きたい」と言う。短髪の木曜は「カレンなんて最悪、クソ人間だ。」と言っている。
それぞれにキャラクターの違う7人だが、外出曜日だけはウィックをつけ、化粧をし、同じ銀行員カレンに成りすました。
子供のころから、毎晩の報告会が定例だった。その日に起こったことを記録映像を見ながら全員で把握する。自分がカレンになる日のために。
ある日、夜になっても月曜が帰って来ない。なにがあったかわからないまま、翌朝、火曜は外出した。外に二人のカレンが出ることなど、今までもそうはなかった。ビビりながら、ルーティンをこなしつつ、月曜を探す火曜。
火曜が分配局の人間たちに捕まった。連れて行かれた施設は、冷凍保存される子供たちを一時的に収容しておく施設。7つ子であることはすでにバレている。そこにあらわれた中年女性ケイマンの指示により、火曜は殺された…かに思えた。
火曜も帰宅しない。焦る水曜たち。月曜と火曜はすでに殺されたのか?
ビルの高層階にあるカレンの自宅、つまり7人の秘密のアジトに怪しい男たちが押しかけて来た。ビルの管理人を射殺し、部屋に押し入ってくる。分配局の人間にしては手荒すぎる。
「なにかが起こっている」ことを感じる水曜たち。
==以下ネタバレ==
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ネタバレあらすじ
行方不明の月曜と火曜以外の5人と、男たちと激しい死闘。男たちを撃退したカレンたちだが、日曜が刺され命を落としてしまう。
男たちは部屋の虹彩チェック装置を通過するために、火曜の眼球を持ってきていた。「火曜は殺された」と確信するカレンたち。一体、何者が私たちを消そうとしているんだ?
水曜日。水曜は「もうそんな必要もない」と、いつもの変装なしに外出する。前日、会社の同僚ジェリーが「知ってるぜ」と脅し文句を言ってきたことを「何を知っているのか」探るのが水曜の任務とされた。
ジェリーの家に行く水曜。てっきり7つ子であることがバレていると思った水曜だが、それは勘違いで、ジェリーが掴んでいたのは、カレンとネイマンとの取引のことで、社内でのカレンの昇進を俺に譲れと脅してきていた。
ネイマンとの取引なんて、誰も知らないこと。今、ここにいない月曜か火曜が絡んでいると思われる、残ったカレン達には寝耳に水の話だった。おまけに、契約書を確認しようとしたジェリーが男たちに銃殺され、水曜を追ってくる。
必死に逃げる水曜。レシーバーで金曜たちが水曜に指示を出しながらの逃亡劇。しかし、水曜もビルから落下して死んでしまった。
そんな時、部屋に分配局で働く男が訪ねてきた。警戒するカレンたちだったが、男はどうやら7人のうちの誰かと付き合っている彼氏らしい。そんな話も初意味のカレンたち。土曜が、男の彼女になりすまして部屋に行き、誰とつきあっていたのかを探ることにする。会話の中から、土曜は処女だとわかる。
男の部屋を訪ねた土曜は、男相手に初体験をする。実は嬉しい土曜。「週に一回じゃなく毎日会いたい、前にも言ったけど、月曜日以外もね」との男の言葉に、男とつきあっていたのは月曜だとわかる。
しかし、翌朝、男が外出した後、部屋に押し入った男たちに土曜は射殺されてしまう。「みんな愛してる」の言葉を最後に絶命する土曜。
土曜が入手した通信データから、月曜が施設の中でまだ生きている姿を発見して喜ぶカレンたち。
部屋にいた木曜と金曜。そこに男たちが来る。一旦は逃げ出した二人だが、金曜は部屋に戻り、電子レンジに爆弾を仕込み時間をセットした。部屋にガスを放出し、男たちが押し入ってくるのを待つ。「金曜、なにしている!戻ってこい!」と叫ぶ木曜だが、金曜は「今、あんたにすべてのデータを送った。月曜を助けにいって。私がこれでいい。みんながいないと私は生きられない。」とつぶやき「みんな愛してる」の言葉と共に、男たちもろとも吹っ飛んだ。
愕然と、路上に倒れ込み、泣く木曜。
木曜は、月曜とつきあっていた男の車に乗り込み「私たちを売りやがって」と迫るが、男は実は何も知らず、ただ月曜とつきあっていただけだった。7つ子のことを知った男は、愛するカレンのために、木曜たちに協力する。
男の協力を得て、遺体のフリをして施設に入り込む木曜。そこで見たものは、冷凍保存なんて嘘で、子供たちは全員、焼き殺されていた事実だった。
施設に捕まっていたのは月曜ではなく、眼球を抜き取られながらもまだ生きていた火曜だった。
その頃、パーティを控えたケイマン議員と月曜が会っていた。月曜は、他のカレンを裏切り「ひとりのカレン」になるつもりだった。月曜がケイマンと取引をし、政治資金を不正送金。ケイマンが、そのかわりに他の姉妹を全員抹殺する手はずだった。月曜が、姉妹たちを裏切っていたのだ。
それを知った木曜は、火曜がつけていたウィックを装着し「カレン」になりすまし月曜と対峙。格闘の末、カレンになりすましてパーティに参加する。火曜と男が、ケイマンのパーティ会場に、子供が焼き殺される映像を流し場内は騒然となる、これでケイマンの悪事が世に知れ渡った。
会場にきた血だらけの月曜が木曜に銃を向けるが警備員に撃たれる。逃げ出すパーティ参加者たち。
裏切っていたとはいえ、姉妹である月曜の元にいく木曜。月曜は泣きながら「この子たちは助けてほしい」と自分のお腹を指す。月曜は妊娠していたのだ。双子である自分の子供たちを、今の制度から守りたい想いから、姉妹を裏切った。それを知った木曜たちは、月曜を許す。月曜はそこで絶命。
ケイマンは死刑を免れなくなり、児童分配制度は廃止となった。
飼育器の中で育つ、月曜の胎児ふたり。それを見ながら、新しい眼球を入れた火曜は「テリー」という名前で生きていくと話す。男が木曜に「君の新しい名前は?」と聞くと、最初に「カレンなんてクソだ」といっていた木曜は、「カレンよ、私は、カレン・セットマン」と答えた。
つまりこういう映画(語りポイント)
原題は「月曜に何が起こったのか」。この原題の本当の意味がわかったとき「なるほど!」と膝を打つ。二重三重の意味が込められた素晴らしいタイトルです。
設定から想像するより、遥かにヴァイオレンス度が高く驚きました。
虹彩認証を通過するために眼球を持ってくるとか、指紋で反応する銃を操作するために指を切り落とすとか、思い切った描写と、これも想像を超える激しいアクションに度肝を抜かれる。
7つ子設定のオイシイところは、同じ主人公が7人いるようなもので「主人公が死んでしまった」という、通常なら一回しか使えないサプライズ演出を何度も使えるところ。「まだ違うカレンが残っている。何人かは生き残らせるんだろう」と想像はついても、それでも主役が死ぬという設定は無条件に「うわ!」となるし、特に、比較的おとなしい金曜が、自分の身を犠牲に男たちを撃破するあたりは泣けますね。
姉妹のうちひとりを裏切り者にすることで「みんなが知らない秘密がいくつもあった」という設定を作り出し、しかも、ただの悪人にするのではなく、それも、作品全体のテーマに通じる「子供たちを守りたい」想いだったとしたことで救いを作っている。それによって、観客も裏切り者・月曜を恨まずに映画を見終えることができてスッキリする。
あっちこっち、脚本が秀逸。
最初に、遺伝子組み換え作物の影響で双生児が生まれやすくなったという設定も、物語に信ぴょう性を与えているし。
ひとり7役を演じたノオミ・ラパスは、正直、最初は「もうちょっとキレイ案女優さん使ってほしいな」と思ったもんですが、アクションシーンでの迫力の表情と動きを見て、この人で良かったんだと納得させられた。素晴らしいアクション!
物語にどっぷり入り込む前は「月曜がストレスたまるから嫌だな」とか「日曜って、一生、働かなくていいやん」などと余計なことを考えたものですが、観終わってみると、実はそこもちゃんと考慮されていて、それぞれが曜日に合った性格に育っているのですね。
やはり、月曜はストレスがたまるのですよ。金曜はおとなしい性格になるのですよ。日曜はやはり社会慣れしてないから最初にあっさり殺されるし…なんて、そんなことまで語れてしまう、オイシイ設定ではある。
いやはや、これは面白い映画でした。