【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『追憶の森』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『追憶の森』
原題:The Sea of Trees
2015年 アメリカ
監督:ガス・ヴァン・サント
出演:マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツ
 おススメ度★★★☆☆(3/5)
 カンヌで大ブーイングを浴びた問題作。宗教的な死生観をネタにするのは、理解できない人にはできない。理解できる人にとっては脚本が甘く感じる…という、どっちに転んでも損な選択。ただ、マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツ…主演三人の演技は絶品!あんな心が震える熱演を見せられたら、とても駄作なんて言えません。甘すぎる脚本をカバーするような、俳優の素晴らしい演技を堪能する映画。

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 ▼目次

 あらすじ(ネタバレなし)

 アメリカ人のアーサー(マシュー・マコノヒー)は、自殺をするために日本の青木ヶ原に来た。睡眠薬を飲みながら死に場所を探していたアーサーは、樹海の中で道に迷った日本人、タクミ(渡辺謙)と出会う。

 タクミを助けようとするが、樹海の中は磁場が狂っており、携帯電話の電波も通じず、出口にたどり着けない。
 
 樹海の中を彷徨いながら、二人はお互いの家族の話をする。タクミには、妻のキイロと娘のフユがいる。アーサーには、いつしか喧嘩ばかりするようになった精神不安定な妻、ジョーン(ナオミ・ワッツ)がいる。

 タクミは「森の中で人の声がするのはタマシイなんだ」とか「水辺は自分にとっては楽園で楽しい事を思い出せる」「霊が死んだ後には花が咲くんだ」とか、いかにも神秘的なことを言う。意味がわからないアメリカ人のアーサー。

 物語は、アーサーが語る回想シーンと並行して進む。

 喧嘩ばかりしていた妻ジョーンが脳腫瘍になった。ショックでふさぎ込む二人だったが、病気が、お互いへの文句や夫婦間の争いごとを保留にした。手をとりあって闘病生活を送る二人。

==以下、ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 樹海の中、アーサーとタクミは豪雨で死にかけながらも、テントを発見し、レシーバーやライターを手に入れ、火を起こすなどして、なんとか生き延びる。

 どうやら妻ジョーンが亡くなっているらしく(死因はまだ明かされない)アーサーは「俺が悪かった」「許してくれ」と号泣する。傍らのタクミは、アーサーの気持ちを察してもらい泣きしながら話を聞いている。

 ジョーンが精神不安定でアルコール依存症になった原因は、数年前のアーサーの浮気だった。それまで仲の良かった夫婦は、そこからギクシャクしはじめた。つまり、妻をアルコール中毒にしたのも、病気にさせたのも、すべては自分のせいだと。自分を責めるアーサー。「俺たちはお互いへの接し方を間違っていたんだ」と言う。

 朝、衰弱したタクミは「(自分を置いて)先へ進め」と言って横たわる。アーサーはタクミに毛布をかけ「必ず戻る」といって、無線レシーバーを手に先へ進む。

 回想から、ジョーンの死因がわかる。手術に成功して二人で喜び合っていた時、リハビリ病院へ移動する救急車がトラックと交通事故を起こしたのだった。

 レスキュー隊に救助されるアーサー。タクミは樹海に残したままだ。

 告別式、アーサーは「俺は妻のことを何も知らなかった。好きな色も、好きな景色も」といって落ち込む。

 病院で回復したアーサーは、樹海にタクミを残してきたことを訴えるが、監視カメラの映像に、タクミらしき人物が写っていないと言われる。キイロ、フユなんて名前も「そんな名前はない」とバッサリ。

 仕方なしに、自分でもう一度樹海に入り、最後にタクミがいた場所に行くと、毛布の下には花が咲いていた。

 タクミは実在せず「(ジョーンの)タマシイ」だったと理解するアーサー。

 そして、日本語を知っている学生からの情報で、タクミの妻と娘の名前だと思っていた「キイロ」「フユ」は、実は「色」と「季節」なのだと知って感動する。

 ほっこりして、完。

つまりこういう映画(語りポイント)

 簡単にいうと、アメリカ人アーサーが「人は死ぬとタマシイとなり、大切な人を守り続ける」「ずっと傍にいる」と云う、日本の神道の教えを理解し、絶望から立ち直っていく…というお話。

 カンヌで大ブーイングだったらしく、映画は酷評されています。

 酷評されている理由はいろいろあるでしょうが、一番の敗因は、宗教によってまったく違う「死生観」をメインのネタに持って来たことでしょう。理解できない人にはできないし、理解できる人にとっては脚本が甘いと感じる…どっちに転んでも損な選択なのです。今どき、外国人が、日本人の死生観を聞いて「へー!すげー!」と思うのでしょうか?その辺はわかりませんが。「外国人から見た神秘の国・日本」の描写と共に、感覚が時代遅れ過ぎる。

 つまり、誰でも書けるレベルの脚本の浅さ…が酷評の理由。

 脚本といえば「アーサーと妻ジョーンのエピソードがありきたりすぎる」とも言われていますが、そこは個人的には擁護したい。男と女、妻と夫が犯す間違い…は普遍的なもので、そこに意外性は不要。妻への懺悔を口にしながら号泣するマシュー・、マコノヒーの熱演を見せられたら、とても文句は言えません。傍らの謙さんの絶品の表情と共に心にグイーッと刺さってくるものがあります。ナオミ・ワッツは個人的に大好物な女優さんです。名作「21グラム」に匹敵する圧巻の泣き芝居。

 主演三人の熱演、演技合戦が掛け値なし素晴らしい。ずばり、この映画を観る価値はそこにあります。そこにしかありません。

 含めて、映画の大半を「ありぎたりな脚本だけど良い映画だ」と思って観ていました…最後のオチの前までは。

 それくらい、最後の「渡辺謙さんはナオミ・ワッツの魂だった」という心霊オチと、その後の妙にファンタジックな演出が台無しにしちゃった感。

 そこに、最後の最後に感動ポイントとして持って来た「キイロ」「フユ」のネタが、失笑感のダメ押しになっちゃいました。ネット上で「ミドリ」「アキ」にすればよかったという意見を見掛けましたがまったく同感。なら、随分と評価が変わったかも?特に日本人には。

  あと、あれほど怖いメにあった樹海に、気軽に戻っていくのはいかがなものでしょう?樹海の怖さを知っている日本人には理解不能。せっかく前半で「恐怖の森」を強調していたのに…もったいない。
  
▼ナオミ・ワッツ「21グラム」はこちら

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