【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『WILD ワイルド わたしの中の獣』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『WILD ワイルド わたしの中の獣』
原題:WILD
2016年
監督:ニコレッテ・クレビッツ
出演:アニア(リリト・シュタンゲンベルク)、ボリス(ゲオルク・フリードリヒ)、ジェニー(ザスキア・ローゼンダール)、キム(ジルク・ボーデンベンダー)
 おススメ度★★☆☆☆(2/5)
 狼に恋をした女の物語。普通にみると理解不能な変態ストーリーではありますが、全体をメタファーだと考えると決して難解ではない。寓話というには暗く、前衛的な造りのため、一般的にはおススメしにくい。無理な人には徹底的に無理な映画。個人的には嫌いではないですが。シンプルで見やすいから、話のネタにどうぞ。

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◆目次

 

あらすじ(ネタバレなし)

 小さなIT企業で勤務するアニア(リリト・シュタンゲンベルク)は、やや暗い性格で友達も少ない。彼氏はもちろんいない。ひとりで射撃の練習をしたりしている。

 会社の懇親会。酔っぱらって車の中でキスをしたり騒ぐ同僚をみて「降ろして」と、二次会には参加せず帰宅。

 翌朝、公園で狼を発見。一目ぼれしたようにみつめるアニア。

 肉屋さんで「大型犬に食べさせる」と言って高めの肉を購入し、森の木に刺しておくが、翌日になっても食べてはいなかった。入院中の父にそのことを話すと「病院の食事もまずい」と答える。

 今度は、森にウサギを放しておくアニア。

 会社の上司ボリスに仕事で同行した後、食事に誘われるが狼で頭がいっぱいのアニアは断る。ボリスちょっと嫌なやつでアニアのカラダが目当てのようだ。

 「狼を捕まえる方法」を調べるアニア。麻酔薬を調合し、自室では狼を捕まえた後の準備を着々と進める。

 アジア人の妙な集団の協力を得て、深夜の森で狼に麻酔矢を命中させ、捕獲に成功するアニア。倒れた狼に「こんにちわ。私はアニア」と挨拶をすると、そのまま自宅に連れて帰る。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 翌日、ヘルメット等で武装をし狼を入れた部屋の中に肉を届けにいくが、暴れる狼。怪我をするアニア。

 高い肉を買いすぎて現金がなくなってきたアニアは、カード決済でピザを購入する。夜、道で酔っぱらっている上司のボリスに会い。身体をちらつかせながら「おカネはある?」と聞き、ボリスの財布を奪って逃げる。

 帰り道、ファストフード店に入り込んだアニアは、他の客が食べ残したものを手でガツガツ食べ、店員に追い出される。

 部屋で全裸になったアニアは、狼の部屋から血を床につけていき、トイレまで誘導。そのまま、自分の股間に塗ったものを狼に舐めさせエクスタシーを得る。

 部屋で狼が暴れ、悪臭もすることで大家さんに怒られる。

 狼が壁を壊した。境がなくなり、威嚇してくる狼。危険を感じてダストシュートから逃げるアニア。

  夕刻、アニアが自宅に戻ると、狼がベランダで外をみて不安そうに泣き声をあげている。それを見てアニアも泣く。狼がアニアを気にする。

 ようやく狼もアニアになついてきたようで、寝ているアニアとじゃれあうようになる。狼に愛撫されて興奮したアニアは、アパートの階段の手すりをつかって自慰をした。

 キッチンで狼にいろいろ話しかけるアニア。部屋に放し飼いにしているウサギはまだ無事だ。ウサギに「頑張って」と声をかける。

 会社で上司ボリスに呼ばれ、祖父の容態が悪いことを話す。「休暇を取るか」と聞くボリスに「いえ、退職するわ」と答え、引き留められる。「運命の出会いがあった」と言ったり「部屋が臭い」といったり、いろいろおかしいアニアを心配するボリス。

  一度は部屋を出て行った妹が彼氏と別れ、部屋に戻ると電話があるが「わたしももう一人じゃない」と断るアニア。病院からは電話で祖父の最期がいよいよ近いと告げられる。

 退職届を出しにボリスのオフィスを行く。清掃員にやらせかけていたアニアをみて注意をしたボリスと、オフィスの机でセックス。すぐに終わってしまったボリスに「まだやりたい。やって。」と迫るが、ボリスは「すぐにもう一回は無理だ。時間がかかる」と、イクなりすっかりスに戻る男と、まだやりたい女の構図。ボリスは無理やり、今度はバックでやろうとするがやはり無理。2人はそそくさと服を着る。

 ボリスが先に出て行った後、アニアは、デスクの上でウンコをし、その後。書類を並べて火をつける。激しく燃え上がる火。

 帰宅。とうとう、ウサギは死んでいた。そこに大家さんが訪ねてくる。部屋の外から「部屋の中で何をしてるのか知らないけど、もう限界よ。通報させてもらう。」と通告。

 アニアは、狼に首輪をつけ部屋を出て、屋上でホームレス生活を始める。

 心配してアニアの部屋に行ったボリスは、部屋の惨状に驚く。携帯を鳴らすが、キッチンに置きっぱなしの携帯が鳴るだけ。ボリスは気配を感じて屋上へ。

 屋上で、アニア&狼と対峙するボリス。「ウチに来い。犬小屋も作ってやるから」と言うボリスを狼が襲い、殺してしまう。

 逃げ出すアニアと狼。パトカーとすれ違う。

 どんどん野生化しているアニアだが、砂漠を走る狼に追いつけず倒れてしまう。狼はアニアの元に戻ってきて隣に座る。

 しかし、翌朝、野原で目を覚ましたアニアは、狼がいなくなっていることに気づく。空に向かって顔をあげ、笑うアニア。

つまりこういう映画(語りポイント)

 「依存」と「現実逃避」

 「狼」を「普通の男性」に置き換えると、単に、暗くて孤独な女性が、ある人に一目ぼれし、必死にアタックし一度は手に入れる。すべてを投げうって愛するが、最終的に相手はどこかに去っていってしまう。…という、ただそれだけのストーリーになる。

 恋愛依存というものは普通にあって、それ自体は悪いこととは思いません。愛する人の思考・嗜好に合わせて生きることの喜びを感じながら「それさえあれば何もいらない」状態というのは、幸せなことです。狼に一目ぼれし、どんどん野生化していく主人公は、まさに「相手の世界にどっぷり浸って生きる」その喜び。

 ただ、主人公アニアが異常なのは、相手が狼であることで、それは、例えば生身の女性との交際ができず二次元のキャラクターに恋をするオタク男性にも似ている。もっと変態的なところでは、大人の女性を扱えないもんでロリコンに走るとか、逆に熟女やオヤジに走るとか。自分が手にいれやすい範囲で、かつ、自分の一方的な力で手に入れられる(と思っている)相手で代替しようとする行為。

 逃避なのですね。どうしようもない現実から逃避して、代わりのなにかを求める…非常に痛々しいけど、ただ、本人がいいなら(そして、それが犯罪にならないなら)別にいいけど、という話ですね。

 荒野に出てから、走っていく狼に追いつけなくて倒れてしまうシーンや、翌朝起きたら狼がいなくなっているラスト。彼女が空に向かって諦めたような笑顔を見せますが、それは「最終的には、人間はひとりで生きていかねばならない」という事実を受け止め、なにかを決意した主人公、という表現です。

 「一匹オオカミ」なんて言いますね。実際に狼が孤独な生き物なのかどうか知りませんが、狼=孤独、というイメージから、脚本家も、象でも豚でもなく、狼をチョイスしたのでしょう。そこになにかしらの比喩を入れ込むために。

 暗く、ミもフタもない物語ではあります。きっと、それ以上の深いメッセージがあるわけでもないと思います。ただ、観た人が何かを感じてくれれば…と、観客の感性に託すタイプの映画。

 題名のワイルド=野生・自然、を、文明や人間との対比にしたかったのだとすれば方向性が違うから、きっとそうではないでしょう。

 ストーリーがシンプルで上映時間も長くないこと、この物語にどうやって落とし前つけるのか気になること、加えて、またエロいシーンがあるかも知れないぞ!という期待で、最後まで観れてしまいます。デスクの上でのアニアの脱糞シーンなどは、その筋のマニアにはたまらない?のかも知れませんが、普通はドン引きでしょう。

 狼との同居が始まるまでの前半がかなりかったるいので、時間軸をずらすなどの工夫は欲しかったですが。

 絵も綺麗で、カメラワークもところどころ面白いし、映画センスは高い映画といえます。