基本データ・おススメ度
『ドーベルマン』
原題:Dobermann
1997年 フランス
監督:ヤン・クーネン
出演:ヴァンサン・カッセル、チェッキー・カリョ、モニカ・ベルッチ
おススメ度★★☆☆☆(2/5)
タランティーノの登場で活気づいた90年代後半の映画界に登場した、フランス産のアメコミ風バイオレンス。若いヴァンサン・カッセル&モニカ・ベルッチを擁したスタイリッシュかつド派手なアクション…中身は何もない映画のため、決して名作とは言われないけども、当時を知るリアル世代にはたまらない。マンガ・テイスト全開の「めっちゃ狂暴なルパン三世」
<広告>
◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
パリで連続強盗事件が発生。犯人はドーベルマンと名乗る男が率いる強盗団で、リーダーのドーベルマンことヤン・ルパントレックは生まれながらの強盗である。彼の仲間には、薬に溺れ常に殺人の衝動に駆られているムス、斧を振り回す犬好きの巨漢ピットビュル、聖書の中に手榴弾を携帯する神父、同性愛者で女装好きのドラッグクイーン・ソニア、廃車回収業者でありマシンガンの使い手レオ、ヤンの恋人で爆弾の扱いに長けた聾唖の美女ナット、狙撃の名手にしてナットの兄であるマニュなど、多彩な顔ぶれが揃っていた。
鮮やかな手口で犯行を成功させる一味に対して、追い詰められた警察は目的の為には手段を選ばない非情なクリスチーニ警視をドーベルマン一味の壊滅作戦に登用する。(wikipediaより)
ここがネタバレ!
ストーリーを追うことにさほどの意味はない。
ネタバレという類も特になく、ただひたすら、ドーベルマンたちと警察の派手なドンパチ。
警察側がまるで悪徳刑事。手段を選ばない外道ぶりのため、強盗団であるドーベルマン組が正義に見える。
モニカ・ベルッチは耳が不自由と云う設定のためセリフは一切ない。手話のみ。
悪徳刑事の最後のシーンなど、ややグロい描写もあるので注意。
<広告>
つまりこういう映画(語りポイント)
1994年「パルプ・フィクション」パルム・ドール受賞。
それはいわば、バイオレンスや暴力描写に「ここまでやっていいよ」「こんなにふざけてもいいんだぜ」などというお墨付きが出たようなもので、それまで息を潜めていた「そのテの」映画人たちが意気揚々とタランティーノの後を追いかけ始める号令になった。
ちなみに、同時期、北野武監督の「HANA-BI」がベネチアでグランプリを獲得したり、今村昌平監督の「うなぎ」がパルムドールと、日本映画界も「ウチら、世界に通用するやん!」とばかり、グンと士気が高まっていました。
そんな中で出てきた本作は「フランス映画なのにアメコミ風」という珍しさと、売り出し中のヴァンサン・カッセル、その後にカッセルと結婚したモニカ・ベルッチと、俳優陣の人気も相まって公開当時にはそれなりに話題になりました。
売りであるドンパチ・シーンも、CG全盛の今となってはさほど物凄いとは言えないですが、ヘルメットの中に手りゅう弾を入れて頭ごと吹っ飛ばすとか、モニカ・ベルッチがセクシーな衣装でバズーカをぶっぱなすとか、仲間である神父は聖書の中に常に手りゅう弾を忍ばせているとか、マンガ原作らしい、無茶な勢いに溢れています。
監督は日本アニメも好きらしく、強盗団の仲間たちの個性的なキャラクター設定に、アニメ的センスが伺える。「めっちゃ狂暴なルパン三世」といったところ。
悪徳刑事の最期のシーン(走る車から上半身を出され、頭を地面に擦り付けられるアレ)は、ちょっとやりすぎなくらい。
この映画のなんたるかを理解するには、そんな当時の情勢と、無茶な企画を勢いだけでやっちゃった的な「作り手の心意気」を感じる必要があります。
映画の内容が、なにもないだけに…。
特に思い入れのない方が、この映画を「面白くない」というのもわかります。それでも「ヴァンサン・カッセルかっけー!」とか「モニカ・ベルッチやるなー!」と感じるなら、それで正解です。
そういう映画なので。
モニカ・ベルッチは「アパートメント」でヴァンサンと共演したのが2年前の1995年。顔つきやスタイル自体は、まだ「アパートメント」同様の「ゴージャス・キャラになる前の普通にキレイなお姉さん」っぽいのですが、銃口をチ●コに見立てて舌で舐めるとか…ぶっとびキャラで、決して普通に大人しい女優さんではないことが、すでに垣間見えます。
主人公の仲間たちを、障害者、聾唖、ゲイ…等、一歩間違えたらタブー視されそうなキャラクターで揃えていることも「とにかく、殻を破りたい。風穴あけたい。」と云う意欲の表れ。
バイオレンスに抵抗のない人なら「こんな映画もあったんだ」と笑いながら観てもらえば。バイオレンス大好き?なら必須。「悪」をとことん味わいましょう。