基本データ・おススメ度
『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』
原題;Feher isten
2014年 ハンガリー・ドイツ・スウェーデン
監督:コルネル・ムンドルッツォ
出演:ジョーフィア・プソッタ、シャンドール・ジョーテール、リリ・ホルヴァート、ラースロー・ガールフィ
おススメ度 ★★☆☆☆(2/5)
ぶっちゃけ、あまり面白い映画ではない。ただ、ワンコの演技がとにかくすごい!どうやって撮ったの??という驚きの演技だけでも見る価値あり。
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◆目次
簡単にいうとこんな話(ネタバレなし)
飼い犬だったハーゲンが野良犬になり、やがて狂暴な野良犬たちのリーダーとなり人間に復讐を始める話。え?簡単すぎる?
ネタバレあらすじ
少女リリは複雑な家庭環境で育った。街には雑種犬に対して重い税金をかける法律が制定され、リリの父親は、彼女がかわいがっていた雑種犬ハーゲンを捨ててしまう。
リリは必死にハーゲンを探すけどみつからない。
野良になったハーゲンは、野犬狩りから逃げ、闘犬に買われてボロボロにされたりもする。そして保護施設に入れられる。施設でひどい扱いを受ける同族たちを初めてみたハーゲンは怒りに震える、犬だからよく感情はわからないけどどうやら怒っている。
ハーゲンは、どんどん狂暴になっていき、保護施設の犬たちのリーダーにのしあがる。250匹の獰猛な犬たちは集団で施設を脱走し、街を走り抜ける。人間を襲い、パニックに陥れる。
そこに、トランペットを持ったリリが現れるが、犬が変わってしまったかのように狂暴化したハーゲンは、リリのことをわかっているんだかわかっていないんだか。いまにも襲い掛かりそうな姿勢。
そこでリリがトランペットを吹く。音色は夜の街に響き、ハーゲンはおとなしくお座りをする。連れて、他の250匹もどんどんお座り状態になっていき、リリのトランペットの音色を聞いている。
みんな大人しくなったね。よかったね。終わり。
つまりこんな話(語りポイント)
人間=富族層、犬=貧困層に例えた比喩で「貧困」「虐待」「力の支配」等へのアンチテーゼを投げかけている。
古来から、人間と犬は友達でした。確かに主従関係には違いないけど、そこには人間同士に近い信頼関係の構築さえ可能であり、人間にとって犬は、お互いに癒しあえる力を持った特別な存在。そんな犬が、信頼している友達が人間を襲う図は、見た目の痛さ以上に精神的なショックを感じますね。それは、人間同士の裏切りや信頼関係の難しさ、といったメタファーかもしれないし、単なる動物ホラーと撮ろうとしただけかも知れない。作った人がどう考えているかは不明。
最後の少女のトランペットで犬たちがおとなしくなるシーンは、「神」であり「癒し」「救い」といった、やや宗教的な意味合いにもとれるし、もっと単純に「信頼」や「共有体験」の大切さを言いたいのかも知れない。
いろいろ取り様があるだけに、ややテーマを掴みづらいところはあります。
いっそ宗教的、哲学的な考えは横に置いて、最初に書いた「抑圧への反乱。」と見るほうがわかりやすい。
そんなことよりも!
ほんと「どうやって撮影したの?」と聞きたくなるワンコたちの演技が凄すぎる。
犬たちがちゃんと表情や仕草の芝居をしているのです。長廻しで撮ってイイとこ使おう…なんて呑気なやり方で撮れるレベルではなく、意図的に、犬に芝居をつけて、要求する芝居をさせているのです。
映画の目玉でもある250匹の爆走シーンも、そう簡単に撮れる代物ではない。ラストのお座りシーンもしかり。CGIでさえなければですが。
主に後半の、爆走シーンを含むワンコたちの演技を見るだけでも、この映画を見る価値はあります。