【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『ラブリーボーン』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『ラブリー・ボーン』
原題:The Lovely Bones
2009年 アメリカ・イギリス・ニュージーランド
監督:ピーター・ジャクソン
出演:シアーシャ・ローナン、マーク・ウォールバーグ、レイチェル・ワイズ、ローズ・マクアイヴァー、スーザン・サランドン、リース・リッチー、キャロリン・ダンド
 おススメ度★★★★☆(4/5)
 なんともカテゴリー分けが難しい映画。サスペンス、ファンタジー、ホラー、ハートウォーミング…。哀しい設定と激しい描写もあるけどテーマは「家族愛」。突然の哀しみに襲われた家族が、すべてを乗り越えて強く生きる決意をするお話。良作です。主役の女の子(シアーシャ・ローナン)がめちゃくちゃ可愛い。そして演技ウマっ!

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◆目次

あらすじ(ネタバなし)

 14歳のスージー・サーモン(シアーシャ・ローナン)の夢は、野生動物を撮るカメラマン。「サーモンってお魚みたいでしょ?」

 幸せな家庭。「うちに限って、理由もなく不幸が襲ってくることはない。」そう思っていた。

 スージーのモノローグ「わたしは14歳で殺された。」

「私を殺したのは近所の男。突然、カメラの画面に入ってきて写真を台無しにした。いろいろ台無しにした男。」少女趣味の連続殺人犯だった。

 24本のフィルムを全部使ってしまったスージーは、現像代が大変だと母に怒られている。子供の才能を潰す家庭ね、と言うスージーを見て、父親は「ひと月に1本ずつ現像しよう」と約束し、現像代を計算している。

 1973年12月6日の朝。母の手編みの毛糸の帽子をプレゼントされたが、あきらかに気に入らない様子のスージーは「我慢するのも勉強だ」と言って帽子を被る。

 学校、片思いをしていた上級生のレイから告られる。両想いになった。ロッカーの前でファーストキスをしようとするが、邪魔される。レイがメモをカバンに入れた。土曜のデートに誘われた。

 トウモロコシ畑で、レイがくれたメモを読もうとして風に吹き飛ばされる。メモを追っていると、近所に住む中年男性ハーヴィーが話しかけてきた。「俺の作ったモノを見に来ないか?」一度は断るが「手間をかけて作ったから人に観てほしいんだ」という言葉に反応して、畑の地下に作られた秘密の部屋に降りる。

 帰らせてくれないハーヴィーを振り切り、部屋を脱出するスージー。しかし、街には誰もいなくなっていた。自宅に戻っても誰もいない。バスルームは血だらけで、カミソリと自分のブレスレットが置いてあった。

 スージーは自分がすでに殺されていることに気付いた。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 夜道でルースは、スージーが走って逃げる姿を見た。幻想だ。そして、レイがスージーに渡そうとしたメモを拾う。

 家では、帰って来ないスージーを心配して家族が青ざめている。そして、トウモロコシ畑からスージーの帽子がみつかった。畑の地下の空洞には、大量の木の破片など、なにかを壊した後がみつかった。

 ハーヴィーの自宅にも警察が聞き込みに来る。部屋にはスージーのブレスレットが置いてあったが、警察は証拠に気付かず帰ってしまう。

 スージーは、天国と地上の間の世界にいた。

 幻想的な風景。美しい風景が不条理に展開する。レイを見かけて嬉しそうに呼びかけるが、走ってもたどり着けない。水に溺れる。湖の底に落ちていく。レイから受け取ったメモをみつける。ラブレターだった。
 ホリーという少女がスージーに話しかけ「過去を見ずに未来を見るのよ」とアドバイスし、一緒に天国に行こうと誘うが、天国に行くと過去の記憶はすべて消えてしまうと聞いたスージーは「私はここに残る」と言う。

 ルース・コナースは道で拾ったメモをレイに渡す。「これで死を理解できた。もし、近くにいるとしたら?」と言うルース。「あっち行け」とあしらうレイ。

 スージーのモノローグ「殺人犯は安堵していた。しかし殺人犯は、父親がどれだけ自分の娘を愛せるかということを知らなかった。」

 父親は、部屋にスージーがいる感覚を覚える。弟も「スージーを見たよ。部屋に入ってきて僕のほっぺにキスをしたんだ」と言う。そんな弟を抱きしめる父親。父は24本あるスージーが撮った写真のフィルムを月1本ずつ現像することにした。

 事件から11ヶ月が経過した。警察はとっくに捜査を打ち切っていたが、父親は、独自に事件を調べ、近所の人しらみつぶしに調べる。そんな父親に、母親も疲れ「いい加減にして」とキレる。担当刑事も、奥さんの心配をするべきだと助言。

 父親が、家にスージーの祖母(スーザン・サランドン)を呼んだ。祖母は「私がこの家を仕切る」と言い、子供たちの世話や家事を頑張る。しかし元々が雑な性格なもんで、めちゃくちゃなのだが、子供たちは喜ぶ。哀しみを忘れて未来へ進むよう、祖母は助言するが、母は家を出てしまい、カリフォルニアの果樹園で働き始める。

 妹のリンジーが愛犬ホリデーを散歩させていると。ホリデーがハーヴィーに向かって吠えた。何かを感じるリンジー。

 さらに時が経ち、リンジーは少し成長し彼氏ができた。キスをする妹を見て「追い越された」と感じるスージー。

 レイはルースの元に居た。スージーは、レイが自分のことを忘れようとしていると悟った。

 ハーヴィーは、妹リンジーが自分に疑惑を抱いている様子を感じてイラつく。父が最後のフィルムを現像すると、そこにハーヴィーが写っている写真があった。父もなにかを感じる。

 世間話を装い、ハーヴィーに近づく父親。「もう帰ってください」と言うハーヴィーについに「娘に何をした!」と突っかかる父。警察には「訴えられますよ?証拠もなくハーヴィーを逮捕できない」と怒られる。

 夜、子供たちにキスをした後、野球のバットを手にしてトウモロコシ畑に行く父。もはや精神的に追い詰められているようだ。

 その頃、スージーは「生きている時は憎しみを知らなかった。でも今は憎しみでいっぱい。おの男を一滴も血のない姿にしてやりたい!」と憎悪していた。ホリーは「あの男から解放されなきゃ。あの男に負ける気?あなたもそのうち理解する。みんないつかは死ぬの。」とアドバイスする。

 スージーの感情が乗り移ったかのように、夜のトウモロコシ畑を走る父。それをみてスージーが心配する。「戻って、やめて!」と語りかけるが、畑の中に偶然いたカップルに襲い掛かってしまい、カップルの男に逆襲される、激しく殴られ、大怪我をする父。病院に運ばれる。

 「パパは私たちを愛してくれている。助けなきゃ。」と、それまで怖くて避けていた家の中に勇気を出して入るスージー。

 そこで、過去にハーヴィーに殺された人たちの姿が見えてくる。6人目は…ホリーだった。最後にスージー。スージーは、自分が殺され、遺体を金庫に入れられている状況を見る。

 ハーヴィーの家に侵入するリンジー。床板の下からノートをみつける。
犯行計画と、最後のページにはスージーの写真と髪の毛。決定的な証拠だ。帰宅したハーヴィーに追いかけられるが、スーシじーはノートを持って逃げ帰った。

 リンジーが家に戻ると、母が家に戻っており両親は仲直りをした。リンジーはノートを祖母に渡す。

 証拠のノートから、警察がハーヴィーの自宅を家宅捜査。しかし、その頃には、逃げる準備をしたハーヴィーが、コナース家の庭の陥没穴にスージーの遺体が入った金庫を捨てていた。

 その光景をルースが見ている。傍らにはレイがいる。

 スージーは、天国の手前まで来た。そこにハーヴィーに殺された人たちが集まってきた。「あなたは自由よ(天国へ行こう)」と言うホリーだが
スージーは「もうひとつやることがある」と言い、踵を返す。

 ルースはハーヴェイたちの姿を小屋の中からみながらレイを呼ぶと、突然ベッドに倒れてしまう。心配して覗き込むレイの前で、ルースがスージーの姿になった。「スージー…」と呼びかけるレイ。「手紙読んだよ。」と嬉しそうな表情のスージー。二人はキスをした。スージーのファーストキス。

 「わたしがいなくなりラブリーボーン(美しい骨)が残った。人のつながりは時にはもろく時には犠牲を伴うけれど、とても素晴らしいものだ。それは私の死後に生まれ。私のものの見方をかえた。私は自分のいない世界を受け入れられる。」

 車で逃げたハーヴィーは崖から落ちた。

 母が今まで封印していたスージーの部屋に入った。「やっと来てくれた」と喜ぶスージー。母は「愛してるわ、スージー」とつぶやく。

 「わたしの名前はスージー・サーモン。お魚みたいでしょ?」

つまりこういう映画(語りポイント)

 映画前半、登場人物たちの多くが、なにかしらの「モノ造り」をしている。スージーは写真、父親はボトルアート、母親は手編み、犯人は家具や人形。割と頻繁に「モノ造り」「対する批判」「否定」「肯定」「時には破壊」と言った表現が出てくるので、きっとなにか(伝えたいことが)あるのでは?と考えたところ…。、

 それらは「アイデンティティー」のメタファーですね。

 僕らは、日常で「自分自身を作り上げる」作業をしている。作り上げた方向が間違っていると、他者から批判を受けたり、時には破壊されたりもする。そして、また考え、修復したりイチから作り直すこともある。それを根底から否定されることは、自分自身の存在を否定されるに等しい。時には立ち直れないほどに。

 スージーは、母親から強制的にプレゼントされた手編みの帽子を『ダサい』と感じ、あからさまに嫌な顔をする。でも「我慢するのも勉強」と言って被ります。スージーが優しく思いやりがある子供であることは、冒頭のペンギンを観て泣くシーンで観客に伝えられていますし、この場合も単に「母への優しさ。思いやり」だったのでしょうが、他者を理解する姿勢なのか、どちらにしろ、少女の中にある「社会性」の表現。

 そういえば、ルースが、美術の授業で、絵のモデルの人形にはない乳首を書き加えたことを先生に怒られているシーンもある。あれも、彼女のアイデンティティーが周囲に否定されているという比喩か。

 そういえば、スージーを誘ったハーヴィーの殺し文句は「手間をかけて作ったものだから、人に観てほしい」でした。それを聞いてつい誘いに乗ってしまうスージー。

 中盤、ボトルアートが粉々に壊れていくイメージシーンがあります。あれは、スージーと父親のアイデンティティーの崩壊。

 形あるものはすべて壊れる。家族も人間関係も、それほどモロい物なのだと。だから、モロいからこそ、壊さずに生きていくには強力な「愛」が必要だと云う、映画の着地点に向けての、重要な表現だと解釈しています。

「もうひとつ、やり残したことがある。」

 スージーがいよいよ天国へ召される直前、彼女はそう言って地上に戻ります。普通に考えると、やり残した事とは「犯人に復讐すること」か「遺体を発見してもらうこと」かと思います。ところが、彼女のやり残したことは「初恋の人とのファーストキス」でした。

 最高に幸せで、満足感に満ちたな笑顔。彼女の気持ちととシンクロするように、残された家族も、哀しみを乗り越え前向きに生きていこうと歩き出す。「わたしは、ほんの一瞬生きて、そして死んだ。みなさん末永くお幸せに。」最後のセリフは、天から家族を守る仏様の言葉のよう。

 そんな彼女も「天国と地上の間の世界」で迷っている時は、犯人を憎み「憎い。殺してやりたい。身体に血が一滴も残らないくらいに復讐してやりたい」と怖いことを口走っていたのです。でも、父親が、娘を愛するがあまり、死に物狂いに犯人捜しに奔走。妹のリンジーも姉のために危険な橋を渡っている。自分のためにボロボロになっていく家族の姿を見て、思い直す。

「復讐からはなにも生まれない。大事なのはこれからの幸せ。」

 スージーと地上の家族との間の「愛」のキャッチボール。それは何度か形を変えながら、試行錯誤しながら、最終的には「平穏」にたどり着く。お互いの気持ちを穏やかに保つこと、幸福感を与え合うのが愛、という答えにも受け取れる。

 「愛とはなにか?」の問いかけ。

 そのふたつが、この映画が伝えたいテーマ。ありがちといえばありがちで、当たり前なことなんだけど、それを全編ハートウォーミングなファンタジーで見せられるのではなく、悲しい設定、きつい状況設定の中で見せてくれることで、そこに「落差」が生まれ、より強烈に刺さってくる。

 なんともカテゴリー分けが難しい映画ではありますが、そして、悲しすぎる設定が好みではないという人もいるとは思いますが、主役のシアーシャ・ローナンの可愛さと演技のウマさ、それだけでも充分に観る価値はあります。間違いなく良作。

 子役の少女がカワイイ映画ベストテン、なんてものがあれば、5位くらいは狙えると思います。なんだ5位って。