【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『チャック “ロッキー”になった男』を語れるようになるネタバレあらすじ

f:id:kyojikamui:20180223232708j:plain

基本データ・おススメ度

『チャック “ロッキー”になった男』
原題:The Bleeder

2016年 アメリカ
監督:フィリップ・ファラルドー
出演:リーブ・シュレイバー、エリザベス・モス、ロン・パールマン、ナオミ・ワッツ、ジム・ガフィガン
 おススメ度★★★☆☆(3/5)
 『ロッキー』のモデルになった実在のボクサー、チャップ・ウェプナーの伝記映画。期待せずに観ましたが、本当に不器用で、世渡りが下手で、鼻が曲がったままの、チャック・ウェプナーというどうしようもない馬鹿者になぜか拍手を送りたくなる、思いがけない良作でした。ナオミ・ワッツが綺麗。

<広告>

 

◆目次

 あらすじ(ネタバレなし)

 冒頭、クマとボクシングの試合をするチャック。ショーだ。

 「俺は常にピエロだった。子供の頃から…。」と述懐する。

 チャックはすでにニュージャージーの地区チャンピオンだったが、世界ランク8位でも、それだけでは生活ができず、酒の販売員をしている。その時は別の名前を名乗っている。

 借金の取り立てもしていたが、善良な人間を殴ったことはない。

 家族は、妻と娘がいた。妻との仲は悪くなかった。

 アンソニー・クイン主演のボクシング映画が好きだった。映画の中では、元ボクサーの主人公が再就職を目指しながら、昔のプライドと戦っている姿が描かれていた。

 しかし、根っからの調子乗りで女好きのチャック。浮気がバレて妻は実家に帰ってしまう。以降、妻との仲に亀裂が…。

 妻との別居中、吉報が舞い込む。モハメド・アリのマネージャーであるドン・キングが白人の挑戦者を探していると。白人の中ではランカー上位にいるチャックに白羽の矢が立った。

 チャックは妻に電話をし「心を入れ替えて練習する」と告げる。

 テレビでは連日、アリとチャックの舌戦が面白おかしく流されていた。頑張っているチャックを見て妻も家に戻ってきた。

 アリは、チャックを3ラウンドでKOすると宣言。世間の下馬評もアリ断然有利。チャックは当て馬と見られていた。実際、その通りになれば、チャック・ウェプナーの名前は忘れられていくであろう。

 妻との会話。「15ラウンド戦い抜けなければ、俺は終わりだ。」

 試合当日。なかなか倒れないチャック。反感びいきからチャックに声援が集まる。試合は最終ラウンドへ。試合終了19秒前、ドクターストップによるテクニカルノックアウトでチャックは負けた。

 通路で待っている妻と抱き合うチャック。誰も、なにも言葉を発しなかった。

 負けたとはいえ、アリ相手に最終ラウンドまでリングに立っていたことで、チャックは地元でヒーローになった。

 前半は完全に「リアル版・ロッキー」。映画後半が、この映画の本質であり、チャック・ウェプナーのイキザマ。

==以下ネタバレ==

<広告>

 

ネタバレあらすじ

 試合から一年半後、ハリウッドの関係者から「シルベスタースタローンがお前をモデルに脚本を書いた」という情報を聞く。

 劇場に『ロッキー』を見に行くチャックと妻。「15ラウンド終わってまだリングに立っていたら…」という有名なセリフを聞いて、驚いて目を合わせるチャックと妻。

 「妻との会話も、借金取りとのやりとりも、まったく俺の映画だ」と喜ぶチャック。チャックがモデルであることも有名な話となった。

 チャックはイイ気になった。イベントに呼ばれ「俺がロッキーだ」と豪語した。「ロッキー」の大ヒットは、金銭こそ一ドルも手にしなかったが、チャックの中で大きなプライドとなり、生きる希望となった。

 誰もがチヤホヤする中、チャックが気にする女バーテンダーのリンダ(ナオミ・ワッツ)だけは「アリの足を踏んでダウンさせたのよね」「汚いテを使う男だわ」などと、あえてチャックを認めようとせず憎まれ口を叩く。

 バーで若い女をはべらかし遊ぶ。寄ってきたヤクの売人にカモにされ「ぶっとぶ薬」を初体験し、以後、常習者となる。

 あきれた妻はついに三行半を突きつけ、再び家を出ていく。

 『ロッキー』がアカデミー賞を獲得。テレビ中継を見ていたチャックは独りで小躍りして喜ぶが、弟のところに行って「ロッキーが賞をとった」と言っても「だから?」とシラケられてしまう。

 シルベスター・スタローンに会おうと思い立ったチャックは、映画会社に行くが「お約束はありますか?」と相手にされない。

 ようやくスタローンに会えたチャック。スタローンももちろんチャック・ウェプナーのことを知っていて歓迎し「ロッキー2」を作ってもいいと話す。

 喜んだチャックは、仲間たちと「ロッキー2」の脚本を考える。チャックが主役で、今度は映画スターとして華々しくデビューする姿を思い浮かべる。大好きなアンソニー・クインの映画のセリフも入れ込むつもりだった。

 後日、スタローンに呼ばれたチャックは、脚本を持って意気揚々と映画会社に乗り込むが、そこで行われたのはスタローン主演の映画の脇役出演のオーディションだった。

 意気消沈。車のハンドルに頭をぶつけて悔しがるチャック。

 リンダに会いにバーに行くチャック。珍しく人前で泣くチャック。バーも表に車が着いた。ヤクの売人仲間だ。車の窓から金を投げ込んだ瞬間、仲間が「すまん。恨むな。」と謝る。そして、周りから警察が登場し、チャックは逮捕される。

 警察、「誰かを売れば助かる」と言われるが「誰も売るつもりはない」と言い、一本だけ許された電話で、弁護士でも仲間でもなく、リンダに電話をかけた。

 リンダの連絡を受けたチャックの弟夫婦が保釈金を払ってくれチャックは一時釈放されたが、弟にはボロクソに言われてしまう。

 リンダにも一旦はふられ「将来のことを考えるのをやめた。地獄は己が作る」と述懐する。

 刑務所に入ったチャック。ある日、シルベスター・スタローンが刑務所を舞台にした映画の撮影にやってきた。そこで初めて「だまされた」ときづくチャック。チャックがいることを聞いていたスタローンが「会いたい」と言っていると伝え聞くが、チャックは会うのをやめる。

 五年の刑だったが、模範囚だったチャックは28ヵ月で刑期を終えた。

 生活のために、クマとボクシングをするチャック(冒頭のシーン)。観客席にはリンダがいた。

 リンダは、チャックと生きていくと決めた。

 ある場所にロッキーの等身大人形があった。「記念写真を撮ろう」というチャックに「やめときなよ」と嫌悪感を示すリンダだったが勝チャックは気にせず写真を撮る。

 「ロッキー」は貴方にとってなんだった?と聞くリンダに「君と出会わせてくれた」と答える。

 チャックが観客に語り掛ける。「人生は時にはドラマティックだ。映画のようなハッピーエンドで驚いたかい?俺も驚いているよ。」

 2人が歩いて行った足元には、ロッキーの人形と一緒に笑顔で映るチャック・ウェプナー(本人)の実際の写真。

 「リンダとチャックは、今でも仲良く、チャックが経営する酒屋を切り盛りしている。」というナレーションと共に、現在の(本物の)チャックとリンダの姿。

つまりこういう映画(語りポイント)

 前半は、完全に「リアル版・ロッキー」。映画ではないから、チャックは場末のボクサーではなく最初から世界ランカーだったり、妻との出会いも特別に劇的なものではないけども、でも、それが逆にリアル。

 「15ラウンド戦い抜かなきゃ俺は終わる」というセリフも、実際のところ、チャック本人が言ったものか、映画から逆輸入(?)したものかは定かではないが、この映画の中ではチャック本人が言っている。

 ほぼ『ロッキー』と同じ流れで進む前半も興味深いが、この映画の本質は、アリ戦と『ロッキー』の大ヒット以後の、映画後半にある。

 名声に溺れ、家族を失くし、カネのためにショーに出て、薬で逮捕されて…という、不器用で馬鹿正直なチャックの混沌とした人生が淡々と描かれていく。

 チャック・ウェプナーという人はもちろん実際に有名なボクサーで、僕も子供のころから当然知っていました。ちなみに、チャックがアンドレ・ザ・ジャイアントと試合をしたことは描かれているが、日本でアントニオ猪木と戦った事実には触れられていない。

 家族に去られたチャックが想いを寄せ、最終的には余生の伴侶となるリンダを演じているのはナオミ・ワッツ。これがまた、珍しく色気のあるイイ女の役。大抵、地味で暗い役の多いナオミ・ワッツにしては珍しい。見た目もやや細い時で、別の女優さんに見えるほどですが。それは、水商売系の女という役柄をシッカリと役作りした結果かも知れない。さすが苦労人女優。素晴らしい。

 一度はチャックをふったリンダだったが、最終的には、チャックと共に人生を歩む決意をする。そこに感動的なエピソードはないが、リアルの話だけにそれでも十分に響いてくる。

 「まさかのハッピーエンドで驚いたかい?人生は時には映画のようなことが起こるものなのさ」という最後のナレーションと、チャックが実際にロッキーの人形と撮った(本人の)写真。さらに現在のチャックとリンダの姿が出てくるラストに拍手しました。

 本当に不器用で、世渡りが下手で、鼻が曲がったままの、チャック・ウェプナーというどうしようもない馬鹿者に、なぜか拍手を送りたくなる、思いがけない良作。