基本データ・おススメ度
『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』
原題:L'ARRIVO DI WANG
英題:THE ARRIVAL OF WANG
2011年 イタリア
監督アントニオ・マネッティ、マルコ・マネッティ
出演:エンニオ・ファンタスティキーニ、フランチェスカ・クティカ、ジュリエット・エセイ・ジョセフ、アントネッロ・モッローニ
おススメ度☆☆☆☆☆(0/5)
「中国語を話す宇宙人」という設定は面白そうで、風貌や言葉による人間の思い込みと偏見を皮肉る映画だと思ったら、全然そうではなく、ただ、特定の国の人をおちょくるだけの映画。社会風刺になっていない。鑑賞後の気分は悪い。
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◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
翻訳を仕事にしているガイア(女性)。ある日、謎の組織から電話がかかってきた。同時通訳の依頼。内容はわからないが高額の報酬に釣られて引き受ける。30分後には迎えに行くと言う。
国家の関係者だという男がに、車の中で目隠しをされ、どこかの場所に連れて行かれる。質問する相手の顔は見えず、暗闇の中で通訳を開始する。相手は中国人のワンさんという男。
王さんがローマに来たのは2週間前、最初はアモニーケさんという一般人の家庭に忍び込んでいた。アモニーケさんも組織に拘束され、何度も事情聴取を受けている。もう帰してくれと頼んでも帰してくれないようだ。
「なぜそこに来た?」様子がおかしい。「早く話したほうが身のためだぞ」などの脅しの言葉が混じり、ガイアは不穏な空気を察する。
ローマに来た理由は「文化交流のため」と答える王さんだが、男は信じない。「なぜ中国語を話すのか?」と聞く男。「世界中で一番使われているから、多くの人と話ができると思った」
状況がわからず混乱してきたガイアは「顔が見えないとニュアンスが伝わっているかどうかを確認できない。」と、部屋の電気をつけてもらうよう要求。
ワンさんは、絵に描いたような宇宙人の風貌だった。
逃げ出そうとするガイアだが「危害は加えません」というワンさんの言葉に落ち着く。「容姿に驚かれたとおもうが、私は話をしたいだけなのです。」ワンさんは温厚な宇宙人のようだ。
「何の目的で地球に来たのか」をとにかく知りたがる関係者たち。
果たして、中国語を話す宇宙人・ワンさんはどうなるのか?
==以下ネタバレ==
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ネタバレあらすじ
長い宇宙の旅、5年前に生物がいる星・地球をみつけた 観察を続け、文化交流をしようと思った。というのがワンさんの主張。
「本当の狙いはなんだ!と語気を荒げる男に、ワンさんは具合が悪くなる。ひどいと感じたガイアは、何度も男たちに「ひどい。やめて」と懇願するが「お前は仕事をすればいいんだ。」と怒鳴られる。
ワンさんに「私はこのやり方に賛成していない」と告げると、ワンさんは「あなたは仕事をしているだけだ」と理解している
しつこいくらい「なんのために来た?」「友好のためだ」と同じ問答が繰り返される。
アモニーケさんはガイアに「この機関を信用しちゃいけない。怪しい。通報しただけなのに私も帰してもらえない。」とささやく。
ワンさんは「もう星に戻る方法はない。ここに永住する。」と言うが、男たちは「故郷に連絡をしたのか?」を気にする。
ワンさんのイカのような風貌を、これ以上ないくらいヒドイ言葉で、皮肉りながら質問を続ける男。ガイアはどんどん嫌になってくる。
男は電気技師を呼び、ワンさんに拷問を始める。また同じ質問、同じ答え 電気ショックで拷問が繰り返される。錯乱するガイアだが、無視される。
ガイアはワンさんに「人権救援団体がある。そこに訴えよう」と進言するが「危険は侵さないで」と、ガイアをきづかうワンさん。
施設内を探し、電話がある場所をみつけたガイアは救援団体に電話をかけるが、すぐにキレてしまう。部下の男にバレて通信を絶たれた。追いかけられるガイア。
と、警報が鳴り、施設が急に慌ただしくなる。廊下であったアモニータが「なにが起こったの?みんな逃げた。」と言う。早く逃げたほうがいいというアモニータの進言を振り切り、ワンさんを救出しに戻るガイア。途中、階段を登れないワンさんの手を握って助けてあげたりもする。
…が、ガイアが地上でみたものは、大群で飛来し攻撃してくるUFO。ガイアが、自分が逃げたから鳴ったと思っていた警報はこれだった。
ワンさんは侵略者だった。故郷への連絡手段だと言っていたスイッチは、地球上の武器を無力化する機器の起動装置だった。手も足も出ず、宇宙人の攻撃にただ怯えるだけの地球人。
呆然とするガイアに、ワンさんが言う。「お前、バカだな。」
つまりこういう映画(語りポイント)
中国語をしゃべる宇宙人。「地球上で最も人口が多いから、中国語が地球の第一言語かと思った。」という理由も面白く、それでいて到着したのがローマだったという設定も含め、面白くしようとすればやり方はありそうなだけに、非常にもったいない。
前半は、中国語である意味があまりないなぁと思って見ていたら、最後のオチで、それが強烈な皮肉であったことがわかる。
最後のオチだけのために作られた映画。
ただ映画の時間を稼ぐためと思われる無駄に長いシーンが多々。
人間の思い込みと偏見を皮肉る映画だろうと思って期待したのですが、決してそうではなかった。ある意味、期待を裏切る意外な結末ということで、ひねりとしては悪い方向ではない。仮に、友好を望んで来た宇宙人を、その風貌から悪と決めつけ、マイノリティをマイノリティだという理由だけで排除していく…その代償として地球人がこっぴどい目にあう…という流れだと、予想通り過ぎてそれも面白くないからだ。
ハッキリ書いてしまうと「中国人は嘘をつくのが当たり前。奴らを信用できるはずがないだろう。信じるほうがバカだ」という映画。
皮肉や社会風刺というのは、基本、笑えないと成立しないのだけど、ちょっとこの映画は笑えない。皮肉の対象に対する愛や優しさも含んで作らないと、ただケンカを売っているだけになる。鑑賞後の気分は悪い。中国の人たちをバカにするための映画でしかないから気分が悪い。
仮に、中国語という要素がなければ、その救いのないバッドエンドはそれなりに捉えどころがあったかも知れないけども。それでも「他人を信じるな」「正直者がバカを見る。」というオチには、まったくミもフタもない。