基本データ・おススメ度
『アルフレード アルフレード』
原題:ALFREDO, ALFREDO
1972年 イタリア
監督:ピエトロ・ジェルミ
出演:ダスティン・ホフマン、ステファニア・サンドレッリ、ドゥイリオ・デル・プレタ、カルラ・グラヴィーナ
おススメ度★★★★☆(4/5)
ダスティン・ホフマンが鬼嫁にボロボロにされるコメディ。絶世の美女・ステファニア・サンドレッリの怪演に爆笑できます。ほとんどコント。1972年、当時35歳のダスティン・ホフマンはこの頃が絶頂期でしょう。「ちょっと気弱な若者」の役柄は天下一品。二人の演技はぜひ見る価値あり。
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◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
離婚調停に臨もうとしているのは、銀行員のアルフレード(ダスティン・ホフマン)。法廷に入ってくる女房・マリア(ステファニア・サンドレッリ)の顔を怖くて直視できない。「妻のマリア・ローザは魔女だ。」
物語は回想へ、二人の出会いにさかのぼる。
薬局で働く若く綺麗なマリア・ローザに恋をするアルフレード。
過去の彼女のことを思い出すが、いつも結婚まで踏み切れなかったのは責任をとることから逃げていた自分のせいであると自覚している。父と二人暮らし。どちらかといえば人嫌いだ。職場である銀行で働いている時が一番安心できる。唯一の友達はオレステという陽気な男。
ストーカー気味にマリアを尾行するアルフレードだったが、ある日、オレステがマリアとその友達をナンパしたことで、堂々と知り合いになれた。
四人で楽しく遊んだ日から数日後、マリアから電話がかかってくる。「今夜会えない?」との誘いに躍り上がるアルフレード。
彼女は積極的だった。2度目のデートで45分間も待たされたアルフレードだったが、マリアはその間、車の中からずっと監視していた。「あなたを監視していたの。良かった。思った通りに人だわ。」「変わった娘だ、行動が読めない」と思いながら、アルフレードはキスをするチャンスを伺った。
映画を観た別れ際、意を決してキスをすると、マリアは突然スイッチが入ったように積極的にカラダを絡めてきた。あまりの騒ぎすぎて通行人が集まってきた。興奮しすぎて走って去るマリア。わけわからない娘だと思いながらも、喜ぶアルフレード。
「一日に100回、私のことを考えて」と毎日4~5通の手紙を出してくるマリア。仕事中だろうがおかまいなしに一日何十回も電話をしてくるマリア。さすがに困って電話を切ると「私のこと好きじゃないのね!」と怒る。
マリアに振り回されてまくるアルフレードだが、その美貌に夢中の彼は必死に彼女のペースに合わせるように頑張る。
==以下ネタバレ==
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ネタバレあらすじ
休日、唯一の親友・オレステと山に行くアルフレード、その間も公衆電話を探してはマリアに電話をかける義務がある。山へ行く話は事前に相談して「いいじゃない。いってらっしゃい。」と言っていたにもかかわらず「私を置いて本当に行くとは思わなかった!」と電話口で泣くマリア。山を楽しむどころではない。
終始、まるでアルフレードを困らせようとしているかのように、様々な要求をするマリア。アルフレードは「無視したときが怖い」のだが「愛してる証拠なんだ」と自分に言い聞かせ、頑張って合わせる。
寝ているときも、彼女が何度も電話をかけてくる夢を見るようになった。しかしまだ「彼女は美人だ。手放すには惜しい」と思っている。
父と二人暮らしの自宅にやってくるマリア。相変わらず、常にわがままで振り回しながら、逆にちょっとしたことで喜び「愛してる」と抱きついてくる。彼女の不安定な情緒に振り回され疲れ果てたアルフレードは、怒って家を飛び出していったマリアを、今日は追いかけなかった。「これでいいのかも知れない」
彼女と連絡をとらなくなって数日。毎晩、無言電話がかかってくる。
日曜日、オレステと山へ行く。「あの日が僕の最後の自由な日だった。」
マリアの両親から家へ呼び出されたアルフレードは、両親から「人殺し」と責められる。何事かと奥の部屋へ行くと、マリアがクスリを飲んで自殺をはかった後だった。未遂に終わり命はとりとめたが、そもそも本当に死ぬ気は絶対になかったっぽい。それでも、美女とひさしぶりに会ったアルフレードは喜び、二人は婚約した。
彼女の自宅で家族と共に夕食をとる。他人の家庭の食文化や食べ方に違和感を感じたアルフレードは「これが結婚?」と、内心ぞっとする。
結婚式。神父に誓いの言葉を求められた時、なぜか背筋が凍る感覚を覚えるが、「はい、誓います」と言うアルフレード。
夜の営みはまるでプロレスだった。激しいマリア。その激しい声に家族も驚く。新婚旅行の寝台車の中では、激しすぎて列車を停めてしまう。
マリアは薬局を退職し、使用人を2人雇ってマダムに収まった。彼女は専制君主になった。いじわるとヒステリーで使用人を何人雇ってもみんなやめてしまう。ヒステリーはアルフレードの父にも及び、父は荷物をまとめて別荘に逃げてしまった。
久しぶりに山に誘ってきたオレステの電話に出たのはマリアで「私も行く。」と言う。山で、オレステはマリアのお尻を触ったりして彼女の機嫌を損ねる。山でセックスをしてなんとか機嫌を収めるアルフレードだったが、それを機に親友のオレステとは疎遠になった。
アルフレードの顔や体にはストレスからニキビができてきた。
アルフレードは理容室のラジオで、マリアがラジオ番組の電話相談に出演している声を聞く。「夫が無能だとわかった。どうすればいいのかわからない」などと言っているマリアの声に驚いたアルフレードが急いで自宅に戻ると、マリアは「子供を作りましょう。それしか特効薬はないわ。」と言う。子供は嫌いじゃない、賛成するアルフレード。
しかし、半年しても妊娠しないマリアは「あなたが無精子なんじゃないの?検査してきて」と言う。病院に行くが、途中でアホらしくなって帰ってくるアルフレード。今度は二人で相談に行く。医者から「妊娠しやすい時間にセックスをすること。」と言われ指定された時間は、朝や日中。アルフレードはなんだかんだ理由をつけては会社を抜け出しマリアと寝たが、そのうち抜け出す理由がなくなってきて、医者からの指示書を見せて正直に理由を告げる。社内では「会社を中抜けして妻とセックスしまくる男」ということが知れ渡ってしまい、嘲笑を浴びる。
マリアが妊娠した。喜ぶ家族。
アルフレードは、マリアが妊娠している間、地下室で生活することになった。ひさしぶりに自由を取り戻して喜ぶ。やがて、アルフレードは内緒で街に出かけるようになる。自由を満喫しつつ、バーの店員イレーサや、美容師のノラと知り合う。
アルフレードのニキビが消えた。
ひさしぶりにオレステに電話をし木曜日にパーティの約束をしたが、デートに誘ったノラたちも木曜が都合良いという。仕方なく、オレステも交えたパーティとした。誘った女性はノラとイレーサの二人だが、2対2でちょうどいいと考えた。
が、オレステも気を利かせて女性を二人連れてきていた。男2対女4のパーティになった。そこで会ったカロリーナに目を奪われるアルフレード。
カロリーナは陽気で奔放な女性で「私は人のモノは欲しくなるの。恋人リストを作ったら全員が既婚者だったわ。」と豪語する。
カロリーナの自宅に呼ばれたアルフレードは、マリアとのプロレスまがいのセックスではなく、カロリーナとの営みに愛を感じて感動する。「35歳で本当のセックスを知った」
幸せな気分になったアルフレードだが、夜、自宅の地下室に戻ろうとすると、アルフレードが内緒で外出していることを知ってしまったマリアが地下室をめちゃくちゃにして暴れていた。これはやばい。
興奮したマリアは具合が悪くなり、母は「流産したらあなたのせいよ。」とアルフレードを責めるが、マリアは想像妊娠であったことがわかる。妊娠はしていなかった。
医者の「大丈夫。一週間もすれば元気になります。元通りです」という言葉にビビるアルフレード。元通りとは、またマリアとべったりの生活がはじまることを意味していた。
アルフレードの顔や体にニキビが復活した。
我慢できずに家出をしたアルフレード。カロリーナは、自分の家にアルフレードを連れて帰り両親に紹介する。「奥さんから逃げてるからかくまうのよ。」という娘に口をあんぐりさせる両親。
カロリーナは銀行に電話をして「彼はしばらく仕事を休むわ。理由?奥さんから逃げて家出をしているの。」と言う、それを見て「素晴らしい女性だ。」と思うアルフレード。カロリーナがアパートをみつけてくれた。そこで幸せな時間を過ごす二人。しかし、ある日、警察が部屋に来た。捜索願いが出されていたのだ。
四年後、アルフレードは「離婚推奨協会」で「嫌がる男を探し出すのが正義でしょうか?」と演説をしていた。
マリアとの離婚が成立した。マリアも浮気をしていたことがわかったことで離婚が可能になったらしい。喜ぶアルフレードとカロリーナの近くを、同じく嬉しそうに腕を組んで歩くのは、マリアとオレステだった。浮気相手はオレステだった。
カロリーナにプロポーズをした。
カロリーナとの結婚式。いざ神父に誓いの言葉を求められたアルフレードは、なぜか背筋が寒くなる感覚を覚える。
「いいのか…誓っていいのだろうか…」と疑問がわきながらも「はい、誓います」と答えるアルフレード。
つまりこういう映画(語りポイント)
1972年公開作。ダスティン・ホフマンは、5年前の「卒業」からすっかり十八番になった「気弱な青年」っぷりを全開。翌年に「パピヨン」の公開を控たこの頃が絶頂期ではないでしょうか。
妻役のステファニア・サンドレッリは当時25歳。本当に美しい。
薬局の調合室で「キスをして」とせがみ、ダスティン・ホフマンが首筋に軽くキスをするなり「きゃ~~~!」と叫んで抱きつきまくるシーンや、夫の無断外出に怒って地下室で暴れまくるシーンは爆笑できます。
ほとんどコント芝居ですが、絶世の美女にしてそんな芝居ができる…なんて、最強の女優ということになる。
この映画は、二人の演技合戦が最大のみどころでしょう。
イタリア映画のため、ダスティン・ホフマンの声は吹替。口の動きととイマイチ合っていないアフレコに違和感を感じるのはそのせい。
70代年に入って間もない頃のイタリア。当然のことながら、当時の街並みや文化、生活様式など、ノスタルジーに浸れる要素は多い。女性のファッションも独特なセンスで良いですが、男性の髪型やファッションに関しては、まるっきりオシャレじゃないのは、当時は男性がファッションを気にする文化自体が薄かったということでしょうか?(推測)。
俳優の芝居と当時のイタリア文化以外には、逆にいえば、さほどのみどころはない。結婚の悲劇を題材にしてはいても、本気で結婚システムを批判するつもりはなさそうで、ただ笑い飛ばすネタにしているだけでしょう。
それにしても、こんなに古い映画でこんなに笑えるってどうしてだろう?と考えてみると、それは「時代の為せる術」かも知れないと思う。
想像妊娠でお腹に入っていた風船がしぼんでいくのも、ヒステリーで暴れて狂人扱いされるのも、今なら、どこかの団体からクレームが入ってもおかしくないし、好きだから尾行するなんて今なら犯罪だと言われるし…。いまどきの「モノを言いにくい」「表現手段が限られる」ご時世ではなかなか作れない描写が、古い映画にはある。
「なんでもあり」だった、おおらかな時代の良き産物。
ある程度の年齢の映画ファンが、古い映画に妙なノスタルジーを感じるのは、街並みやファッションだけが理由ではなさそうだ。
▼不朽の名作「卒業」。実は「ヒドイ映画だ」というお話。