基本データ・おススメ度
『NO EXIT/ノー・イグジット』
原題:Crush the Skull
2015年 アメリカ
監督:ヴィエ・グエン
出演:ケイティ・サヴォイ、クリス・ディン、ティム・チョウ、ローレン・リーダー、ウォルター・マイケル・ボスト
おススメ度★★★☆☆(3/5)
「泥棒が入った家は殺人鬼の家だった」「そこには少女が監禁されていた」「泥棒vs殺人鬼のバトル」…主要三点が、サム・ライミ監督の傑作「ドント・ブリーズ」とまったく同じ。偶然、同じプロットだったとのことですが、こちらはコメディ。評価は低そうですが、個人的にはこっちのほうが面白い!
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◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
プロローグ。狭い部屋。幼い少女。ベッドから起きて歩こうとした少女の足…は、太いクサリでベッドにつながれていた。
泥棒カップルのブレアとオリー。「これが最後の仕事にしよう」。侵入した邸宅内、偶然、家の奥さんと間男が浮気の真っ最中だった。慌ててクローゼットに隠れる二人。そこに旦那が帰宅してくる。旦那の気配を感じて、浮気男も慌てて隣のクローゼットに隠れる。
旦那と奥さんのやりとりを聞いているオリー達と浮気男。先にクローゼットの扉を開けられたのはオリーたちのほう。「俺たちはやってない。いや、その、奥さんとエッチはやってない!」と、ややこしい。
やがて浮気男もみつかり、奥さんと旦那+浮気男の言い争いを尻目に逃げ出す二人。オリーが「あの人、殺されるんじゃない?助けなきゃ」と戻ると、旦那が2人を殺し、泣きながらピストルを自分の喉元に向けていた。かけつけた警察に包囲されオリーは捕まってしまう。
ブレアはオリーを釈放するために、本当はもう関わりたくない兄のコナーの力を借りる。そのために借金も作ってしまった。借金を返すまでは泥棒家業をやめられなくなった。オリーとブレアは、コナーと相棒のライリーが計画している空き巣に加担することになる。「今度こそ最後だ。」
しかし、四人が侵入した屋敷は、一度入ると中からは出られない造りになっていた。おまけに、モニターに、この家の中で女性が殺されている映像が流れ出す。「この家の住人はサイコパスだ。やばい!」
▼▼以下ネタバレ▼▼
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ネタバレあらすじ
家の中に家具らしきものは何もなく、壁はコンクリート、窓は防弾ガラス、天窓はえらい高い、携帯の電波は妨害されている。焦る四人。
地下室の入り口をみつける。迷路にように入り組んだ地下は、あちこちの壁が可動式になっていて油断をすると閉じ込められる。どうやら、家の主がどこかで壁の操作をしている。
ガラスの部屋に監禁されている女性、ビビアンを発見。「もう数週間、閉じ込められてる。」と言う。ビビアンを部屋から助け出すが迷路から出られない。
地下で、離れ離れになる四人+ビビアン。ライリーが壁の向こうで「誰かいる!」と叫んでいるのを聞くオリーとブレア。ライリーがやられた。壁が開きライリーが血だらけで倒れる。二人はライリーの足を持って引きずっていくが、ふとみると、首がなかった。悲鳴をあげる二人。
一階にあがると医療器具が並んでいる部屋があった。ブレアはビビアンを怪しむ。「数週間監禁されてるといったけど、ペディキュアが新しい。」
警察が訪ねてくる。なにごともない素振りで対応する男。この家の主、ジャックと名乗る。ジャックは後ろポケットにナイフを隠し持っている。
「いたずら電話でした」と帰ろうと庭に出る警官。ジャックも送りに出ているが、そこにオリーとブレアが飛び出してくる。「そいつは殺人鬼だ!」するとジャックは「そいつらは泥棒だ。私を脅していたんだ。」と言い出し、どちらを信用していいかわからない警官は「三人とも手をあげろ」と言う。
「君たちはなんだ?」「泥棒です」「なんだと。逮捕する!」「いや、俺たちは泥棒だけど、その男は殺人鬼で」「違う!私は人質だ」ややこしい。
そこにビビアンが登場し、ジャックを指さし「その男が何週間も私を監禁したの。二人は助けてくれた。」と証言。警官はジャックに銃を突きつけ、ビビアンを抱き寄せる。「ふ~、やっと終わりか。」と安堵するオリーに、ブレアが「ちょっと待って。ビデオを撮ってた別の人間がいるはずよね?」「ん?」
ビビアンも共犯だった。警官を刺し、めった刺しにするジャックとビビアン。家の中に逃げ戻るオリーとブレア。ジャックたちは警官やパトカーの処理にしばらく時間がかかるはずだというオリー。泣き出すブレアを慰める。ブレアは妊娠していることを告げる。だから足を洗おうと思ったと。抱きしめるオリー。
死んだフリをしていたというコナーが合流。三人で地下に降りる。コナーが壁の制御室をみつけていた。「排水ダクトから二人で逃げろ。俺はここに隠れる。」と言う。しかし、オリーは「俺たちが逃げると、また別の人が犠牲になる。戦おう。」と言う。賛成する二人。
地下に追って来るジャックとビビアン。コナーが制御室で壁を操作しながら、オリーとブレアがかく乱する。しかし、壁の操作が思い通りにいかない。監視カメラに向かって不気味な笑いを浮かべるビビアン。
ビビアンが制御室に来て、操作しているコナーを後ろから銃撃した…と思ったら、制御室に座らせてあったのはライリーの遺体。コナーが隙をみて、ビビアンに硫酸?かなにかを浴びせかける。悲鳴をあげるビビアン。
オリーとジャックが格闘し、ブレアの機転で、ジャックをやっつける。
帰ろうとする三人。ブレアが言う「待って。まだ生きてるかも知れない。ちゃんとトドメを刺して。」とオリーをけしかける。オリーは気が進まないながらも排水管を振り上げる。最後の力を振り絞ってジャックがオリーの足を掴んだ。「ほら!オリー、早く!アタマをかちわって!」
暗転と同時にブレアの声「Crush the Skull !!」
エピローグ。冒頭に出てきた、クサリでつながれた幼い少女。男が話しかける声が聞こえる。「名前は?」「メイシー」「違うよ。君の名はビビアン。わかったかい?」
つまりこういう映画(語りポイント)
「強盗が押し入った家が殺人鬼の家だった」「そこには少女が監禁されていた」「強盗vs殺人鬼のバトル」…主要三点が、サム・ライミ監督の傑作「ドント・ブリーズ」とまったく同じ。
偶然、同じプロットだったとのことですが、ジェットコースター・ホラーとして評価が高い「ドント・ブリーズ」のファンは多く「ドント・ブリーズの足元にも及ばない」と低評価する人もいる本作。
ただ、個人的好みでは、こっちのほうが面白い。
「ドント・ブリーズ」は傑作だし面白いのだけど、映画ではなくアトラクションなのですよ。対して、この映画は「映画」なのです。
「ドント・ブリーズ」は「全員を悪者にした」ところが映画の勝因。それによって「どちらがやられても爽快!な殴り合い」を観客が客観的に無責任に楽しめるように作ってある。アトラクションならそれでいい。
対して本作「NO EXIT/ノー・イグジット」は、主人公たちは泥棒なのだけど、まず冒頭のオープング用エピソード(これが面白い!)で、家の主人にとっては空き巣であるオリーたちよりも妻の浮気相手のほうが遥かに悪人、という構図を作り、本筋に入っても、泥棒より殺人鬼のほうがそりゃ悪いでしょ!な構図。
常に、もっと悪い奴と対比させることで、相対的に「彼らはいうほど悪い奴らじゃない」と伝える手。それは、彼らの「小物感」の演出にもなる。コメディの常套手段ではあるけど、見ていて安心できる。
セリフのやりとりで笑かそうとする箇所が多いのですが、大半がスベッている。しかし、どういうわけかスベリ方に嫌悪感がないのは、スタッフもキャストもアジア系のアメリカ人を中心に作られたという仲間意識からのヒイキ目があるのかも知れません。
▲主要キャスト男性二人もアジア系のひと。
細かい部分も、おおまかな部分も、非常に雑な造りでクオリティは低いのですがね。脚本的にも、監禁少女はもっと違う使い方ができただろう、とか、もったいない部分も多し。
ただ、冒頭のワン・エピソードの設定がとにかくツボ。映画は冒頭の10分が本当に大事で(ラストシーンはもっと大事ですが)、あのツカミを見せられたら、以降、少々のことは大目に見たくなる。
それにしても「クラッシュ・ザ・スカル」という原題を、どうして「NO EXIT/ノー・イグジット」なんて邦題にしてしまったのか。英語⇒英語の邦題は時々ありますが、大抵は、わざと他の映画と同じ題名にして検索にひっかかりやすいようにするのが目的っぽい。ただ、これは「クラッシュ・ザ・スカル」のほうが響きも良かったと思うのですが、どうでしょう。
ヒロインが最後に「Crush the Skull!」と題名を叫んで終わっているだけに、そこももったいない。
▼あわせて(?)どうぞ。