【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『ソフィー・マルソーの秘められた出会い』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度


『ソフィー・マルソーの秘められた出会い』
原題:Une rencontre
2014年 フランス
監督:リサ・アズエロス
出演:ソフィー・マルソー、フランソワ・クリュゼ、リサ・アズエロス、アレクサンドル・アスティエ
 おススメ度 ★★★☆☆(3/5)
 上映時間1時間22分30秒のうち、一時間22分まで「駄作★0」と思っていたのですが、最後の30秒で自分内評価が★3つきました。僕の解釈が間違っていなければ、思い切った手法で逆転勝利…といった映画。

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◆目次

 

 簡単にいうとこんな話(ネタバレなし)

 売れっ子作家のエルザ(バツイチ子持ち)と、既婚の弁護士・ピエール(愛妻家・子持ち)との不倫の恋を描いた恋愛映画。

ネタバレあらすじ

 作家エルザ(ソフィー・マルソー)は自作の出版パーティで、妻子持ちのピエールと出会います。エルザは、オンナ友達には「既婚者なんて無理。人の物を取るつもりはないわ。」「愛人なんて価値がない存在」と言っています。うんと年下、25歳の彼氏ともつかず離れずの関係でいて、子供たちとは、毎日口喧嘩をしながらもなんとかやっています。かたやピエールには愛する妻がいて、子供との仲が良い。
 子供と喧嘩した夜、友達の誕生パーティで騒ぐエルザ。そこでピエールと再会します。アッという間に仲良くなる二人。キスしまくり。すぐにつきあってデートに行ってはキスしまくる…という関係になった…と思ったら、それはピエールの妄想だったようです。
 お互いの電話番号を聞かないようにする約束ながら、いろんな場所で偶然顔を合わせます。二人が会わないと映画が展開しないから会います。間違いなくお互いに魅かれあっている様子で、ラブラブな関係ですが、でもエッチはしません。エッチするシーンもありますが、それもどうやら妄想です。
 二組の家庭での「些細ないざこざ」が描かれます。でもそれは、10年以上も家族をやっていれば当然あるレベルの口喧嘩です。お互いに背を向けあって寝るピエールと妻。でも、決定的な喧嘩にはなりません。基本・愛妻家なのです。
 あるパーティで、お互いのパートナーも同席して顔を合わします。お互いに知らないふりをしますが、ピエールの妻はなにか感じています。だからといって危機になるようなエピソードには発展しません。お互いに守るものを守りながら好き合っています。
 それでもエルザを忘れられないピエールはついに彼女とホテルの部屋に入り、いざこれから!という局面を迎えます。しかしそこでエルザの携帯には彼女の娘から電話がかかってきます。ピエールも子供のことを思い出します。ピエールは置手紙を置いて部屋を出ていきます。「君とは永遠でいたい。」
 シーンは冒頭の出版パーティに戻ります。エルザとピエールはお互いに紹介されますが、それ以上の会話はなくその場を離れていきます。まるで、今までのことがすべて妄想だったかのように、違うストーリーが始まって…映画終わり。
 ピエールのモノローグ。

「終わらせたくないなら始めないこと。」

つまりこんな映画(ネタバレあり)

 あのソフィー・マルソーです。1980年に「ラ・ブーム」でめちゃくちゃ可愛かった女の子も、今やフランスのトップ女優です。でも、この人、きっと自分で選んで、まるでラ・ブームの続編をずっとやっているような印象です。邦題に「ソフィー・マルソーの…」とか入ってしまいますし、周りが求めるのでしょう。それに応えているだけかも知れない。だとしたら「私に求められているのはコレ」と割り切っているのだとしたら、それはプロだと思います。アイドルのプロ。この映画も「大人のアイドル映画」のような軽いノリです。

 「最強のふたり」が良かったフランソワ・クリュゼ、安定感抜群の演技。逆にいえば安定感しか感じませんが。

 鑑賞中、あらかたの時間「なんだこれ?」と思っていました。不倫の二人がどんどん燃え上がって周りを翻弄していくわけでもなく、大きなトラブルが起こるわけでもない。映画の中盤を越えても、エルザは、ピエールではなくまた若い彼氏と仲良くしてるし、ピエールも妻や家庭を捨ててエルザのところに走る…なんて気配がありません。でも二人はラブラブです。感情の動きがよくわかりにくい…などと思っていたら…、

 最後の30秒で、その謎が解けます。ちょっと拍手しました。

 要するに映画の90パーセントが「妄想」だとしたら、辻褄が合うのです。ピエールひとりの妄想なのか、エルザも何割か共有している妄想なのかはなんともいえないところですが、きっとピエールひとりの妄想です。エルザは「既婚者はダメ」と言っていた冒頭と実際は一ミリも変わっていない。そんなエルザと激しい恋に落ちるピエールの妄想物語。…正直、一回流して観ただけなので100%の自信で言い切っていいかどうかはわかりませんが、もう一度観たら違う発見があるかも知れませんが…。ここは「そうだ」として話を進めます。

 それゆえの途中の「理解しにくい感情の動きや行動」なのだとしたら、それは大いなる伏線とヒントだったわけだし、上質のミステリーと見ることもできる。
 何度か「これは妄想」とわかるシーンを入れてあるのは秀逸だと思います。「これが妄想なのだから」「こっちは現実…」と騙されてしまうミスリード。 

 あるいは、パーティで出会ったほんの一瞬の間にピエールの頭の中で走馬燈のように駆け巡った「この人を口説いたらこうなってこうなって…」という想像物語?そして、「終わりたくなければ始めない事」のモノローグと共に「やめとこ」という選択、二人が特に親しくなるわけではない「現実」がはじまるところで映画が終わる。

 いわゆる「夢オチ」で演劇などでは使いふるされたテではあるけど、ここでそれやるか!な大胆さに拍手です。そして夢オチの絶対的効能である切なさも充分に感じさせてくれます。

  思い切り「我慢」する映画。我慢の美学。
 世界にたくさんの男女がいて、その中で魅かれあう者同士もたくさんいて、好きになった者同士が愛し合うのは必然のなりゆき。それでも、そこに守るべきものがあることで事情は変わってくる。そこでストイックに生きるって、辛いし切ない。でもそれが無難な生き方には違いない。

 「終わらせたくなければ始めないこと」…って、よくこんなミもフタもないキャッチで終わらせたとは思うけど。その辺にいる…都合いい女を欲しがるだけの男に比べたら人としてマトモなのでしょう(※棒読み)。

 非常に大人な、リアルといえばリアルな物語。50歳のソフィー・マルソーはやはり美しいけど、それ以上に中年オヤジの悲哀が美しい映画でございました。