【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『名もなき復讐』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『名もなき復讐』
原題:The Lost Choices
2016年 韓国
監督:アン・ヨンフン
出演:シン・ヒョンビン、ユン・ソイ、キム・ヒョク、アン・セハ
 おススメ度 ★★★☆☆(3/5)
 これでもか!な韓国映画。やりすぎ設定に前半は疲れますが、後半の復讐劇は痛快!ヴァイオレンスが嫌いじゃなければ、普通に楽しめます。

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◆目次

 

あらすじ(ネタバレなし)

  交通事故で家族と言葉を失くしたジウン。夢も希望もどこかに消え去り、暗い日々を送っていた。ある日、夜道で集団暴行を受け、生きる気力を失いかけるが…。やがて壮絶な復讐を始める。彼女を助けようと追う女刑事・カンを絡めた重~い映画。

 冒頭、女刑事・カン(ユン・ソイ)が取り調べを受けている。「仲間として君を助けたい」「チェ・ジウンのことを話せ」と誰かの声。どうやらカンは、主人公ジウンに関わることで、なにかしらの罪を犯してしまったことがわかる。
 カンは、疲れた表情で、でもどこかスッキリしたような、なんともいえない表情で、タバコに火をつけた。

「十年前」
 少女・ジウン(シン・ヒョンピン)が家族とクルマに乗っている。バイクの珍走団に囲まれた父のクルマが激しく事故を起こす描写。車内で割れたガラスと共に跳ねるジウンの体。この事故によりジウンは言語障害になってしまう。

「数年後」
 幼な馴染みのウォンと共に繊維工場で働いているジウン。暴力彼氏とつきあって顔面にアザをつくりながら、工場主のエロ親父にも迫られているウォンに「早くこんなところから逃げよう」と言うジウンだが、ウォンは「彼は暴力をふるう父から私を助けてくれた。感謝している。」と言う。ウォンは、ジウンの交通事故の時、事故を引き起こした珍走団に混じってバイクの後部座席に居た。ジウンとウォンの関係がやや複雑であることがわかる。

 夜道、ジウンが三人の男に襲われ性的暴行を受ける。ボロボロになったジウンはなんとか警察にたどり着くが、応対したパク刑事が酷い。「ジーンズを脱がせるのは大変なんだ。」「言葉をしゃべれなくても大声を出せるじゃないか。」と事件を信用しようとしない。ジウンは手に握りしめていたレイプ犯の髪の毛を渡すが、検査しようともせず追い返してしまう。パク刑事は、闇で行われている賭博に密かにかかわっている汚職刑事だった。ジウンが帰った後に事情を聞いた女刑事・カンは「どうしてちゃんと話を聞かなかったの!」と怒る。
 警察に相手にされなかったジウンが自宅に戻るとレイプ犯のひとり(劇団ひとり似)が室内に居た。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 身分証を返しに来たという劇団ひとりは、ジウンに襲い掛かり再び暴行に及ぶ。その物音を隣の部屋で聞いたウォンの彼氏は「大人しい顔してやることやってやがる。」と誤解する。ジウンは暴行されながら、手にとったガラス器で男の頭を殴打、さらに割れたガラス片が首に刺さり、劇団ひとりは死んでしまう。
 パニックになりシャワーで返り血を流している時、カン刑事が同僚の刑事と共に訪ねてきた。「話が聞きたい。中に入れて欲しい。」というカン刑事に「体調が悪い。無理。」と嘘をつき帰してしまうジウン。
 翌日、工場。面接を受けていた会社からの「採用通知」にも浮かぬ顔のジウン。工場まで来たカン刑事に「もう来ないで。警察は信用しない。」と筆談で伝える。拒否るジウンをなんとか食事に誘ったカン刑事は、食堂で「自分の妹も同じ言語障害であること」を話す。その話に少し心が揺らぐジウンだったが、会話の中で「正当防衛の成立条件」の話題になり、「凶器を使ってはいけないこと」などの厳しい条件を聞いたジウンは、カン刑事に事実を話すのをやめる。自宅に戻り、震えながらノコギリで劇団ひとりをバラバラにして冷蔵庫に入れる。「彼氏の暴力が酷いから泊めて」と来たウォンを部屋に入れるわけにいかないジウンは、ついウォンを殴ってしまう。
 汚職刑事・パクがジウンの部屋を訪ねてくるがジウンは留守。隣の部屋のウォンの彼氏が顔を出し「いついつ、男とやりまくっていた」という誤解情報を話す。「暴行を受けた同じ日にセックスをする女はいない。」「やはり襲われたのは嘘だったんだ。」と思い込んだパク。
 夜道でみつけたジウンを追いかけ「警察に虚偽の訴えをするのは犯罪だ。黙っておいてやるからカネよこせ」と迫る。ジウンはバラバラにした劇団ひとりを処分しようとしている最中で、手にもっていた袋の中には劇団ひとりの手首があった。それを見られたジウンは逃げ出し、追いかけっこの末、パクを撃ち殺してしまう。銃はパク刑事のモノだった。監察は、銃弾の使い方などから「犯人は狙撃手だ。」と見る。

 ウォンは正社員登用をちらつかしてカラダを狙われていた上司に、自分から「今夜飲みに行きませんか?」と誘う。彼女は正社員になった。
 カン刑事は、介護している言語障害の妹が病院でトラブルを起こし、精神的にまいっていた。そんな中、ジウンに電話をかけ「会いたい」という。
 ジウンは警察での事情聴取に応じるようになった。そして、署内で取り調べを受けていた違法賭博グループの中に、レイプ犯のひとりを発見する。カラダが震えるジウン。
 ここで、ジウンが、事故にあう前には全国大会で優勝するほどの射撃の名手であることがわかる。釈放されるレイプ犯の後をつけ自宅をつきとめるジウン。
 ジウンは工場に退職願を提出する。自宅に戻ると、ウォンが正社員をひきかえにエロ親父と寝たことを知った彼氏が激怒し、ウォンを殴り倒していた。血まみれで気を失っているウォンを病院に運ぶジウン。ウォンはそれに気づいていない。
 いよいよ腹を決めたジウン復讐を誓う。
まずは、ウォンに暴力をふるった彼氏を呼び出し、駐車場でアッという間にに額に一撃。即死。事故現場を調べているカン刑事ら。殺された男の同居人ということでウォンに聞き込みにいき、職場がジウンと同じだと知ってなにかを悟る。カンの同僚の刑事は「ジウンは射撃の名手だ。」とほぼ確信的にカンに進言するが、カンは事実を信じたくないのか、その言葉をさえぎり「署で余計なことをいうなよ。」と釘を刺す。
 カン刑事の元に郵送物が送られてきた。ジウンの書いた絵だ。「妹さんに」プレゼントだった。銃を持っている勇敢な女の絵。絵に書いてある数字「87987」は、一連の殺害に使われているパク刑事の銃の登録番号だった。
 次にレイプ犯の部屋へ侵入したジウンは、股間に二発、額に一発で殺害する。殺された男は、ジウンが襲われた当日に提出した髪の毛の主だとわかる。殺されたのはジウンをレイプした男!…カン刑事も、ジウンがこの連続殺人の犯人だということを、彼女が復讐を始めているのだという事実を、いよいよ認めざるを得なくなる。
 ジウンの自宅に侵入したカン刑事は日記をみつける。事実がすべて書いてあった。後ろから殴られるカン。気を失ったカン刑事をしばりつけたのはジウンだった。
 「あなたを助けたい」というカンに「どうやって?法は助けてくれない。私はこうするしか方法がない。」というジウン。そこでカンは、妹が言語障害になったのも、同じく性犯罪が原因だったと話す。その時の犯人はわずか六年で出所しのうのうと暮らしているという。私だってあの男を殺したい。でもそんなことしちゃダメだ、と言うカン。
 ジウンはカンを部屋に置いたまま、次の復讐に行く。
 残るレイプ犯の男がいるカラオケボックスに行くと、そこにはウォンを誘惑したエロ上司がいる。一度は見逃しかけたジウンだったが、ウォンを薬漬けにするような発言が許せず、エロおやじを射殺する。騒ぎに飛んできた店員の両足を撃つ。痛みでもがく店員。そこにカン刑事ら警察が踏み込んでくる。
 自殺しようとするジウンを必死に説得するカン刑事。言葉が届いたのか、ジウンは銃を捨て、カン刑事の元に歩みだした次の瞬間、後ろから店員がジウンを撃った。倒れるジウン。呆然とするカン刑事ら。
 カンは怒りから店員を射殺。現場は大騒ぎ。

 ウォンはジウンからの置き手紙を読んでいた。通帳のお金をすべてあげるということと、昔の交通事故のきっかけとなった珍走団時代のことを含め、私はあなたを恨んでいないという内容に、涙するウォン。
 カン刑事は、警察の仲間の口裏あわせにより正当防衛が認められた。
ジウンは、病院で危篤状態にあった。
 病院のロビーでの看護婦の会話。「ジウンはもう持たない。来週には脳死認定となるだろう。ただ皮肉なのは、ジウンの隣で同じく危篤状態で寝ているレイプ犯の男に、ドナー登録をしているジウンの肝臓が移植されるはず」と。
 それを聞いたカン刑事は二人の病室に入り、中から鍵をかける。
レイプ犯の酸素注入器を外そうとするカン…だったが、思い直し、なんと、ジウンの酸素注入器をはずす。苦しむジウン。呆然と座っているカン。病室の外では鍵のかかった部屋を医者たちが激しくノックしている。

 カン刑事は取り調べ室にいた。
疲れた表情で、でもどこかスッキリしたような、なんともいえない表情でタバコに火をつけた。

つまりこんな映画(語りポイント)

 ちょっとやりすぎ。
 交通事故、孤児、障害、性的暴行、信用しない大人、ひどい大人、ひどい社会…に愚弄される少女。これでもかと「悲しい設定テンコ盛り」な前半はやや辟易します。そこまでやらなくていいだろう、かえってシラケる。というのが一般的な感想になると思います。

 ただ、彼女が狙撃の名手だという設定を使って、映画の中に出てくる「ムカつく奴ら」を片っ端から消していく様は、そのテンポの良さもあって痛快。それなりにカタルシスを得られます。もし、そこにいちいちドタバタなアクションでも入ってしまうと見てられなかったでしょうけど「その気になれば銃弾一発で即死にできる。」という設定を使って、時には一撃で、多くても三発くらいの銃弾で片づけていくもんで「そこまで漫画にしてくれるなら…」それなら、前半のやりすぎな設定もアリかな、と思えてくる。

 パク刑事がやられる路地裏のシーンでは「やっぱり」雨が降ってくるし…そこは韓国映画、期待を裏切りません。
 
 思うに、なんでも「恥ずかしげもなくやりきってしまう」ってけっこう大事で「そこまでやられたら仕方ない」と思わせたら勝ちなところがある。だって、自分はそこまでやっていないのだから。やりきった奴に文句は言えなくなる。
 そこまでやってくれる韓国映画、恐るべし。

 テーマは完全に社会派で「弱者を守ってくれない法に対する憤り」がメイン。


 同じような境遇にあって、それでも我慢して生きようとしているカン刑事と、やけくそ気味に復讐に走るジウン。行動は真逆のようですが、根底にある「社会に対するアキラメ」は同じ。一瞬、不可解に感じるラストシーンのカン刑事の行動も、「すべての経緯を知っている自分にはわかるが、社会に、ジウンが取った行動の意味は、正当性は、絶対にわかってもらえないだろう。」という絶望。そこに希望はほぼないです。

 面白いから観る価値はあると思います。けど暗い。なにせ暗すぎる。

観た後は、ぜひ他の映画で気分の上書きをおススメします。