【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『ゴシカ』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『ゴシカ』
原題:GOTHIKA
2003年 アメリカ
監督:マチュー・カソヴィッツ
出演:ハル・ベリー、ロバート・ダウニー・Jr、ペネロペ・クルス、 チャールズ・S・ダットン、ジョン・キャロル・リンチ
 おススメ度★★☆☆☆(2/5)

 精神分析医が、突然、記憶にない夫殺しの罪で刑務所の精神病棟に入れられていると云うツカミの設定で、それなりに楽しめます。しかし、結局はなんでもアリの心霊モノになってしまうので突っ込みどころ満載。とはいえ、ただ怖がらせるだけのホラーでもなく人間のサガや心理を描いてもいる。えっと…ほめてるのかけなしてるのか…要するに微妙な映画ではあります。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 女性刑務所の精神科病棟に勤務するミランダ(ハル・ベリー)。囚人のクロエ(ペネロペ・クルス)とカウンセリング中。「昨夜もあいつが私の中に入ってきた。悪魔にレイプされたの。」と話すクロエは、義父殺しの罪で収監されているが、精神異常者とされている。「どうせ誰も信じない。誰にもわからない」と暴れるクロエに「やれやれ」と言った様子。

 ミランダの夫はダグという黒人の大男。刑務所の上官。二人がイチャイチャしているところを目撃して冷やかすピート(ロバート・ダウニー・Jr)は、内心、ミランダに気がある。

 ある雨の晩。車で帰宅中のミランダは、交通規制により回り道をするが、トンネルを抜けたところで道路の真ん中に立つ若い女性・レイチェルを避けようとして路肩に車ごと突っ込んでしまう。
 降車してレイチェルの元に歩み寄ったミランダは、突然、炎に包まれて気を失う。

 ミランダが目を覚ますと、そこは刑務所の精神病棟だった。同僚のピートから、夫・ダグが死んだこと、殺したのはミランダ自身であることを聞かされる。雨の晩の出来事を話すが誰も信用してくれない。すっかり精神異常者扱いで、精神分析医のミランダは、わけのわからないうちに、囚人・患者へと立場が変わってしまっていた。

 どうやら、あの雨の晩の事故の後、ミランダは歩いて自宅に戻り、そこで夫のダグを殺害したらしい。ミランダ自身は何も覚えていない。

 果たして、ミランダの身に何が起こったのか。雨の道路に立っていた女は何者なのか?実在するのか?

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 囚人としての生活。元々は自分がカウンセリングをしていた囚人たちの中に放り込まれる。クロエがそばに来て「ようこそ。今日から仲間ね。貴女が何を言っても誰も信用してくれないわ。だって精神異常者だもの。」と言う。

 ミランダはたびたびレイチェル幻影を見る。独房に血で書かれる「NOT ALONE(ひとりじゃない)」の文字。シャワールームではレイチェルに刃物で襲われるが、それは傍から見たら、ミランダの自傷行為だった。

 弁護士や、死んだダグの親友であり保安官のボブからも、すっかり異常者扱い。弁護士は「心神喪失をアピールするしか勝ち目はない」と言われ「私はやっていない。私は異常じゃない。」とキレる。

 現場写真の中にも「NOT ALONE」の文字があった。

 ミランダは、自分がダグを殺した現場にもうひとり、誰かがいたことを思い出す。そして、雨の道路に立っていたレイチェルが、同僚フィルの娘であることを知る。しかし、レイチェルは四年前に自殺していた。 
 
 ミランダは、レイチェルの霊が、自分になにかメッセージを伝えようとしているのだと察し始める。

 怪しいと感じてる同僚のピートの仕事部屋に入り込むミランダ。するとパソコンにレイチェルの自殺を報じる新聞記事とレイチェルの霊がクロエのいる独房近くに立っている映像が映る。
 クロエに危機が迫っていると感じたミランダは監禁独房に行く。そこで見たのは、クロエが、タトゥーの入った男にレイプされている光景。しかしそれは幻影で、クロエは自分で壁にぶつけて怪我をしただけだった。

 しかし、ミランダはそれらの幻影を「それが真実」と信じ、ピートらに訴えるが、もちろん信用されない。

 翌日、クロエに話しかけ、カウンセリングで信用しなかったことを詫びる。クロエはミランダと抱擁し「体を奪われても心は絶対に渡さない。次は貴女よ。」と言う。

 ミランダは刑務所を脱走し自宅に戻る。自宅の納屋で見たのは、夫のダグが少女をレイプして笑っている動画だった。さらに、納屋に監禁されていた別の少女を発見する。

 警察で聴取されるミランダ。刑務所を脱走したことは少女を助けたことで不問とされている。同僚のフィルは、娘・レイチェルを殺したのがダグであったと知ってショックを受ける。
 レイチェルは自殺する前、精神的におかしくなって治療を受けていた。その原因も、ダグから受けた性的暴行にあったことを知る。

 ミランダは保安課のボブに「もうひとり犯人がいる。NOT ALONE の意味はそれだったの。犯人は胸にタトゥーをした男」と相談するが、その犯人が、今、相談しているボブだった。

 ボブがミランダに襲い掛かる。親友のダグと二人で少女をレイプして楽しんでいたことを告白しながら、猟銃でミランダに迫る。
 そこにレイチェルの亡霊が現れ、ボブをかく乱。その隙にミランダがボブを撃った。

 一年後、出所したクロエと街を歩くミランダ。
クロエは遠くの土地にいって仕事をはじめるようだ。「恩人。感謝している。」というクロエに、ミランダも「私も、聞くことを教わった。」と抱擁し、別れる。

 

つまりこういう映画(語りポイント)

 前半の展開は面白く、いろいろ期待させてくれます。

 突然、記憶にない夫殺しの犯人になっていて精神病棟に入れられ、何を言っても誰も何も信用してくれない状況。精神分析医から一転して患者の立場に変わった戸惑いは、ありがちではあるけど「自分がそうなったらどうするだろう?」と感情移入しやすい設定。

 そこから「心霊ホラーに見せかけた心理サスペンス」に持っていってくれたら良かったのですが…。例えば、誰かが彼女を助けるために仕組んだ嘘の設定で周りの全員が演技をしていた、とか。なにかの目的のために生きている少女を亡霊のように見せていた、とか。いろいろやり方はあったはずなのです。

 ところが、結局は心霊モノになっちゃうのです。

 夢オチと同じ「根拠不要。何でもあり。」は、脚本として卑怯な印象になってしまう。

 さらに物語としていろいろ問題点が多く…。

 設定も自己中心的。夫・ダグは確かに悪人で殺されてもいいキャラクターなのでしょうが、それでも、ダグを殺したのは実際にミランダなのです。レイチェルの代理復讐という大義名分があり、それで勧善懲悪として成立しているのでしょうが、前半で「私はやっていない。誰も信用してくれない」と焦っていたミランダはどこ行っちゃったの?なのです。結局、犯人はミランダだったのだから「信用してくれない」も何もない。「やっぱりお前やんけ!」と突っ込むところ。

 そこは、確かにダグを追い詰めたのはレイチェルの意志を継いだミランダであったけども、最終的に手を下したのはミランダではなく、他の誰か、あるいは、レイチェルの霊にかく乱されてダグが自分で自分を撃ってしまった、とか。彼女はまったくの無実でした、にしないと「なにが正義か?」がわからなくなる。正義の押し付けになっている。思い込みの正義ほど怖いものはないだけに…。

 同僚役のピート(ロバート・ダウニー・Jr)が実は悪い奴だった?と思わせようとするミス・リードもまったく効いていない。ミス・リードを仕掛けるなら、ピートが、なにか事情があって怪しまれる動きをしていたとか、それもこれもミランダを助けるためだったとか、怪しまれるなりの理由を作っておかないと存在感が出ない。

 と言いつつ、

 冒頭で「精神病だから」と決めつけて軽くあしらっていたクロエ(ペネロペ・クルス!)の辛さを、同じ立場になってやっと理解できたミランダという構図は、映画のテーマとしては好きです。

 二人の友情で終わるラストシーンも雰囲気は良く、突っ込みどころ満載ながら、鑑賞後の気分は悪くない、それなりに楽しめる映画だと思います。