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基本データ・おススメ度
『聖なる復讐者たち』
原題:The Reckoning
2014年 オーストラリア
監督:ジョン・V・ソト
出演:ジョナサン・ラパリア、ルーク・ヘムズワース、ハンナ・マンガン・ローレンス
、ヴィヴァ・ビアンカ、アレックス・ウィリアムズ
おススメ度☆☆☆☆☆(0/5)
この主演ふたりに感情移入して応援できる人が、世界中に何人いるのでしょうか?オーストラリア映画だから、シドニーあたりに2~3人はいるのでしょうか。
見る価値ゼロと自信を持って言える駄作。
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◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
冒頭、神様にお祈りをしている少女・レイチェル。「この苦しみから救ってください。運命は受け入れます。」などと言っている。彼女は余命二か月。姉のアビーは一年前に交通事故で亡くなっている。手にはアビーの携帯。
朝、ソファーで目覚める刑事ロビー。妻からは、仕事優先で家族を後回しにしていることを責められている。おまけに浮気してるっぽい。
緊急呼び出しで向かった殺人現場。殺されていたのはロビーの友人、ジェイソン。ジェイソンの胸のポケットからSDカードがみつかる。
SDカードの中には映像が入っており、再生すると、レイチェルが「一年前、姉がひき逃げされた。警察は無力。わたしたちが真相を暴く」と宣言している。レイチェルは2日前から行方不明になっていた。
どうやら、余命短いレイチェルが、ひき逃げされた姉の復讐をしようとしているらしい。
以降、署内で再生されるSDカード内の映像と、捜査を進めるロビーと同僚の女刑事コナーの動向が並行して、映画は進む。
▼▼以下ネタバレ▼▼
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ネタバレあらすじ
映像内。公園で、レイチェルが若い男女(ルーカスとエンジェル)に話しかけている。アビーの携帯に2人の連絡先があったから尋ねてきたと言う。カメラを回しているのはレイチェルの彼氏。映像は途中で切れる。
レストランの映像。誰かに殴られたアザのある彼氏の顔。発作がおこり薬を飲むレイチェル。そのレストランに聞き込みに行くロビーたち。モーテルまでの道を聞かれたとか。
モーテルに行くロビーたち。2日前の映像では、モーテルのフロント係をしていた男が、レイチェルたちに薬を進めていた。モーテルの部屋にはモルヒネがあり、昨夜もタトゥーをした怪しい男がレイチェルたちを探しに来たと聞く。
アビーのカラダから濃度の高い覚せい剤反応。アビーにも非があったのかもと女刑事コナーが言う。
モーテルのフロントの男が死体で発見される。
映像。駐車場でBMWに乗った入れ墨男に近づくレイチェル。車の中には薬があった。その後の警察の捜査で、入れ墨男は殺人罪で8年服役していた過去があった。
映像。教会へ行き、神父に無理をいって簡易的な結婚式をあげるレイチェルと彼氏。
彼氏の情報がわかった。アンドリューという名前で、2年前に自分の家に火をつけて父親を焼死させ精神病院に入っていたことがある。
映像。麻薬密売組織のアジトへ行くレイチェル。屈強そうな男とボスのヒューゴが出てくる。
森の中で若い二人の遺体が発見されたと連絡がくる。レイチェルたちかと思ったロビーは現場へ行くが、それは、レイチェルではなくルーカスとエンジェルだった。
ロビー回想 死んだ同僚のジェイソンと車に乗り、どこかに向かっている。
署にもどるロビーの姿がリアルタイムで録画されている。ロビー宛てに届いた郵便靴はSDカードで、レイチェルたちが撮っていた「映画」の前半部分の完成版だった。
再生すると、レイチェルが「正義の裁きをくだす」と宣言し、アビーに薬を売ったルーカスとエンジェル、2人がクスリを調達したモーテルの店員、その運び屋ジェイコブ(入れ墨の男)、元締めの麻薬組織の男たちとボスのヒューゴ。…がレイチェルたちに殺されていく映像だった。
レイチェルは、アビーの復讐として、アビーに覚せい剤を売った関係者を全員殺して回っていた。ヒューゴが殺される直前、「薬のルートは言えない。言うと殺される」と言いつつ、脅されて口を割った「ルートは警察。ジェイソンだ。」と。
麻薬の密輸ルートが、ロビーの友達で、殺されたジェイソンだったことで、他の刑事たちが一斉にロビーを見る。さらに映像では、ジェイソンが殺される映像も入っており、そこでジェイソンが「運転していたのは、ロビーだ。」と言う。
「俺じゃない。」というロビーだが、同僚は「隠蔽していたなら罪だぞ」「違うんだ」とのやりとりから、ロビーは捜査から外され、帰宅することに。
リアルタイムの録画映像は、ロビーの自宅。レイチェルたちがもうロビーの自宅にいるということだ。そこに帰宅してくるロビー。
ロビーは、どうやらしばらく拒否られていた妻とのセックスをひさしぶりにする。
深夜、娘たちがレイチェルと彼氏に拉致られている。
ロビー回想。ジェイソンは車の中で、麻薬密輸で儲ける話をロビーに持ち掛けている。拒否するロビーだが、その時、車の前にクスリでフラフラになったアビーが飛び出してきて、はねてしまった。ジェイソンに銃を突き付けられ、仕方なしに逃げるロビー。
ロビーは実際にひき逃げをいていた。
家の中、ロビーと、レイチェルたちの争い。ロビーが彼氏が父親を殺したことを暴露すると、レイチェルは動揺。彼氏をロビーが撃ち、ロビーの肩をレイチェルが撃った。
レイチェルに追い詰められ万事休すだったが、なぜかレイチェルは手を止めて泣き出す。その隙に、同僚の女刑事コナーがレイチェルを撃つ。
映像の中、母宛てに「アビーの敵をうつわ。許して」とメッセージを入れているレイチェル。
つまりこういう映画(語りポイント)
レイチェルちゃんは余命二か月。自分の余命が短いもんだからヤケになって、一年前に交通事故で死んだ姉のカタキを討つという大義名分を持ち出し、勝手にクスリ中毒だっただけの姉に、クスリを売ったたいして悪者ではない関係者をどんどん殺していく、ただの連続殺人犯。
刑事ロビーは、アビーをひき逃げした犯人。友人にそそのかされたとはいえ、自分が運転する車でアビーをはねたのは事実なのに「俺は悪くない」と自分で勝手に決めていて、その事実も隠蔽したまま、のうのうと刑事を続け、劇中でも、一切自分から告白することはなく、バレたもんで、あ~どうしよう?と頭を抱え、それでもなんとか罪から逃れられないかと姑息に考えているクズ男。
この主演ふたりに感情移入して応援できる人が、世界中に何人いるのでしょうか。オーストラリア映画だから、シドニーあたりに2~3人はいるのでしょうか。
唯一、面白い(面白くなるかも?)と期待したのは、2日前の映像とリアルタイムの捜査現場を平行して見せていく構成。それがいつしかリアルタイムに結合するという予想も込みで、そこから「登場人物たちの事情」を見せてくれるかと思ったのですが、情状酌量の余地ゼロのまま、映画は終わってしまいました。
捜査開始時点で、最後は自分がターゲットになることは、ロビー本人は最初からわかったはずだし、SDカードの映像を見て誰もがわかるはずなのですが、そこから呑気に帰宅して呑気に妻とセックスするのも、ありえない脚本です。
若い男女が、屈強な麻薬密輸団の男たちを全滅させるのもリアリティなし。
また、刑事が「ひき逃げ事故を起こしてしまい苦悩する物語」をやるなら、冒頭で事故のシーンのネタバレから見せないと意味がない。最後に「ひき逃げ犯人でした」じゃ、観客はどうにも受け取りようもない。
レイチェルを余命二か月にする必然性もないし、姉が薬漬けになったことを売人たちのせいだと考えるのも逆恨みでしかなく、もっと根本的な問題がきっと他にあって、かたきを討つべき対象が違うんじゃないかとか。
全編突っ込みどころしかない。
とにかく、良い点が皆無。
WOWOWの「日本未公開の映画」シリーズは、面白い映画も多いけど駄作も多い。そもそも未公開ということは、配給会社がどこも手を挙げなかった買わなかった映画という意味なので、駄作率が高くなるのは当然ではある。
こんな脚本に、製作段階で「これじゃダメでしょ」と言う人がひとりもいなかったのがと不思議に思う洋画もたくさんありますが、逆にいえば、それくらい映画産業が栄えているということ。日本でいえば80年代や90年代のVシネマ乱造時代と同じで「それでもペイできる」という文化的土壌があるということは、単純に羨ましい限り。