【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『マリアンヌ』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『マリアンヌ』
原題:Allied
2016年 アメリカ
監督:ロバート・ゼメキス
脚本:スティーブン・ナイト
出演:ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、ジャレッド・ハリス、サイモン・マクバーニー、リジー・キャプラン
 おススメ度★★★★☆(4/5)
 良くも悪しくも特にひねりがなく、ド直球の感動物語。相変わらずブラピの泣き顔は絶品。号泣必至。観て損する映画ではないのです。レビューでは「そもそも、どうして二人は愛し合っちゃったのか?」に特化して考察してみます。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 1942年、第二次世界大戦下。カナダ人のマックス(ブラッド・ピット)は、砂漠の街モロッコに来た。迎えに来た男から「自分の妻の特徴」を聞かされるマックス。

 パーティ会場に到着したマックスは、ドイツ将校たちの前で初めて会う妻マリアンヌ(マリオン・コティヤール)と抱擁し、仲の良い夫婦を演じ始める。

 マックスとマリアンヌは、ある任務を遂行するために、夫婦役を演じることになったイギリスのスパイだった。

 部屋に戻ると、マリアンヌはマックスが「パリから来た夫」らしくないことへのダメ出しや、スーツや靴を見せながら「あなたは常に高級な服を身に着けている人。靴もいつもピカピカよ。」とキャラクター設定の説明。

 さらに、夫婦らしい振る舞いの練習。「キスをして」と指示したり、幾度も抱擁する。しかし、夜になると「私はベッドへ行く。あなたは屋上で星を数えていて。」と言われるマックス。

  偽装夫婦。スパイ。危険な任務。

 あくまで仕事として淡々と事を進める二人だが、おそらく最初の段階から、出会った瞬間から、すでに二人の間には、異性としての意識が強く芽生え始めていた。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 二人の任務は、ドイツ高官の暗殺。まずは、高官が出席するパーティへ出席する必要がある。パーティへの参加資格を得るために、ナチスの大使に会いに行くことにする。

 打ち合わせをしながら準備する二人、鏡に映ったのは、着替えているマリアンヌの裸の背中。密かにガン見するマックス。

 二人はそつのない演技で大使から信用を得て、パーティへの参加資格をゲット。

 砂漠で射撃の練習をする二人。マリアンヌの銃の腕前が凄い。淡々と当日の手順を説明するマリアンヌ。「マシンガンはテーブルの裏」「安全装置を外すのを忘れずに。」

 暑い日中、部屋で食事をする二人。「暑いわ」と言いながら、わざとシャツの胸元をはだけブラジャーを露出するマリアンヌ。それを見て反応するマックスに「あなたの武器は安全装置がついてるかしら?」と、ビックリするくらいエロオヤジ的なセリフをかます。
 マックスは「俺を試してるのか?」「シャツを着ろ。相棒とヤると、いざヤる時に失敗して、相手にヤられてしまう。」と自制する。
 
 砂漠を散歩しようと提案するマックス。

 砂漠に座り「戦争が終わったらどこへ行くつもり?」と聞くマックスに、「戦争が終わったら、別にどこにいても一緒。」と答えるマリアンヌ。
 今回の作戦で、生き残る可能性は低いと感じている二人。「60%だろう。二人揃って生き延びる確率はもっと低い。」というマックス。

 砂漠に停めたジープの中。「どうせ死ぬなら(自分たちが愛し合っても)誰にも知られないよね?」と言うマリアンヌの表情は、普通のかわいい女性の顔だった。
 激しく求めあう二人。車外では激しく砂塵が舞っている。二人の運命と宿命を象徴するような砂嵐。

 作戦決行の日。ドイツ大使の射殺に成功し、他の将校やパーティの出席者にもマシンガンを乱射する二人。逃走する二人の車を追って来る者はいない。「私たち生きてるわ、二人とも。」と感激するマリアンヌに、マックスは「一緒にロンドンへ行こう。僕の妻になってくれ」とプロポーズ。

 三週間後。

 マリアンヌのイギリス入国許可が降り、家族や仲間に祝福され二人は結婚した。上官は「仕事の相棒を妻にするなんてあり得ない。」とあくまで苦言を呈す。

 ロンドンにも戦火は及んでおり、時折、ドイツの空襲を受ける。妊娠したマリアンヌは、まさに空襲の最中、路上で、マックスとの愛の結晶・アンを産む。出産の瞬間、マリアンヌはマックスに「これが私。本当の私。信じて。」と叫ぶ。

 一年後。

 三人は家族として幸せな生活を送っていた。マリアンヌはたびたびパーティに呼ばれたが、そのたび、娘のアンを近所の婦人に預けていた。

 ある日、マックスは上官に呼び出され「君の妻はドイツ軍のスパイだ。」と告げられる。到底、信用できないマックスは「ふざけんな」と荒れるが、上官は淡々と「マリアンヌ・ボーゼイジュアは1941年に死亡している。」という。つまり、妻のマリアンヌは、マリアンヌに成りすました別の人間、ドイツの二重スパイという。
 「でも俺たちはドイツ大使を射殺した。」と主張するマックスだったが、実は射殺したのはナチスの中でも反体制派のリーダーで、ヒトラーから暗殺指令が出ていた人物だったと聞かされ、愕然とする。

 軍がスパイ疑惑を確かめるときに行う実験があった。それは「2307」と言い、23時7分にマックス宅に電話をする→マックスは電話で聞いたニセの極秘コードを紙に書き留める→そして、わざと妻のマリアンヌに見えるところに置く。数日後に、その偽情報がドイツに流れていたら、マリアンヌがやはりスパイだということになる。
 仮に彼女がクロだった場合、マックス自身がマリアンヌを射殺しなければならない。それが、マックスが反逆者ではないとみなされる唯一の方法。

 信じたくないマックスは、独自に調べ始める。

 自宅パーティに集まった人間の中にいた宝石商が、マリアンヌに近づいて会話をしているのを目撃したが「宝石の購入をすすめられただけ」と言われはぐらかされる。「彼女を信じたい」一心で調査を進めるマックスだが、そのあまりの必死さに、マリアンヌもなにかを察する。

 一部では「重要セクションに復帰させる前に、マックスを確かめているのでは?」という推理もされた。つまり、二重スパイ疑惑が嘘の作り話で、それを受けたマックスがしっかりと任務を遂行するかを確かめるのだと。
 マックスはその推理が正しいことを祈った。

 マックスは、マリアンヌを良く知る人物を探しに行く。つまり「マリアンヌが偽物ではなく本当のマリアンヌ」と証明したいから。
 
 デラマーレという男に会いに、彼が収容されているドイツ軍の刑務所に侵入する。彼から聞いた話は「(マリアンヌは)水彩画が得意」だということ。妻・マリアンヌは確かに水彩画が得意だ。希望を抱くマックス。しかし、帰り際に「そしてピアノがうまい」と聞かされて固まる。妻がピアノを弾けるなんて聞いたこともない。

 本物のマリアンヌはドイツ軍の前で、美しいピアノ演奏を披露したのだという。

 翌朝、妻が目覚めるのを待っていたマックスは、一睡もしていない疲れた状態ながら「すぐに一緒に来てくれ。」と、マリアンヌを近くのバーに連れて行く。そこにはピアノがあった。
 「ピアノを弾いてくれ」「どうして?なんのために?」と聞くマリアンヌに「君を助けたいからだ。」と言う。

 「マリアンヌ・ボーゼイジュアはピアノが得意だった。」とつぶやくマックスに、マリアンヌは鍵盤のカバーをしめながら顔をあげ「その噂は知っている。」といった、その顔には、すでに涙があふれ出ていた。

 マリアンヌは確かにドイツのスパイをさせられていたが、それは、常に、宝石商たちドイツの工作員に見張られ脅されていたから。ベビーシッターのオバサンもまたドイツの工作員で、娘のアンは人質だった。

 2307の偽コードをドイツに送ったか?と聞くマックスに「脅されて送ってしまった」と告げるマリアンヌ。これでマリアンヌは追われる。そして、マリアンヌを殺さなければ自分も殺される。

 マックスは、彼女と娘をクルマに乗せ飛行場に向かう。道すがら、宝石商の男、ベビーシッターのおばさん、ら、工作員たちを射殺しながら。

 飛行機を動かそうとするが、土砂降りの雨でなかなかエンジンがかからない。そこに上官と部下数人がやってきた。「彼女は脅されてやっただけだ」「工作員も殺したじゃないか」と主張するマックスだが、「いずれにしろ彼女は許されない、彼女を助けるとお前も処刑だ」と告げられる。

 そのやりとりを聞いていたマリアンヌは、ダッシュボードから銃を取り出し、マックスたちに歩み寄る。そして「娘をよろしく。」と言い残すと、自分の喉元に向け引き金を引いた。

 即死した彼女を呆然と見るマックス。涙が溢れだす。

 上官は部下に「マックスは自らの手で敵のスパイを始末した。そう報告しろ。これは命令だ。」と言う。

 数年後、マックスはカナダの牧場で、成長したアンと暮らしていた。

 マリアンヌが生前に書いた娘への手紙。
 「これを読んでいる貴女は、私のことを覚えてはいないでしょう。でも、私たち夫婦は貴女を愛していた。マックスと貴女が、私にとってすべてだった。」

 

つまりこういう映画(語りポイント)

 まず、号泣しました。非常に良い映画です。おススメ。そのうえで… 

 特にヒネリのない正統派映画.。構成的にもほぼ完全に時系列で、ミステリー要素があるわりには、回想による謎かけや種あかしもない。それは決して悪いことではないけども、解釈を広げるとすれば劇中でほとんど描かれていないマリアンヌの心情くらい。(それはそれで深いものがありそうなのですが…。)

 この映画について普通にレビューを書いても、他の方が書いている内容とさほど変わらない内容になってしまいそうです。そこで「そもそも、どうして二人は愛し合っちゃったの?」について考察してみます。

 スパイです。偽装夫婦です。ブラピ演じるマックスも、最初は「相棒とヤっちゃうと仕事で失敗する。」と、マリアンヌと関係を持つことを避けています。じゃ、どうして、くっついちゃったのか。

◆カリギュラ効果

 「やっちゃいけない」と言われるとやりたくなるのが人間。その禁断さが、禁断を破るときの快感が気持ちを燃え上がらせてしまいます。不倫に燃えてしまうのもそうでしょうし、人の持ち物を欲しくなってしまうのも人間のサガ。マックスたちも、最初に自制心ありきだったからこそ、抑制を解き放った時の反動が大きくなった。序盤、キッチンで軽く挑発したマリアンヌに「服を着ろ」というシーンのマックスは、あきらかに我慢してましたよね。

◆ボディタッチ効果

 僕ら男性は「綺麗な女性にボディタッチされるともれなく好きになってしまう」という特性があります(断言した)。好きにならないまでも、気になります。嫌いな相手からだとまったく逆の効果になりますが。
 握手やハグ、「触れ合う」ことは、男女に限らず人間関係を親密にしていく上で大切なことです。

 夫婦を偽装していたマックスとマリアンヌなんて、初対面から5秒で抱き合ってキスしちゃいました。夫婦らしくふるまうために、部屋でも、キスや抱擁の練習をやりました。映画で恋人役をやった俳優たちが結婚しちゃうのと同じで、そうこうしているうちに、心も近づいていくのですね。

◆秘密の共有

 たとえ数日でも、数回でも、男女が一緒の時間を過ごすと、自然に「自分だけが知っている相手のこと」が増えていきます。たいしたことでなくてもよくて、秘密でなくてもいい、些細な、ちょっとしたことでも「お互いを知っている」感覚と「秘密を共有している」感が二人の距離を縮めます。
 
 マックスたちなんて、なんせスパイですから。偽装夫婦ですから。思いっきり共犯関係です。加えて、同じ部屋で過ごすうち、相手の「クセ」「仕草」を知っていきます。秘密の共有量がどんどん増えていくわけです。

◆吊り橋効果

 説明不要でしょうが念のために書きますと、吊り橋を渡っている時のドキドキや緊張から分泌される神経伝達物質が、恋愛の時に分泌されるものと同じ。だから、吊り橋のドキドキを恋愛のドキドキと混同してしまう。好きな人とはジェットコースターに乗れ、というアレですね。

 マックスとマリアンヌは、ドイツ高官を暗殺してさらにマシンガンを乱射しながら逃げます。めちゃくちゃドキドキするでしょう。これ以上ない吊り橋です。

 逃走中「生きてる!二人とも生きてる!」と喜ぶマリアンヌに、最高潮にドキドキしているマックスは、反射的に「結婚してくれ!」と口走っちゃいました。


◆既成事実 
 
 「明日死ぬかも知れない。」「どうせ死ぬのなら」と、砂漠に停めたジープの中で、とうとう二人は愛し合います。なんだかんだいって既成事実が最強。別の生き物である男と女の唯一の共通言語ですから。

 あのカーセックス・シーンはとてつもなく美しいですね。吹き荒れる砂塵が二人の宿命と激情を表現している。

◆結局、つがい。

 結局のところ、男女はつがいです。基本、引き合うものなので、二人の時間が増えていけば自然とくっつく可能性は高まるのでしょう。

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 そんなこんなの複数の効果で、ふたりはくっつくべくしてくっついたと。ここはひとつ、そういう強引な結論で終わります。

 そういえば、劇中(あるいは史実でも)偽装夫婦に関して「スパイ同士は男女の関係なってはいけない」というルールはないようです。そうなったら殺される等の規則があれば自制するのでしょうけど。

 余談ですが、戦争が終わった後に敵軍の兵士と結婚したひととか、銀行強盗と結婚した人質とか…「特殊な状況」からの生まれる恋愛って確実にありますね。人間の心って摩訶不思議です。


 誰かを好きになるって「一瞬の出来事」。

 そして、その「一瞬」が訪れる法則や理由のようなものは確実にあるのでしょう