基本データ・おススメ度
『蜘蛛女』
原題:Romeo Is Bleeding
1993年 イギリス・アメリカ
監督:ピーター・メダック
出演:ゲイリー・オールドマン、レナ・オリン、ジュリエット・ルイス、ロイ・シャイダー
おススメ度 ★★★★☆(4/5)
ホラーなのか、ふざけているのか、エロいのか、カテゴリー分けさえ難しいほどの怪作。傲慢な男が、女と欲にまみれてひたすら落ちていく…。レナ・オリンの怪演と、ゲイリー・オールドマンのダメ男ぶりは必見。加えて、お馴染みジュリエット・ルイスのの魅力も満載。
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◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
ジャック・グリマルディは巡査部長でありながらマフィアにも内通し、報酬を得ていた。同僚からロミオ(色男)と囃される彼は、美しい妻のナタリーと愛し合いながらも、若い愛人シェリーまで囲い、マフィアからの賄賂で潤った快適な生活を送っていた。
ある日、ジャックはマフィアの女殺し屋モナ・デマルコフを護送する任務に就く。モナは美しく強烈な魅力を放っていたが、マフィアのボスのドン・ファルコーネでさえ持て余し怖れるほど、狡猾で残忍な女でもあった。モナから自分を逃がすよう持ちかけられ誘惑されたジャックは、まるで蜘蛛の巣に絡め獲られていく獲物の様に、次から次へと彼女の罠に嵌られ破滅へと追いやられていく。(wikipediaより)
==以下ネタバレ==
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ネタバレあらすじ
汚職警官のジャック(ゲイリー・オールドマン)は手に入れた裏金を自宅の庭に隠しつつ、妻と愛人に囲まれ贅沢な暮らしをしていた。しかし、ある日、女殺し屋・モナ(レナ・オリン)を護送する任務についたことから転落の道を走り始める。
モナはほとんど怪物キャラ。平気で人を殺し、その狂気のふるまいでマフィアのドンでさえ彼女を恐れるほどだった。
モナと絡んでしまったジャックは、ドンから彼女を殺すように命じられるが、逆に、彼女から持ち掛けられた取引に応じてしまう。裏切りがバレ、マフィアに追われる身となったジャックは愛人・シェリー(ジュリエット・ルイス)と別れ、妻を遠くの地へ逃がす。
さらに、モナの策略にハマり、モナを射殺したつもりが確認した死体はシェリーだった。モナは自分の腕を切り落としシェリーの死体を焼いて自らの死を偽装する。もはやモナに反抗できないジャックは、ドンを生き埋めにする。
二人は逮捕されるが、ジャックにすべての罪をなすりつけたモナは無罪放免となる。怒りで錯乱したジャックは、仲間の刑事たちの制止を振り切りモナを撃ち殺す。その際、自殺を謀るが未遂に終わる。しかし、なぜか周りの仲間たちに「良くやった」と祝福され、罪に問われずに終わる。
ラスト。ジャックは、過去を捨て新しい名前で田舎のダイナーのマスターになっていた。そこは妻と再会を約束したダイナー。ひとり寂しく、おそらく二度と帰らないであろう妻の帰りを待ち続けている…。
つまりこんな映画(語りポイント)
ゲイリー・オールドマンが「男って愚か」「人間って馬鹿」をとことん見せてくれる映画。
モナの怪物ぶりがとにかく凄い。
計画のために自分の腕まで切り落とし、高笑いしている。変です。人間じゃありません。モナの怪物ぶりを観るだけでも価値あり。
また、警察がすべてを揉み消したとも取れる最後の展開。一連の事件がショッキングすぎること、警察官の犯罪であること。大きななにかを守るためには、ジャックという人間さえこの世から消え、何事もなかったことにされる。権力による情報操作。いかにも本当にありそうで怖いエピソード。
ラストシーンがきついです(良い意味で)。
「毎年5月1日か12月1日、ダイナーで待つ」と再会の約束をしたまま、一度も姿をみせない妻。今や生きてるか死んでいるかさえ不明。
幻想をみるジャック。ダイナーの扉が開く、店に入ってくるナタリーの姿。しかし、すぐにナタリーの姿は見えなくなる。
「もう少し、居てくれる時もある」とのモノローグは、それが毎回見る幻想であることを、本人が自覚しているということ。
いまだに傷が癒えない…のではなく、本人に「傷を癒す気がない」のです。
ただただ後ろ向き。ほぼすべてをあきらめ、妻の幻影と共に生きていくと心に決めているような救いようのない姿。
もう取返しのつかない過去の過ちにうちひしがれるジャックの姿は、世の(なにかしら心あたりのある)男性には、かなりきついラストシーン。
カネと欲にまみれた「色男の末路」
おそらく彼を救うのは、あらたな「誰かの愛情」しかない。
彼がきっと、いつか誰かの愛によって救われることを祈るほかない。