【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『テルマ&ルイーズ』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『テルマ&ルイーズ』
原題:Thelma and Louise
1991年 アメリカ
監督:リドリー・スコット
出演:スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス、ハーヴェイ・カイテル、マイケル・マドセン、ブラッド・ピット

おススメ度 ★★★★☆(4/5)

 女性二人の痛快ロード・ムービー。物語に犯罪が絡みますがシビアなクライム物ではない。やや感覚が古く80年代風お気楽調なのは仕方なし。まだ新人だったブラッド・ピット、ベテラン、ハーヴェイ・カイテルが脇を固め、存在感を発揮している。間違いなく良作です。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 田舎町で平凡で刺激のない生活を送る女性ふたりの旅行が、バーの駐車場で正当防衛ながら男を殺してしまったことで、どんどん後戻りのできない逃避行へと変わる。旅先で絡んでくるイケメン(実は強盗)と生まれて初めてのアバンチュールをするなど、大人しかった女性が、日常のしがらみから解放されて生き生きとした笑顔を見せ始める。よきアメリカの風景」をたっぷり味わえる、女性ふたりの冒険ロード・ムービー。

 ルイーズとテルマはどこにでもいる平凡な女性。共通しているのは、いつまで経っても何も変わらない現実に嫌気がさしていること。二人は旅行を計画する。
 若い頃に結婚して男は夫しか知らないテルマ(ジーナ・デイヴィス)は、夫に護身用に買ってもらった銃さえ怖がった触ったこともないくらい世間知らずだったが、彼女にとって旅行は冒険、まるで家出するようにいろんなものをバックに詰め込んできた。今まで触ったこともない銃も。テルマの天然ぶりにあきれるルイーズ。
 ふたりは酒場に入って騒ぐ。ナンパで寄ってきた男と仲良くなるが…。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 酔っぱらったテルマは駐車場で男にレイプされかける。間一髪で様子を見に来たルイーズには、昔、テキサスで強姦された(と思われる)過去があり、男を射殺してしまう。ここで自首していれば正当防衛にもなったはずの事件は、二人が逃亡を選んだことで、どんどん後戻りできなくなっていく。
 JDというイケメン(ブラッド・ピット)がヒッチハイクで車に乗って来た。モーテルに着いて、一度は大人しくその場を去るJD。逃亡資金を調達しようと、ルイーズは彼氏で売れないバンドマンのジミー(マイケル・マドセン)に連絡をとり、モーテルまでお金を持ってきてもらう。何も聞かずにいう通りにするジミー。その夜、ジミーとルーズ、テルマひとり…で2部屋を借りたが、ルイーズの知らない間に、テルマ一人の部屋にJDがやってくる。「君が忘れられない。」と。
 生まれて初めて浮気をするテルマ。JDが実は強盗で、レストランやコンビニを襲う方法を得意気に話す。翌朝。カフェにいるルイーズの元に来たテルマは、乱れ髪のまま、めちゃくちゃテンションあがってる。「最高!セックスの良さを初めて知った!」とはしゃぐテルマ。はしゃぎすぎ。
 しかし、JDをひとりで部屋に残してきたというテルマに「なにやってんの」と怒るルイーズ。案の定、JDは部屋に置いてあったルイーズの逃亡資金を持って逃げた後だった。
 お金がなくなった二人。テルマはなんとかしなきゃと思い、昨夜、JDに教わった方法そのままに、コンビニ強盗をしてお金を奪う。
 ハル警部(ハーヴェイ・カイテル)は、捜査当初から、二人は悪い人間ではないと確信し、なんとか助けようとする。そんな折、テルマが強盗を働いた監視カメラの映像を見せられ頭を抱える。
 何度か二人に連絡をとり「俺が助ける。自首しろ」というハルだったが、そんな言葉を信じられるかとばかり、メキシコへ逃亡をはかる二人。
 JDが捕まり、ジミーも事情聴取され、警察は事件の全容を掴む。「テルマが強盗をしたのはお前が金を奪ったからだ。」と、ここでもJDを責めるハル警部。
 二人は、何度もセクハラ発言を繰り返すトラックの運転手さんを銃で威嚇しトラックを爆破する。
 もはや完全な指名手配犯となった二人。ヘリコプターまで出動し、二人は追いつめられる。
 「これで本当の自分になれた」と言い合う二人は、キスをし、これ以上ないくらい明るい笑顔を見せながら、断崖絶壁に向けてアクセルを踏む。

つまりこんな映画(語りポイント)

 アメリカ、荒野、砂塵の舞うガソリンスタンド、モーテル…僕の知っている映画の中のアメリカを二人が疾走する。ロードムービーとして秀逸。「これぞ映画」な風景がそこにある。

 「生まれ変われた喜び」を噛みしめながら死を選ぶオンナ二人の物語。

 物語としてのリアリティは薄いのです。細かいこと言いっこなしな脚本ではあるのです。自由を求めて戦う映画はたくさんあって、それは大抵「刑務所」だったり「差別」や「迫害」だったり、誰が見ても「そりゃ大変だ。逃げろ。」と理解できる設定が多いのですが、この映画で二人が逃げようとしている対象は「退屈な日常」であり「夫」で「レストランのウエイトレス」なんです。「いや、もっと他にやりようあるでしょ?そこまでしなくても」と思うのです、普通に考えたら。
 
 でも、逆に、逃げる対象が僕らの非常に身近なものであることが、「周りからはなんてことないことでも、本人にすれば重要なこと。」だったり、「傍からみたらなんてことない状況が、本人にとってはどうしようもなく苦しい牢獄。」だったり。

 周りが理解してくれないからこその苦しみって、意外に身近にある。そこから逃げる方法は、やはり、周りが理解できない行動の先にあるのかも知れない。
 
 また、彼女たちをなぜかずっと助けようと肩入れするハーヴェイ・カイテルの行動も「なんでそこまで?」と思えなくもない。だが、その理由をあざとく説明されるよりはずっといい。つまりハル警部は「そんな人」なんだと、そう思えばそれで充分。

 そんな警部の想いは、最後まで二人には届かないまま終わるのだけど、観客にはその存在がわかっている。この構図もうまい。
 彼の想いが伝わっていれば、最後に二人は死を選ばなかったかも知れない。

  崖に向かう二人のクルマを走って追いかけるハーヴェイ・カイテルの背中と、崖に飛び出すクルマ…、ラストの流れは、映画史に残る名シーンのひとつ。

 「最後はクルマで崖に落ちる映画」とだけ聞いた人が想像するような暗い終わり方とは真逆。まったくもって「明るい」「希望に満ちた笑顔」がそこにある。

 ハル警部の存在は「誰も味方がいないと感じていても、きっとどこかに、もしかしたら全然思いもよらぬところに、心底、自分のことを心配してくれている人がいるかも知れないんだ。」そんな、希望に満ち溢れたメッセージ。

 

 意外にツボに入ったのが「テルマに捨てられた夫が、どんどんテルマが追い詰められていくニュースを聞きながら、どうしていいかわからず子供のように泣いている」シーン。そこ可愛い。夫も決して悪い人ではない。でも、そんなところがテルマには物足りなかったんですかね、その前に、イケメンなブラッド・ピットに女房を寝取られちゃってるし。ちょっとかわいそう。

  ちなみにこの映画、実在する連続殺人犯、アイリーン・ウォーノスと相棒の女性が2人で逃避行をした実話をモデルにしているという話ですが、ただ、ちょっとヒントにしただけですね。同じアイリーンの物語は「モンスター」(シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ)のほうが史実に近い。見比べる意味もないほど、まるっきり違う物語ですが。

 こっちもまた秀作ですよ。

 ▼「モンスター」のネタバレはこちら