【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『ミッドナイト・アフター』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『ミッドナイト・アフター』
英題:The Midnight After
2014年 香港
脚本・監督:フルーツ・チャン
出演:サイモン・ヤム、ウォン・ヤウナム、ジャニス・マン、クララ・ワイ、ラム・シュー
 おススメ度★★★☆☆(3/5)
 「トンネルを抜けたら、街から人間が消えていた。残ったのはバスの乗客のみ。」というツカミの設定は面白い。ハチャメチャでムチャクチャな映画ではあるけど、最後には「何が言いたいか」が超・明確にわかり、一気に良作化します。不条理満載ですが。駄作認定されそうな映画ですが、個人的には拾い物の良作

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 2012年の香港。大勢の客を乗せて出発する中型のバス。運転手は太った男・シュー。非番のはずが、会社から急な指示で当バスを担当することになった。

 次々に乗ってくるワケアリな連中。出発直前にケンカしてバスを降りたカップルが、事故で死んでいる光景をバスの中から眺める乗客たち。

 トンネルを抜け、大学生4人は大学内の寮に戻るべくバスを降りるが、そのうち一人の具合が悪くなる。寮の部屋に寝かせるが、急激に具合が悪くなり、慌てる他の三人。

 次のバス停に着いた時、ややヤクザ風の中年男性・ファが「誰もいない、おかしい」と言い出す。街には人影が一切なく、携帯の電波も通じなくなっている。そういえばトンネル内でバスが消えたと言い出すファ。
 「自分たちは事故で死んだんだ。」と推理するファ。占い師のおばさん・インは「物事に偶然はないわ。私たちは選ばれた人間よ」と言い出し失笑を買う。

 とはいえ、状況が変であることは全員が理解していた。

 一旦、電話番号を交換しあった彼らは、とりあえず、それぞれ自分たちの家へ戻ってみることにする。バスを置いて一旦解散となる。

 しかし、やはり街には誰もいない。街並みや店の商品もそのままなのに、人間だけがいない。

 彼らは、どこか別の世界にワープしてしまったのか?

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 若い男・アチーには彼女がいた。ヒロインであるユキにも彼氏がいる。お互いに連絡のとれないパートナーの心配をしながら、家の方向が同じということで一緒に歩いて帰る。途中、アチーは遠くにガスマスクをした男が立っているのを見る。同時に、ユキの髪の毛が逆立つ幻影も。ガスマスクの男も幻影だったのか?

 携帯の電波がつながっていることは確認できたが、サイトやブログの更新もみんな止まっている。アチーは自宅から自転車に乗って走り出す。
 学生たち。具合の悪かった友達を3人が見に行くと、男は溶けてしまっていた。走って逃げる大学生たちは、途中、アチーに出会うが、走りながら全員溶ける。

 アチーが向ったのは彼女の部屋。やはり彼女はいない。テーブルにはなぜかホコリが溜まっている。バスに乗る前に、アチーと電話をしていた時の部屋での彼女の姿が挿入される。アチーの回想。

 全員の携帯に同時に電話がかかってくる。しかし、電話は無言で、不快な音声だけが流れてきた。ファは全員にショートメールで「変な電話がかかってきた」と伝える。「俺もだ」「私も」となる。

 彼らは、レストランに集合して話し合うことにする。 

 遠くまで来てしまい歩いて戻るには遠い、ヤク中の男・マンファイ以外のメンバーがレストランに集まってくる。「やはり誰もいなかった」との報告をする中「ユキと一緒に帰った」というアチーにユキは「一緒に帰ってない」と否定する。

 アチーが見たガスマスクの男の話をすると、メガネ男が「それを裏付ける証拠がある」とPCを取り出し、電話の音声を解析する。解析からメッセージは「HELP」であるとわかる。そこに再度、電話が。
 電話の音声を解析しながら、かけてきた相手とモールス信号で会話すると「私はブリキ缶の中に閉じ込められている」と言っている。
 オタク男が「わかった。デビット・ボウイの歌詞だ。」と言いだし歌を歌う。

 電気屋で働くシュンが、店に北朝鮮の男がPCデータを極秘に抽出してくれと依頼に来たエピソードを話す。北朝鮮の男は「危険な場所ほど安全だ」などと言う。

 突然、爆発音がし、店の奥からオタク男が全身火だるまで飛び出してきて死んでしまった。

 店の外でガスマスク男を見かけて追いかけるアチーたち。捕まえた男は日本人で「マスクを取らないでくれ。君らを助けたい」「アチー、昔の同級生の顔を忘れたのか?」などと日本語で言う。「フクトウ」という謎の言葉?を残して男は逃げて行った。

 途中、出っ歯の女・ラヴィ―ナが何者かにレイプされ殺されている姿を目撃する。足には謎の斑点が。なにかに感染しているっぽい。

 再びカノジョの家へ行くアチー。そこに彼女から着信が。しかし、話が噛み合わない。電話の向こうの彼女は「今まで何してたの!?」と泣く。
 どうやら、現在は2018年。アチーたちがバスに乗った2012年から6年が経過していた。アチーたちは失踪者として捜索されたが発見されなかったこと。アチーの母がその心労から死んでしまったこと。そして、バスがトンネルを抜けたタイミングで、なにかしらの「爆発」が香港全体を襲ったことがわかる。

 彼らは「爆発」に影響で、6年後にタイムスリップしてきたらしい。しかし、どうして街には誰もいなくなっているのか?

 レストランに戻るアチー。サッカー好きの夫婦の旦那のほうが、いきなり具合が悪くなり、腕が溶けて死んでしまった。レイプされていたラヴィーナに触れたせいで、なにかが感染していた。

 アチーは、6年の月日が経っていることをみんなに話す。山の上に、電話をかけてきた人間がいるのではないかと考え、山に向かおうという話になる。バスを取りに出かける運転手のシュー。

 バスについたシューは、クスリでラりっているヤク中のマンファイと争いになるが、包丁で肩を切りつけバスから放り出す。

 若い不良の二人組、フェイケイたちの回想。バスがバス停に止まった時「世界が絶滅したんだ。どうせ死ぬなら」と考えた彼らは、出っ歯の女・ラヴィ―ナをレイプして殺してしまった。相方は止めたがフェイケイはいうことを聞かなかった。
 それを知った彼らは、フェイケイが感染していると確信し、レイプの罪を償わせる意味を兼ねて、全員で順番にフェイケイをナイフで刺していく。最後にナイフを持ったのは可愛い顔をしたユキだったが、彼女が最も残酷な刺し方をして、みんなが引く。

 ラヴィーナの出っ歯は変装だった。実は美人のタレントだったが、借金から逃げるために変装をしていた。事情を知っていた不良二人組の相棒が皆に責められる。

 ガスマスクの日本人が言った「フクトウ」が福島県のことであると推測する面々。福島の原発事故の時に大勢の人間が避難した事を思い出し、彼らは状況を悟る。

 「爆発」とは原発事故のことだった。香港に原発はないが、どこか近い地域の原発が爆発したらしい。バスに乗っていた彼らはなにかの弾みで6年後にタイプワープした。街の人間はどこかで避難生活をしている。街に誰もいないのはそのためだった。

 彼らはスーパーで即席のガスマスクやビニール服で防護しバスに乗る。大勢のガスマスクの男たちが襲ってきた。助けるためなのか、感染者として抹殺するためなのか。おそらく後者。

 カーチェイスで撃退する。安心する彼ら。赤い雨が降ってきた。

 バスの中、街が汚染される前の、家族とのなにげないエピソードを、それぞれに思い出す面々。幸せだったことを、今になって実感して涙する。ファがつぶやく。「家族に会いたい…。」

 バスはどこかに向かって走り出す。
 
「夕闇、都市が眠る時、輝かしい記憶を忘れていないか?今夜はどんな夜だろう。」

 

つまりこういう映画(語りポイント)

 メチャクチャな不条理劇ながら、最後には、とてもわかりやすいテーマをわかりやすく伝えてくれる。

 「誰もが、いつどうなるかわからない」のだと云うこと、だから、後で後悔しないように「今の幸せを噛みしめること」「家族や愛する人を大事にすること」

 実は、めちゃハートウォーミングな映画。

 ストーリーがどうであろうと、細かい部分が不条理満載で意味不明であっても、伝えたいテーマが明確に伝われば、映画の役割は半分成就する。結局は、物語を伝えたいのではなく、テーマを伝えたくて作っているのだから。

 不条理ではあるが、筋は通っている。 

 「街から人が消えた」というSF的なツカミが、実は原発事故で全員避難していたからだというネタバレは、なるほどと納得の行くアイデアですよね。タイムスリップがどうこうはさておき。
 いろいろおかしい部分のオンパレードですが、放射能の認識が間違っているのも、あまりに間違い過ぎて逆に狙いだと思える。すべてフィクションだと思えば。

 映像の色合いがキレイ。

 閑散とした高速道路をオレンジ調のアカリが覆っている感じは、まるで「ウルトラセブン」の世界。雰囲気良し。映像美だけで相当な点数を稼いでいる感。街並みもキレイで、香港の映画ながらアジアっぽい混沌を前面に出すのではなく、都会的なスタイリッシュを狙っている。

 それは、テーマの一部にある「都会で忙しく生きていて、つい大切なものをないがしろにしてしまう僕ら」に繋げるためだと思われる。ラストシーンのモノローグも摩天楼だったし。
 
 全体的なセンスが古臭い。
 
 全員、バスに乗る前にいつもとは違うイレギュラーな事情が発生していて、バスに乗ったのはルーティンではなく偶然だったと。ちょっとした事で運命って変わるんだと言いたいのだろうけど、見せ方がちょっとあざとい。

 それぞれになにかしらの事情があるのだけど、「カラオケボックスで上司にセクハラされ、俺の言う事が聞けないならクビだと云われ、仕事を失くした女」とか、昭和か!ロケ地も昭和の飲み屋街っぽいし。出てくる話も、アポロの月着陸だったりデビット・ボウイだったり。ただ、古臭いのは嫌いではない。おっさんホイホイではある。

 ヒロイン枠のユキ役は、ジャニス・マンという香港の美女モデル。

 福島に絡めた原発の話は…もうノーコメントしかないですね。ひどいといえばひどいのですが、クレーム入りそうなレベルですが、僕らも例えば他国で起こった戦争やテロなど、やはりどこか他人事で、いちいちナーバスには考えないですよね。そう思って寛容的に見るべきところ。

 ムチャクチャな映画なのに最後は感動できる。これは拾い物。