【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『ザ・サークル』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『ザ・サークル』
原題:The Circle
2017年 アメリカ
監督:ジェームズ・ポンソルト
出演:エマ・ワトソン、トム・ハンクス、ジョン・ボイエガ、カレン・ギラン
 おススメ度☆☆☆☆☆(0/5)
 小学生でも書けそうな脚本とオチに驚愕します。あまりにヒドくて逆に心地良いくらい。「監視社会への警鐘」から「それでも共存していかなければいけない覚悟」を描きたかったのだろけども、浅い。SF映画だというならば50年遅い。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 クレーム処理の電話オペレーターをしているメイ(エマ・ワトソン)。現在の仕事には満足していない。父親は難病を患っており、家庭内も決して明るくない。

 趣味であるカヤックで海に出るメイ。これから未知の海に漕ぎ出していくメイを暗示するシーン。

 友人アニーから電話。アニーはSNS企業「サークル」に勤めていて、メイを推薦してくれたようだ。面接を受けられると喜び車を飛ばすメイ。面接を受けたメイは合格し入社の運びとなる。

 アニーに社内を案内されるメイ。トレーニングセンター、映画館、スーパーマーケット等、まるでひとつの都市のように敷地内になんでも揃っている。私服勤務で自由な環境で働く社員はまるで学生たちのよう。

 先輩社員に仕事を教わり「トゥルー・ユー」というSNSの顧客対応を任されるメイ。顧客相手は慣れている。

 創始者のベイリー(トム・ハンクス)が社員の前でプレゼンテーション。新しいサービスは「シーチェンジ」というもので、どこにでも仕掛けられ小型カメラを複数設置することにより、まるでその場にいるかのように状況を確認できる監視装置。ベイリーの主張は「すべての人が秘密を失くし、生活を公開すればいい。それによって犯罪も未然に防げる。」社会の透明化。

 新人社員メイは、巨大企業の歯車としてその大きな流れの中に組み込まれていく…。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 入社から最初の週末。メイは実家に戻り、両親や幼馴染のマーサー(男)に新生活の報告をする。

翌週、出社したメイに同僚が「もっとsnsやりゃいいじゃん。もっとコミュニティを楽しまなきゃ。」と進言される。仕事のためでもあるのでメイはSNSをはじめ、自宅にある「マーサーが鹿の角を使って作ったシャンデリア」の画像をネタとしてアップする。

 その画像が原因で、マーサーは「鹿殺し」「動物虐待」などと世間からパッシングを浴びてしまう。アーサーはメイに「君の世界の一部になりたくない」と別れを告げる。

 ショックを受けたメイは、夜の海でカヤックを盗み海に出るが、荒波に襲われ転覆、救助隊に救われる事件になってしまう。。

 状況を知った経営者のベイリーは、メイを広告塔として利用しようと思ったらしく、メイを呼び出し、救助はシーチェンジを見ていたユーザーの通報によるものであると言い、社内発表会の檀上に立つように仕向ける。

 檀上、「誰かに見られていたらカヤックを盗んだ?」と聞かれたメイは「見られていたら盗まなかった」と答える。二人して社会の透明化を推奨しはじめる。

 さらにメイは、24時間の行動を世界に公開するモデルとなる。瞬く間に有名人となったメイは気分が良くなり、両親や、友達をどんどん世界に紹介していく。

 最初は喜んでいた両親だったが、メイが誤って二人ががセックスをしているところを世界に公開してしまい、両親との通信は途絶えた。友達のアニーも、メイへの妬みと心配が混在した複雑な心境となり距離を置きだした。

 会議室。「全人類に弊社SNSへの登録を義務づける。選挙投票もSNS上で義務として行う。税金の徴収も…。」等、ベイリーの野望は膨らむが、メイもそれに乗っかり、得意気に持論を展開する。

 メイは認められ、新プロジェクト「ソウル・リサーチ」のプロジェクトリーダーになった。

 プレゼンテーションでは、全世界を画像でつなげ、捜索したい人をほんの数秒でみつけられる素晴らしいシステムだと喜々として説明。試しに、指名手配の殺人犯のデータを入力すると、20秒ほどでどこかに潜伏していた犯人がみつかり周囲の人間が取り押さえる映像が流れた。拍手喝采の社員たち。

 次にリクエストされたのは「メイの知っている誰か」。鹿殺しで有名になったマーサーを無理やり探し出す作業が行われる。山奥に隠れていたマーサーが10秒ほどで検索され、周囲の人間がスマホを手に追いかける。嫌がって逃げたマーサーは、車ごと橋から転落し死んでしまった。

 ショックを受けたメイは実家に戻る。アニーに連絡すると、アニーも同様に疲れ果て地元で穏やかに暮らしていた。

 メイは出社し、また、経営者たちと檀上に立つ。最初はベイリーのプレゼンに合わせるようにしていたメイだったが、「ベイリーとトム(経営陣のひとり)も透明化すべきだわ」と提案し、二人にシーチェンジを装着させる。そして、ベイリーたちのやり方を良くは思ってはいなかったサークルの創始者の協力で、社内の極秘文書、ベイリーたちのプライベートも含む全メール、二人のすべてを世界に公開すると宣言。情報は瞬く間に発信された。
 ベイリーは苦笑いをしながら「やられた」とつぶやく。

 やったねメイ。(「……。」)

つまりこういう映画(語りポイント)

 ネットを便利に使うには個人情報の提供が必要で、それはマーケティング戦略やらなんやらで、さらなる便利(同時に誰かのお金儲けのため)に使われる…なんてことは、いまどき小学生でも知っている。

  これがSF映画だというならば50年遅い。

 SFであるなら、いっそ、劇中でも語られている「すべての人類にSNS実名登録が義務化され完全管理された社会」から映画が始まってくれたほうがまだ面白そう。

 あるいは「君たちがSNSにあげた情報は、実はすべて、用賀に住む孤独な老人のパソコンに送られていて、その老人は縄文時代の人と通信が出来て…」なんて設定ならば「え?なにそれ?私が今日食べたギョウザの画僧がなんのために使われているの?」と興味が沸くのです。それくらいカッ飛んでくれないと困る。

 要は、描かれていることがもはや当たり前なことすぎて、リアクションに困るのです。

 極めつけは驚愕のラストシーンで「悪い奴の個人情報を全部バラして復讐、やったね!」…なんてオチ、小学校低学年でも思いつく。本当にビックリしました、陳腐すぎて。中途半端にヒドいなら腹が立つところですが、ここまでヒドいとむしろ心地良いです。

 悪者を描くとき「本人は正義と信じている悪」と「悪と認識して行っている悪」は区別して描かないと悪の輪郭が見えないのですが、この映画のトムハンクスはあきらかに悪として描かれているにも関わらず「悪の理由」が見えない。

 IT創始者を悪として描くなら、彼ら特有の「自分の才能にしか興味がない。その発展のためには、他の人間がどうなろうが興味がない。」という人間として嫌な部分を、もっとあからさまに描いてくれないと困る。

 「ソーシャル・ネットワーク」でのザッカーバーグにはそういった描写がありましたよね。自分の利益や都合のために、昔から一緒にやってる仲間から株の増資を使って権利を奪ってしまうシーンなどは「それで誰かの持ち株割合を下げられるのか。」などと、実際の社会の仕組みを混ぜつつ「なるほど」と感心できたのですが、この映画には「なるほど。その手があったか」と思える展開が皆無なのです。知能を描かなきゃいけない映画なのに…。

 そして、結局「監視社会は悪か、必要悪か。」の結論が曖昧で「悪だ」と断罪するにしろ「必要悪だ」と擁護するにしろ(主人公の最後の行動を見る限り、後者っぽいですが)もっとハッキリと示してほしかった。

 この際、映画的センスは捨てて、セリフであからさまに言ってくれたほうがスッキリする。センスに拘ってメタファーで表現するにしろ、それをハッキリとやってほしい。テクニックとしてはさほど難しくはないはずで、なにかしら世の中にある「必要悪なもの」をさりげない会話の中に組み込めばいいだけだから。

 必要悪だけど、それでも「逃れられない社会の仕組みと共存していく覚悟」をシッカリと描いてくれたら、全然違ったと思うので残念です。

  トム・ハンクスはかなり楽してます。Vシネマなら一日で撮り終わる仕事量です。それで数億のギャラをもらえる。だから出演しちゃうんでしょう。そして、トム・ハンクスが出るからコンテンツとして成立しちゃうんでしょう。悪循環。