基本データ・おススメ度
『硝子の塔』
原題:SLIVER
1993年 アメリカ
監督:フィリップ・ノイス
出演:シャロン・ストーン、ウィリアム・ボールドウィン、トム・ベレンジャー
おススメ度★★☆☆☆(2/5)
シャロン・ストーンがめちゃエロいです。良くここまでやるな~レベル。一般的には駄作と云う評価が多い映画で、実際「なんじゃそれ」と感じます。ただ、ある部分で「もしや傑作?」と思わせるものがある(※後述します)。
シャロン・ストーンのエロさを見るだけなら、そんなこと関係なしにおススメ。
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◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
冒頭、高層マンションのベランダから何者かに突き落とされる女性。
30代半ばのキャリア・ウーマン、カーリー(シャロン・ストーン)が高層マンションに引っ越してきた。彼女は7年間の「(本人いわく)不幸な結婚生活」を終わらせ、ひとりでマンハッタンに引っ越してきた。
エレベーターに乗ると、若い男・ジーク(ウィリアム・ボールドウィン)に「ようこそ。近所のことで、わからないことがあれば聞いて。」とナンパっぽく声をかけられる。
スーパーでは老人が近づいてきた。「私は××号室。女性をつけまわす変態ではないからご安心を。実は、君がナオミという女性にそっくりで、ナオミは君が今いる部屋から飛び降り自殺したんだ。」と知らされる。老人は大学教授でカメラ等の設備に詳しい。
夜、シャワーを浴びながらバスタブで自慰行為をしているカーリー…を誰かが盗撮している。どこかの部屋のモニターに映る裸のカーリー。
つまり、カーリーが越してきた部屋は、前の住人が自殺をしていた部屋で、今でも何者かに常時盗撮されている。
果たして誰が盗撮しているのか。カーリーに身の危険が及ぶのか。
そんなことよりシャロン・ストーンがどれくらい脱いでくれるのか。
==以下ネタバレ==
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ネタバレあらすじ
上司のアレックスと食事をするカーリー。偶然同じマンションに住むジャックを紹介される。ジャックはミステリー作家。
死んだナオミの友達、ヴァイダは、一年間ナオミと同居していた仲で「ナオミが自殺をするようには思えない。」と事件性を疑う。
エレベーターで会ったジークから「会いたい」と留守番電話が入っている。ジャックからは自作の本のプレゼントが届く。モテモテのカーリー35歳バツイチ。誰かが望遠鏡を送ってきた。送り主は不明だった。
モニター室。数十のモニターが並ぶ。盗撮されているのはカーリーの部屋だけではなかった。このマンションのすべての部屋とすべての場所が、何者かに盗撮されている。モニターに映っているのは、大学教授の老人がバスタブで血を流して倒れている姿。
カーリーは、図書館で新聞記事を検索し、このマンションで怪死が相次いでいることを知る。老人は三人目の犠牲者だった。
自室での、マンションの住人や勤務先の関係者をを集めたパーティ。望遠鏡から、向いのマンションで誰かがセックスをしている姿が見え、笑いながら喜ぶカーリーたち。
ジャックもカーリーに近づこうとするが、カーリーが選んだのはジーク。スポーツジムで一緒になり「君のお尻は素敵だ」と言いながら気持ち悪い感じでお尻を触られたことをきっかけに、ジークを好きになる。
ジークの部屋でセックスをするカーリー。
ジークは「実は僕はこのマンションのオーナーなんだ。オヤジがホテル王で相続した。住人には面倒だから内緒にしてる。」と告白する。
盗撮室で大量のモニターの前に座っていたのは…ジーク。カーリーはまだそのことを知らない。
オフィスのPCに朝っぱらから届いた「また会いたい。抱きたい。」というジークからの気持ち悪いメールに、嬉しそうなカーリー。
夜、カーリーが帰宅すると、作家のジャックが室内にいた。ドアが開いていて勝手に入ったと言う。「ジークはナオミとも関係があった」「あいつはビルのオーナーだ、いろいろ怪しい。」と忠告するが、カーリーは逆にジャックを侮辱し「今度勝手に部屋に入ったら訴える」と脅す。
カーリーに、ジークからいやらしい下着のプレゼントがあった。それを見て嬉しそうにしているカーリーの様子をモニターを見ながら、彼女に電話をかけるジーク。マンションの玄関に呼び出す。カーリーはそそくさと降りていき、キスをしてレストランへ。
レストラン。「今日、警察が来て配線のことを詳しく聞かれた」「僕が送ったブラジャーどうだい?今、着けてる?」「ここで見せて」と完全に変態ぽく言い、カーリーもそれに応えて大衆の面前でチラッと胸元を見せる。次に「パンティーは?見せて」という。カーリーはスカートをまくりあげて見せる…かと思いきや、はいていたパンティを脱いでジークに渡す。周りの客の何人かがが気づいて怪訝な顔をしている。
脱ぎたてパンティを手にして喜ぶジーク。
エレベーターでキスをしている二人。一旦は別れるが、カーリーは自分の部屋ではなくジークの部屋に向かう。鍵は開いていた。部屋に入ると、ジークが素っ裸で隠れていて、襲うように後ろから挿入する。
ことが終わり、ナオミのことを聞くカーリーに「知らない。ジャックはナオミと寝ていた。ヴァイダに聞いた。」と言うジーク。
モニター室で、部屋に戻ったカーリーが電話している光景を見ているジーク。
カーリーは、ヴァイダの留守電に「話がある、大事な話」と吹き込み、次はジャックに電話。「ヴァイダの話ではあなたがナオミと…」と言うが、ジャックは「でたらめだ。ジークがそう言ったんだろ。ヴァイダに聞いたというのは嘘だ」と否定する。
翌朝、ヴァイダが非常階段で殺された。
何者かと争う音を聞きつけていてカーリーが階段を見に行くと、倒れているヴァイダをのぞき込むようにしていたのは…ジャック。逃げるカーリー。
「誤解だ」と追って来るジャックを撃退する。
警察で取り調べを受けるジャック。ヴァイダのことは良く知らないというが、ヴァイダのアパートにジャックの写真があった。「ジークだ。奴の仕業だ。」と主張するジャック。ヴァイダの部屋で、それ以外にもジャックに関わるモノが発見されていた。
弁護士は「ジャックは起訴される。でもすぐに釈放よ」と言う。
カーリーをモニター室に入れるジーク。。マンション内のすべてが映っている映像を見せられて動揺するカーリー。「最高だぜ。これが本物のゴシップだ。」と興奮するジーク。
ジークはカーリーに「自分で操作してみるかい?」と奨める。操作し、映像を見ていくカーリー。最初はビビっていたが、やがて、笑ったり、もらい泣きしたりしながら、いつのまにか楽しんでいる様子。
ジークいわく「ヴァイダが殺された光景は、電気が消えていたので見ていない。」「教授が殺されていることを発見して通報したのも僕だ。」
録画もしてるんだぜ?と、ジークは、カーリーとセックスしている映像を流す。興奮してきた二人は、映像を見ながらまたエッチを始める。
帰宅したカーリーをジャックが銃を持って待ち伏せしていた。「大声を出すな。俺はなにもしてない。ジークに細工された。あいつはおかしい。母親は昼メロの女優で娘は17歳で死んだ。死因はシャワー室で首の骨を折った。」といい、ジークの母親の写真を見せる。カーリーにそっくりだった。
ジークが怪しいと思い始めたカーリーは、ジャックと組んで部屋にジークを呼び出す。途端、ジャックが銃を突きつける。「全部お前が殺したんだろ」と言うジャックに「俺はナオミを殺してない。お前がナオミと寝ているのを俺は見ている。」と反論。「インポを侮辱されてナオミを殺した。それも見た」といわれ「(どうしてそれを…?)」という顔をするジャック。
どちらを信用していいかわからなくなってきたカーリー。
格闘するジークとジャック。二人の間から銃をとりあげようとするカーリーが、誤ってジャックを撃ってしまう。
警察に事情を聴かれているカーリー。ジークの事には触れず、ジャックが勝手に部屋にいたと供述。哀しむカーリーの肩を抱くジーク。
モニター室。「私は私のプライバシーが欲しい」と今さら言うカーリーに、ジークは「わかった、これでいいか?」と、二人のセックステープを消去する。その時、ジークが秘密のテープを隠す場所を知ったカーリー。
ジークが外出した隙に、隠し場所からテープを持ち出し再生するカーリー。そこには、ジークがヴァイダと寝ている光景が写っていた。しかも、モニターで自分がナオミとヤッているテープを流しながら。
戻ってきたジークに銃を突きつけるカーリー。開き直り「あんな女ども。ただのセックスだ。君が好きだ」とのたまうジーク。
秘密のテープには、男がナオミをベランダから突き落とす光景も映っていた。カーリーが画像をクローズアップすると…突き落とした男は…ジャック。
カーリーはジークに向けていた銃口の向きを変え、モニターに発砲。次々に破壊していく。ジークに「生まれ変わって」と告げると、冷たい表情で去っていく。
つまりこういう映画(語りポイント)
シャロン・ストーンがエロすぎる。
シャロン演じるカーリーは、離婚したばかりの30代半ばのキャリア・ウーマン。絵に書いたような「男好き」「欲求不満」な設定で、バスタブで自慰行為をしたり、年下の若者ジークの肉体に惚れてやりまくります。それは全然オッケーで、歓迎で、そのために作られた映画といっても過言ではないのですが…。
ジークがあきらかに変態で、あきらかに怪しいにも拘わらず、そんなことよりオトコ!とばかりに情事にふけるカーリー。周りの忠告も一切聞く耳を持たない。
アホすぎてイライラします。バブル後期の映画、きっと時代のせいでしょうが、登場人物がみんな軽薄すぎてアホに見えるのです。
途中まで、作家のジャックがいかにも悪者そうに描かれることで、逆に、それはミス・リードで、ヒロインの彼氏であるジークが(盗撮もしてることだし)本当はきっと悪者だろうな、と想像させます。悪者と思われているジャックが実は良い奴で、最後にシャロンを助けるという流れはアリガチですよね。実は悪者だった彼氏にヒロインが騙されていたと。
その通りに進んでいたら、本当にただの駄作だったと思います。ただ、そうはなりません。そこに、駄作のように見えて実は傑作ではないか?と思わせるものがあります。
考えようによっては、観ようによっては「傑作ではないか?」と思える部分があるのです。以下の挙げますが、ただ、それは僕の勝手な好みと解釈でしかなく、意図して作られたものではないかも知れません。
シャロン・ストーンが決して正義感ではない。むしろ性悪。
望遠鏡で他人のセックスを覗いても「そんなことやめとこうよ。」とは言わず嬉しそうに覗いてます。ジークの変態盗撮趣味を知っても、驚きこそすれ逃げるわけでもなく、自分で画面を操作して遊びます。ジャックを殺してしまった時も、ジークの怪しさには触れずにジャックにとって不利な証言だけをして「死んだ人間より生きてるジークに擦り寄っとこ」的なしたたかさを見せます。そもそも、正義よりも性欲を優先する。
結局、絶対的な善がいない。むしろ全員が性悪だった。そこが良いのです。
濡れ衣かと思ったらナオミを殺したのは本当にジャックだったし、だからといって、今度はジークが良い奴なのかと思いきやそうではなく、ジークはジークで女たちと片っ端から寝ているし、やはり悪者の変態。ヒロインに絡む二人の男、どっちが悪者?と考えながら観ている観客に「両方、悪いんだよ~ん」と舌を出すようなオチ。嫌いではないです。
すべての人間の中に「善」と「悪」は混在しているもの。
勧善懲悪モノの主人公のように「すべてにおいて常識的な正しい選択をする」ほうが人間として不自然です。主要人物たち全員が、なにかしら悪な部分を持っている。同時に善の部分もそれぞれにある。そこがむしろリアルで、この映画を「面白くない」「駄作」と簡単に切り捨てたくない理由。
それにしても…もっと他にやりようはあったでしょう。全体的にも、ラストシーンも。ただ、そもそもこの映画が「『氷の微笑』みたいな感じでシャロン・ストーンを脱がせりゃ当たるんじゃない?」程度の発想で作られた映画だけに、過度な期待は無駄。
なんならシャロン・ストーンがエロいだけで充分でございます。