【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『ペット 檻の中の乙女』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『ペット 檻の中の乙女』
原題:PET
2016年 アメリカ・スペイン
監督:カルロス・トレンス
出演:ミニク・モナハン、クセニア・ソロ、ジェネット・マーカーディ
 おススメ度★★☆☆☆(2/5)
 「ただの監禁モノではない」との評判で観ましたが、確かにただの監禁モノではなく、グイッとひとヒネリさせた脚本、かなりエッジの利いた怪作。B級監禁モノに「羊たちの沈黙」のオマージュを加えたような映画。突っ込みどころ満載ではありますが(ゆえに「駄作」の一言でふったぎる人も多そうですが)、狙いは面白く、作り手の意思を感じる意欲作です。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 野良犬の保護施設で働くセス。誰とも会わず自宅と勤務先を往復するだけの孤独な若者。

 ある日、バスの中で、高校のマドンナ的存在だった同級生ホリーと再会するが、ホーリーは存在感の薄いセスのことを覚えていない。

 セスは、SNSでホーリーのことを調べ上げ、働いているカフェに行く。「バスの中で会ったよね。」「その髪型、なかなかいいよ。」とキモい顔で言うもんで、案の定、気持ち悪がられる。ホリーが好きなバンドのライブに誘うが「彼氏がいるから」と断られる。「嘘だ」と言うセスに、ますます嫌悪感が抱くホリー。

 ホリーは同居人のクレアに相談する。クレアは「元カレとヨリを戻せばいいじゃん。」という。二人でお酒を飲んでいる。それも外から覗いているストーカー・セス。

 セスは、彼女に花を贈ったり尾行したり、さらにストーカー全開。

 花をくれたのが元カレかと勘違いしたホリーは、元カレが働いているバーに行くが、そこにもセスが尾けてきていて「花を贈ったのは僕だ」と告白。ホリーには罵倒され、元カレにはボコられる。

 この時、セスは、ホリーのノートを手に入れる。そのノートは「作家を目指している」というホリーがいつも書いていたもの。

 セスは、ノートの内容を読んだことで「何か」を決意し、働いている保護施設の地下室に大きめの檻を作り始める。

 動物用の睡眠薬を人間用に調合し直し、まずは自分に打って試す。注射をするなりすぐに意識を失くすセス。調合成功。

 夜、セスはホリーの家へ忍び込み「大丈夫、カラダに害はない。自分でも実験した。」と言いながら、捕まえたホリーに睡眠薬を注射する。意識を失くしたホリーをダンボール箱に入れて、職場の地下室まで運ぶ。

 搬入の際、施設の管理人である大柄の黒人・ネイトに「それはなんだ?」と怪しまれるが、適当にごまかす。

 目を覚ましたホリーは、下着姿で檻の中に監禁されていた。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 数日間、セスは通常通りに自宅から通勤しながら、檻の中のホリーに少量の水と食糧を与える。監禁の理由を問いただすホリーに「君を救いたい。」自分のためじゃない。君のためだ。」と何度も繰り返す。

 ホリーは「私が死んだらアナタは私を救えなかったことになる。それでもいいの?」と、自分で自分の頭を何度も檻にぶつけセスを挑発するが、ぶつけすぎて血を流して倒れてしまう。

 檻の中に入ってきたネズミをこれでもかと蹴り殺すホリー。檻の外にクレアが現れホリーと会話をしている…が、それはホリーの幻想のようだ。

 ホリーが「ただの被害者」ではないことがわかってくる。

「最初は気味が悪かったよ。君が二人一役で会話をしてるから。」とセスが言う。

 ホリーは、実はサイコパスだった。自宅に同居している(とホリーが思い込んでいる)クレアはすでに死んでいた。それもホリーが殺していた。元カレとクレアが浮気をしたことを知ったホリーが、クレアを乗せた車でわざと事故を起こし、まだ生きていたクレアにトドメを刺した。

 それをきっかけに、ホリーは殺人狂になった。

 

 殺人に快楽を覚えるようになったホリーは、ホームレスにガソリンをかけて火をつけたり、夜の街で寄ってきた男の喉を掻き切ったり、連続殺人鬼と化していて、その全容をストーカーのセスは見ていた。

 セスが繰り返し言っていた「君を救いたい」の意味は、ホリーに殺人をやめさせ更生させることだった。

 セスは、檻の中のホリーに「これは愛だ。わかってほしい。」と説くが、ホリーは「こんなの愛じゃない。ただ拘束しているだけ。」と言う。

 ある日は「昨夜、あなたと一緒にいる夢を見た。とても幸せだった。まるで現実が夢で、そっちが現実かと思った。」と「あなたが好き」モードで迫るホリー。しかし、セスはそれがホリーの作戦だとはわかっていて「狙いはわかる。演技をしても無駄だ。」と言うが、元々、孤独でモテない君だったセスは、徐々にホリーの術中にはまっていく。

 セスはそれまでマジメに仕事をする男だったが、ホリーの相手で忙しくなったためにルーティーンワークがおそろかになってきた。会社から指導を受けたセスは、精神的に追い詰められてくる。

 管理人のネイトが地下室をみつけ、檻の中のホリーを発見する。驚いて檻を開けようとするが、そこにセスが来る。そこでホリーはなぜかセスをけしかけ、ネイトを殺害させる。「これが愛よ。」と意味不明なことを言う。

 「指紋は削ること」「歯は全部バラバラに抜いて別の場所に捨てて」ネイトの遺体の処理方法を事細かに指示するホリー。セスはのこぎりで遺体をバラバラにして、焼却炉に入れたり、犬の餌にしたり、歯は川に捨てにいった。血まみれの地下室で、檻の中から手を伸ばし血の海をを触りながら恍惚の表情を浮かべるホリー。

 ホリーの指導通り、警察に「同僚のネイトがでかけたきり帰って来ない」と嘘の電話を入れるセス。

 ホリーに「他者の生死を決める権限を持ちたかったんでしょ?」と言われたセス。もはや、檻の中のホリーに完全に操られているセス。

 セスの手を檻の中に引き入れ、自分の頬に当てる。次に股間に持って行くっが、それはセスが慌てて手を引く。「あなたが欲しい。私を欲しくないの?」と挑発し「私を好きな証拠に、自分の指を切り落として」と頼む。

 最初は拒否していたセスだったが、ホリーの言葉にわけわからなくなTったセスはついに自分で指を切断する。ホリーはすかさずセスからガラス片を奪うと、自分の喉にあてがいながら「檻を開けて。あなたが大切にしているもの(自分=ホリーのこと)がいなくなっちゃうわよ。」と脅す。

 ついに檻の鍵が解かれた。ゆっくりと檻から出てきたホリーは、ガラス片を喉元にあてがったままセスに近づくと「愛してる」と言いながらキスをする。そして「愛している証拠は…これ」と言うと、ガラス片でセスの喉を掻き切る。倒れるセス。

 後日。

 普通の生活に戻っているホリー。元カレと寄りを戻して一緒に暮らしている。元カレの携帯を見て浮気相手がいることを知ったホリーは、一瞬、ナイフに目をやるが、元カレを殺すでもなく、何事もなかったようにふるまう。

 ある貸倉庫。ホリーが檻のカバーを外すと、中に入っていたのは廃人となったセスだった。指を数本失くし目も白濁、檻の中で動物のように唸るだけのセスにホリーが言う。
 
 「元カレにまたやられたわ。浮気されたの。でも別にかまわない。私にはアナタがいるから。」

つまりこういう映画(語りポイント)

 檻の中に閉じ込められた側が、管理・支配する側の人間をマインド・コントロールし、逆に支配していくという構図は「羊たちの沈黙」ですね。

 最初は、ストーカー男の気持ち悪さを強調しておいて、実は、監禁された女のほうがサイコパスだったと。男は実は純粋なマジメ男で、殺人依存症の女性を救うため(治療するため)に檻の中に閉じ込めた…が、最も重要なネタバレ部分ですが、それは割りと早めにわかります。

 個人的にはもうちょっと引っ張っても良かったのではないかと思います。セスの「君を救いたい。君のためなんだ。」という言葉が、最初は単なる変態男の狂言に聞こえるところがミス・リードになっていて効果が高いだけに、あといくつか、ミスリードを構成してから「ん、なんかおかしい」に繋いで欲しかったところ。ホリーと友人のクレアが二人で会話しているシーンに、実はホリーひとりしかいなかったというネタをバラすのも、もっと後ろのほうで良い。

 要は、脚本上、せっかく巧くヒネッっている箇所を早めにバラしてしまうため、その後の展開がほぼ読めてしまうのです。

 とはいえ、構成や編集は、どんな映画であれ、じっくり時間をかけて何度も手を加えたうえでの着地点なのでしょうから、出来たものにケチをつけるのは誰でもできる。この意欲的な脚本は好きです。。

 テーマ的には「愛とはなにか」ということになる。

 ホリーを監禁して更生させることを「これが愛だ」と主張するセスに対して、ホリーは檻の中から「こんなの愛じゃない。ただの拘束よ。」と言う。

 このセリフのやりとりはちょっと面白い。

 夫婦でも恋人関係でも、相手を束縛しすぎるなんて普通によくあること。かといって、自由を認めすぎてチャッカリ浮気されたりもする。「どちらが良いか。」「愛の在り方」なんてディベートをしているよう。そこに「答えはない」がきっと正解なのでしょう。

 結果的に、ホリーは殺人依存症からは脱出できた。ある意味、セスの願いは叶っている。しかし、その代償として、ホリーは「セスを監禁して飼う」ことで愛を感じる変態になってしまう。

 依存を解消するにも、代替の依存が必要。

 それは現実社会の僕らに普通に当てはまる。結局、人間は死ぬまでなにかに依存して生きるしか術はない。それはきっと確かなことで…。そのあたりを描きたかったと見るなら、この映画は決して駄作ではなく、評価に値する作品だと思います。

 残念なのは、エロが皆無なこと。

 マジメな話、下着で何日も監禁されていて入浴がわりにカラダを拭いたりもしている。乳首くらい自然に見えるはずで「その場にいれば自然に目が行くはずのもの」を写さないというのは映画としてどうかと。

 決して乳首が見たくて言っているのではない。そのあたりを普通に考えて描くだけで、リアリティが相当違って来るはず。全般的にリアリティ無視な映画なので、そこも無視されたのしょうけども…。でも見たかった。