基本データ・おススメ度
『マウス・ハント』
原題:Mousehunt
1997年 アメリカ
監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:ネイサン・レイン、リー・エヴァンス、クリストファー・ウォーケン、ヴィッキー・ルイス
おススメ度★★★★☆(4/5)
ほとんど60年代や70年代のアメリカのアニメ「ロードランナー」や「トムとジェリー」の実写版。スピーディなカメラワークとスラップスティックな展開が心地よい。古い屋敷に住む一匹のネズミを屋敷を改修しようとする兄弟が駆除しようとすることで、逆にボコボコにされるという、徹底的なナンセンスコメディ。力技で笑かしてきます。面白い。
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◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
アーニーとラーズはあまり仲の良くない兄弟。製糸工場を営む父が死去し遺産相続の話に管財士の元に集まった。父の遺産は経営難の製糸工場とガラクタで、レストラン経営で成功している兄・アーニーは興味がない素振り。街のはずれに、昔に所有したたけで住んでいない屋敷があることがわかったが、詳細は不明。
父の最も重要な遺言は「工場は売るな。お前たちで再生してくれ」だったが、兄はさっさと工場を売りたがる。弟は、父の遺言を尊重して売らずにやっていきたいと考えた。
経営難の工場に固執する弟・ラーズに、妻のエイプリルは愛想を尽かし、ラーズは家を追い出されてしまった。
かたや兄も、レストランで市長に提供した料理に虫が混入していたことで世間から叩かれ、レストランは閉鎖に追い込まれた。
途方に暮れた二人は、なにげなしに件の謎の屋敷に行ってみると、なんとその屋敷は、超有名な建築士によるもので、売却すれば10億円以上になる代物だった。
オークションで値を上げるために、屋敷の改修工事をはじめた二人だったが、その屋敷には一匹のネズミが住んでいた。
ネズミを駆除しようとする二人と、頭の良いネズミの戦いが始まった。
ネズミは頭が良く、単純な仕掛けには一切ひっかからない。逆に、兄弟がボコボコになれるわ、屋敷もどんどんボロボロになっていく。
==以下ネタバレ==
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ネタバレあらすじ
屋敷を担保に父が借金をしていたことがわかり、差し押さえ通知が来る。売却すれば大金が入るだけになんとかそれまでつなぎ資金を作ろうと奔走する二人だが、賃金未払いで工場の従業員たちが騒ぎ出し、彼らから逃げ回りながらお金の工面に走る。
屋敷売却の噂を聞きつけた弟の妻・エイプリルが目ざとく寄ってきて、当面の借金をチャラにしたことで差し押さえは逃れる二人。
保健所からなるべく狂暴な猫をもらってきて投入するも、返り討ちにあう。
害獣駆除のスペシャリスト・シーザー(クリストファー・ウォーケン)が呼ばれた。シーザーは最新の技術を駆使してネズミを追いつめようとするが、最終的に完全にネズミにやられ病院送りとなる。「あのネズミは悪魔だ」とおびえながら救急車で運ばれる。
ぶちきれた兄は屋敷の中でライフルを撃ちまくってネズミを追いかけるが、ただ、屋敷の床に大きな穴が開いただけだった。
兄弟げんかをはじめる二人。弟が兄に投げたオレンジがネズミに命中し、ネズミはダウンする。「最初から果物を投げればよかったんだ。」とどめを刺そうとする二人だったが、瀕死のネズミをみて良心の呵責に苛まれた二人は、トドメをさせない。
結局、ネズミを箱に入れ郵便でキューバまで送ることにする。これでもういなくなったと安心する二人。
ボロボロになった屋敷の補修を済ませ、売却オークションの日を迎える。パーティは順調に進みオークションでも数十億円の値がついていく。人生勝ったと思った二人だったが、ネズミが、郵便料金不足で送り返されてきていた。
ネズミをみて我を失った二人は、オークションそっちのけで必死に追いかける。地下に逃げたネズミに向けて水道管を差し込み、溺死させようと考えるが、水道は止まらなくなり、ついに屋敷は崩壊してしまう。呆れて帰っていく資産家たち。数十億円は幻になった。
呆然と工場に戻った二人が眠りこけていると、工場が稼働している音がする。不思議に思って見に行くと、チーズを素材にした糸が編まれていた。彼らの車にくっついて、あのネズミがついてきていて、いつのまにか機械を稼働させていたのだ。
製糸工場は「糸チーズ」の生産工場に変わった。チーズ工場は繁盛しはじめる。兄の肩の上で例のネズミが「製品管理係(味見係)」をしていた。
つまりこういう映画(語りポイント)
どこまでCGかはわかりませんが、ギリギリまで実写に拘って(あるいは実写っぽいCGで)いるところに好感が持てるし、それによって臨場感が出ている。これが全編CGアニメなら面白くもなんともないでしょう。
古いアメリカのアニメをそのまま再現したようなスピーディなカメラワーク。カメラワークによる状況説明が絶品にうまい。数秒で次に起こることを完璧に伝える、一瞬で状況を説明しきってしまう撮影のうまさ。映画を作る側の人は参考にすべき。
例えば「ネズミが逃げ込んだ床の穴にライフルの銃口を差し込む」→「床下に見えるガスボンベ」→「銃撃」→「床ごとふっとぶ」なんてくだりですね。その間、わずか数秒。
小さいネズミを追って逆に人間がボコボコにされる、完全に「ロードランナー」や「トムとジェリー」と同じ構図。伝統芸ですね。
途中で出てくる駆除員がクリストファー・ウォーケンであるというキャスティングだけで笑えるのだけど、案の定、ウォーケンはシリアス芝居をキープしながら、シリアスにやるから笑えるという線を狙っている。
兄弟二人のコメディ芝居も絶品です。
ただひたすらスラップスティック気味のドタバタを楽しむ映画ですが、テーマとしては、長く疎遠になっていた兄弟が、父の死をきっかけに再び絆を深めていくという、家族、兄弟の姿を描いている。妻が、夫の条件が悪くなったらあっさり去って行ったり、お金が入りそうな噂をかぎつけたら戻ってきたり、打算だけで一緒にいる妻を皮肉たっぷりに描くことで、兄弟二人の「血のつながり」が強調されている。
ここまでバカバカしさをやりきってくれたら、もはや何も批判するところがありません。単純に面白い。
それにしても、ネズミってあんなにかわいい風貌なのに「汚いから」という理由で人間に好かれないのですね。ちょっとかわいそう。そして、ネズミ映画の金字塔「ウイラード」「ベン」を見直したくなりました。近いうちにレビュー書いてるかも知れません。