【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『7デイズ』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『7デイズ』
原題:Inhale 2010年

監督:バルダサール・コルマウクル
出演:ダーモット・マローニー、ダイアン・クルーガー、サム・シェパード、バンサン・ベレーズ、ロザンナ・アークエット
 おススメ度 ★★★★★(5/5)
 センスのない邦題や日本版ポスターに騙されて「軽薄なアクション物?」とスルーしてしまいそうになりますが、中身は社会派の良作!重いの苦手な人にはキツイ部分もありますが、結末の衝撃度はピカイチです。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

法と正義を重んじる地方検事ポールには、重い肺病を患ったひとり娘がいた。肺の移植だけが娘を救う唯一の手段だが、娘の余命は残りわずか。そんな折、メキシコでの違法臓器移植の噂を聞きつけたポールは、単身メキシコへと渡り臓器売買のルートを探しはじめる。(映画.com)

 「10万ドルで足りる?」…単身メキシコ行きの準備をしているポール(ダーモット・マローニー)に妻が言った。
 彼ら夫婦には、肺の移植手術を必要とする幼い娘・クロエがいた。夜中、夫婦の営みの最中にも呼吸困難が始まり救急搬送されることもある娘の容態と、いくら待っても順番が回って来ないドナーの順番待ちに、焦りや絶望を抱いていた。
 アメリカではドナーを待っている10人に対し1人しか提供者が現れない。
 検事としてポールは冷徹だった。息子を幼児虐待のうえ殺された男が報復で相手を傷つけた事件で、ポールは男を起訴する。「幼児虐待の被害者を起訴するのか」と叩かれるが「犯罪は犯罪」と一蹴する。「俺は誰も守らない。守るのは法だけだ。」と言い放っていた。
 クロエの担当女医から「ここからは雑談だけど…」と前置きされ、政治家・ハリソンがメキシコで違法な移植手術を受けていたことを聞かされる。「おカネさえあればそういう手もある。」パーティでハリソンに近づいたポールは、半ば脅しながら医師の名前を聞き出す。「執刀した医者の名前はノヴァロ。それ以外は本当に何も知らない。」
 ポールは医者の名前だけを頼りに、大金をカバンに仕込ませ、日常的に犯罪が横行する危険なメキシコの田舎町に向かう。そこは犯罪の巣窟だった。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 「とにかくノヴァロに会いたい」とあっちこっちで聞き込みを始めるポールは、街の連中から「怪しい外国人が嗅ぎまわっている」と見られ、地域を牛耳る組織の連中に狙われだす。いきなり襲われたり、監禁されたり。
 街では、小学生くらいの子供たちにも車のキーを盗まれ銃をつきつけられる。ポールは、悪童チームのボスであるミゲル少年に「組織の人間に会わせろ。カネは払う。」と取引をする。
 ミゲルの案内で、怪しいバーに出入りするポール。ボコボコにされたポールを、ミゲルが病院に連れて行く。ミゲルは少年だが地域でうまく立ち回る「顔」でもあった。
 連れていかれた病院では「国境を越えた医師団」から派遣されてきたマルティネス医師たちが、ボランティアで、子供に食事を与えたり治療にあたっていた。病院には常に怪我をした庶民がたくさん運ばれてくる。「臓器移植がしたい。医師を探している。」と言うポールにマルティネスは「臓器移植の順番待ちはアメリカと同じ。そんな手段はない。」と突き放す。
 ポールはミゲルと仲良くなり電話番号を聞く。「なんでも言ってくれ」というミゲルだったが、但し、常に「いくら払う?」とカネは要求される。

 組織の幹部格・アギラにたどり着くポール。「20万ドル払うなら。」と倍の価格を要求され「カネはアルトゥーロという男に渡せ。信用しないなら取引はしない。」と言われるが、アメリカの妻からの電話で、娘がいよいよ危険で「持って一週間」だと聞かされていたポールに時間はなく。「払う」と言い、アロトゥーロがいるという麻薬の取引現場に向かう。現場で銃撃戦にまきこまれ、案内役として仲良くなったオカマのカルロスが撃たれる。
 カルロスを病院に運んできたポールは、ひょんなことから、アギラとマルティネスがつながっている事を知る。
 マルティネスの自宅を探り出し押しかけたポールは「アギラがノヴァロという名前を名乗って客を取り、お前が執刀していたんだな。」と詰め寄る。
 開き直ったマルティネスは「ここでは毎日人が死ぬ。アメリカの3倍のペースで死人が出る。助けを求める人間のために死人を利用して何が悪い。」「死ぬ奴らは大抵、ドナーカードに記入をしていない。まともにやったら彼らの臓器はムダになるだけ。」「手術費用は、病院の設備に使っている。世の中のためになっている」と強気の姿勢を崩さない。「金は払う。明日、頼む。」…クロエの手術は明朝となった。
 ポールからの連絡を受けてメキシコにクロエを連れてくる妻。「もう少しの我慢、もう少しで助かる。」

 以下、衝撃の結末…

 翌朝、ポールは街に出て、ミゲルたち悪童チームにところに歩み寄り、いろいろ協力してくれた礼を言う。そこでもカネを求められるポールだったが、チームで一番小さい子に小遣いを上げ、子供たちと握手を交わす。
 と、次の瞬間、離れてタイミングを計ってたバイクが、ポールたちに突っ込んできて小さい子供をひき逃げする。血まみれで倒れる小さい子。パニックになるポールとミゲルたち。誰も呼んでいないはずの救急車が迅速に到着し、小さい子を搬送していく。
 「どこの病院に行くんだ!」と聞くポールに何も答えす発車する救急車。
 すべてを悟ったポールは、クルマで救急車を追いかけながら、病院で待つ妻に電話をする。「殺人事件だ。これは殺人事件なんだ!」
 しかし、妻は事態を飲みこんだうえで「後には引けない。私は、クロエを棺に入れて帰る気はないからね。」と言う。

 アギラの元へ行き声を荒げるポール。アギラを脅し、救急車の行き先、秘密の執刀場所へ案内させるポール。そこではマルティネスがひき逃げされた小さい子から臓器を取り出そうとしていた。ポールの顔をみるなり毅然と「たった一日でどうしろと言うんだ。うまい具合に子供が死ぬわけないだろ。」「こんな子は、遅かれ早かれ死ぬ。生きていても意味はない。」と言う。
 呆然とするポールに「まだ正しい道を選ぶ道はある。さらにカネを払うなら、この子を助けることもできるが、どうする?」

 クロエの葬式が行われていた。泣き腫らした目でポールを睨み付ける妻。妻に憎しみの表情を向けられたポールは、疲れ切った表情で、ただ茫然としていた。

 その頃、メキシコの地で、元気に回復した小さい子が仲間と遊ぶ姿…で幕。

つまりこんな映画(語りポイント)

 「俺の仕事は人を守ることじゃない。法を守ることだ」と言い放っていた検事・ポール。そんな彼に関わって「法に泣かされた」人たちはきっとたくさんいたであろう。「法に殺された」人もいるかも知れない。

 そんな彼が、娘の命の危機に直面。「ドナーを待っていても絶対に無理」な状況と法律に絶望し、犯罪の巣窟メキシコの田舎町に向かう選択をした時点では「法律を破る行為だとはわかっている。それでも、誰がなんと言おうと自分の娘の命を助ける。」という正義の選択。自分と、妻と、娘に対する「正義」だった。
 但し、この場合の「正義」は、決して「悪でないこと」でも「すべての人のためになること」でもない。ただひたすら「自分にとっての正しい選択」という意味の「正義」。

 いろんな正義がある。

 「驕れるものの愚かさ」を身を持って感じる主人公。

 メキシコでどんなひどい目にあいながらも「娘のために」奔走する姿は、観ている僕らからしても「正しい姿」に見える。頑張れと応援する。

 しかし「臓器移植ビジネスのからくり」を目のあたりにした時、ポールと共に、観客の僕らでさえ「正義と信じていたこと」が「少し視点を変えるだけで否定される」事実に、ただただ愕然とするしかない。

 「真実って見えない(見えにくい)モノ」であること。
 「正義の裏にあるなにか」の存在。

 ラスト…損得も、家族愛さえも、いろんなものを通り越して「人として」の選択をしたポールの想いに心が震える。
 対して、そんな彼を憎々しい目で睨む妻の気持ちも充分に理解できるだけに…「なにが正義か」の答えは本当に難しい。

 それにしても、徹底的に描かれる「貧困」が凄まじい。
そこにいる誰もが、小さい子供たちまでが、全員「ただひたすらカネのために」動いている姿。「地獄の沙汰もカネ次第。」な状況は、別に、それが当たり前、僕らの国も、日本もアメリカもみんなそうだけどなにか?と言われたらそれまでだけど、情が移って仲間になった子供でさえ、「それとこれとは別」と、あくまで報酬がないと動かないとか、その容赦のなさがいっそ心地良い。


 ちなみに「邦題」と「日本用ポスター」が最悪です。まったく内容に合ってない。 映画が良いだけにもったいない。