基本データ・おススメ度
『ドクター・モローの島』
原題:he Island of Dr. Moreau
1977年 アメリカ
監督:ドン・テイラー
出演: バート・ランカスター、マイケル・ヨーク、バーバラ・カレラ
おススメ度★★★★☆(4/5)
当時としては相当にショッキングな内容で「遺伝子操作で動物を人間にする実験をしている学者」と、その島に迷い込んだ男のお話。クライマックスでの猛獣VS獣人の格闘シーンが物凄く、そこだけでも一見の価値はあります。
僕らと同世代の人にとっては「小学生的ノスタルジー全開」な70年代の傑作。
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◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
アンドリューは、船が嵐にあいボートで漂流後、太平洋上のある小さな島に流れ着く。島には、ドクター・モローという学者が11年前から住んでおり、使用人のモンゴメリー、若い女・マリアらと、屋敷の中で生活していた。他に使用人が数人いたが、なぜかまともに言葉をしゃべらない。
ドクター・モローは有識ある学者だったが、その独創的な研究内容から問題児とされ、いつしかこの島で独自の研究を続けているという。若く綺麗なマリアに目を奪われるアンドリュー。モローによると「彼女は私がパナマから連れてきた。家族から卵11個で買ってきたんだ。」と言う。
モローから「けっして夜には外出するな。」と告げられるが、森の中からは動物の遠吠えが聞こえる。「一体、どんな動物がいるんだ?と使用人のモンゴメリーに聞いても「気にするな。」と相手にされない。
やがてアンドリューは、森の中で、屋敷の召使の男が森の中でまるで動物のように水を飲んでいるのを見かける。
アンドリューはモローの遺伝子研究についての熱い想いを聞く。人、ライオン、ネズミ…それぞれの胎児の標本を見ながら「胎児のときは変わらないものが、どうして形が変わっていく。すべて遺伝子だ。面白いと思わないか?」「遺伝子交換ができたら、私たちはまったく新しい世界を作り出せるんだ。」
モローの考えに一抹の不安を覚えながら、アンドリューはマリアとお互いに惹かれあう。
==以下ネタバレ==
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ネタバレあらすじ
やはりモローは悪魔の研究をしていた。ジャングルの動物に人間の遺伝子を注入し、人間として育てていく研究。森の中で洞窟をみつけたアンドリューは、洞窟の中で大勢の獣人たちに会う。彼らは全員、モローによって動物から人間にされかけていた。
獣人たちには「掟」が敷かれており「二本足で歩け」「人間は血を流さない。血を流すな」など、人間らしく生きていくための掟だった。獣人たちは掟と、神であるドクター・モローを恐れていた。
研究室で、元・クマの男を見せられる。モローは元クマ男をクマの元へ連れて行くが、元クマはクマと仲良くしていまいムチで殴られる。
洞窟でアンドリューを襲った獣人が「掟を破った」とされ罰を与えられる。森の中に逃げ込んだ獣人を他の獣人が追うが、アンドリューは獣人に「殺してくれ。頼む。殺してくれ。」と懇願され、銃で撃つ。「血を流した。掟を破った」と責められるアンドリュー。
獣人たちの間に、モローやアンドリュー、人間たちへの不信感が増幅していく。
研究を非難し続けるアンドリュー。マリアと共に島を逃げ出す計画をたてるがモローにバレてしまい、研究室で実験台に乗せられる。
「長年、動物たちで研究を続けてきたが、どうしてもなにかが足りない。君には、重要な実験台になってもらう。」と、動物の遺伝子を注射されるアンドリュー。今までとは逆のパターン、人間を動物にしようという実験だった。
翌朝には、すでに髪の毛がボサボサになり、獣化がはじまっていた。鏡をみて絶叫するアンドリュー。牢屋に入れられ、モローから「お前は動物だ。ネズミを食え。血をみて騒げ。」などと言葉責めにあう。そのたびに叫び「俺は人間だ。元に戻せ!」と暴れるアンドリュー。
その現場を発見した使用人のモンゴメリーは「何をする気だ?次は俺か?冗談じゃない。」とモローにたてつき、銃殺される。
モローがモンゴメリーを殺したところを、屋敷の外から獣人たちが目撃していた。「血を流した。モローが掟を破った」と騒ぎだす獣人たち。
威嚇しに外に出たモローだったが、獣人たちに襲われて瀕死となる。やがて絶命するモロー。
マリアによって牢獄から救出されたアンドリューは、獣人たちを抑えようとするが無理だった。獣人たちは屋敷になだれ込み、火をつけ、檻の中の猛獣たちを解放する。しかし、猛獣たちは獣人に襲い掛かり、獣人たちはどんどん殺されてしまう。屋敷は燃えていく。
ボートで島を脱出するアンドリューとマリア。
朝、アンドリューが目を覚ますと動物の遺伝子が浄化されたのか、人間に戻っている。そこに大きな船が通りかかり、アンドリューは助けを求めて手をふる。
しかし、その後ろで、マリアは遺伝子注射の効果が切れて?人間から、獣の姿に戻りかけていた。
つまりこういう映画(語りポイント)
70年代らしく、特殊メイクも今みるとちゃちいし設定の突っ込みどころも満載なのです。注射一本でどんどん人間になっていったり、動物になっていったり、人間の遺伝子を注射したらいきなり英語をしゃべれちゃう、とか。
が、それもこれも「この時代によくこんな物語を思いついたな。」ということですべて許して欲しい。
この映画のポイントは、神をも恐れない遺伝子操作の云々もさることながら、モロー博士がそこに「掟」を作り、最後は自分が作った掟によって命を失くすくだり。劇中でもモローが言っているとおり、彼は決して「掟(法律)を作って偉そうにしたかった」わけではなく「研究がしたかった」だけなのです。ただ、それを通すには掟が必要となる。彼らを教育するには、乱暴な扱いも、体罰も、望まずとも必要になってくる。
そこから本末転倒な状況が生まれていくあたりは、平和を望みながら、平和のために核開発が必要だと信じている国があり、平和という大義名分のもとにロケットを発射する。いつの時代も同じ、本末転倒な世界への皮肉でありメタファー。
モロー博士の遺伝子操作は、現代でいうなら、人間という種族が、自分たちの都合のためだけに他の動物に近親交配を強いたり、珍しい毛並みの猫を作り出すために無理な繁殖をさせたり、利益のために現代の人間がしていることとたいして変わらない。そこに人間が絡んでいないだけの違い。人間の「傲慢」への警鐘。
掟を破って追われる獣人がアンドリューに向かって「殺してくれ。頼む。」と懇願するシーンは「望まない人生(?)を強いられた者の哀しさ」を表わしていて切ない。
それにしても、ラスト15分の「猛獣(本物!)と獣人たちとの格闘シーン」。あれ、どうやって撮ったんだろう?どうやって安全を確保したんだろう?と思う。ライオンやトラとまともに格闘してるんですから。もちろんCGなんてありません。
ちなみに、猛獣と格闘している獣人の中に、日本人のスタントマンさんがいたらしいです。名前まで存じ上げませんが。けっこう大御所で有名な人だったはず。
エンディングが2パターンあるのは有名なお話。
「獣人から人間に戻るアンドリュー、しかし、そのかわりにマリアが獣化していく」というバッドエンドと、何もなくただ救出されるハッピーエンドですね。一体、何を考えてハッピーエンド・ヴァージョンを作ったのか理解に苦しみますが、それも時代なのでしょう。当時はそれほど、バッドエンド・ヴァージョンがショッキングだったということ。
なにせ、すっかり若くてキレイなお姉さんだと信じていたヒロインが「実は元が動物だった。」ってことですから。どんでん返しです。その設定があったからこそ、僕はこの映画が大好きだったのです、小学生の頃のお話ですが。
かえすがえす「この時代によくこんな…」な映画なのです。
そんな当時の状況、小学生だった僕らの驚きを想像しつつ、ラストの猛獣と獣人の格闘シーンにビックリしてください。