基本データ・おススメ度
『バースデイ・ガール』
原題:BIRTHDAY GIRL
2002年 アメリカ
監督:ジェズ・バターワース
脚本:トム・バターワース
出演:ニコール・キッドマン、ベン・チャップリン、ヴァンサン・カッセル、マチュー・カソヴィッツ
おススメ度★☆☆☆☆(1/5)
脚本・演出が破綻している。自信を持って駄作と断言していいと思いますが、なぜか、冒頭20分がかなり面白い!(以降、急激に面白くなくなりますが)。30代前半のニコール・キッドマン(きれい!)、同年代のヴァンサン・カッセルら豪華出演陣の若さの魅力、ちょいちょい笑える小ネタが救い。あとは好み次第でしょうか。
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◆目次
あらすじ(ネタバレなし)
イギリスに住むマジメな銀行員のジョン(ベン・チャップリン)は、ロシア人女性専門の婚活サイト「ロシアより愛をこめて」に登録。花嫁候補のナディア(ニコール・キッドマン)がロシアからやってくる。
空港で出迎え、車で郊外の自宅に向かう車中、彼女が英語をまったく喋れないことが発覚。カタログと違う。おまけに車に酔って窓からゲ●吐くし。自宅に到着しても会話にならない、キャンセルすべくサイトに電話をかけるが何度かけても通じない。
仕方なくナディアに部屋を与えつつ、サイトからの返信を待っていると、夜中にナディアが寝室に入って来て、無言で股間に手を伸ばしてくる。手でしごく。イカされる。
翌朝、モスクワに送り返そうと航空券を渡そうとするジョンを押し倒し、上にまたがるナディア。さらにジョンの留守中に、ジョンの愛蔵ビデオを探索、ジョンがSМマニアであることを知る。
夜、ジョンはナディアに露英辞典をプレゼントする。快楽に押し切られ、つきあう決意をしたのだ。代わりにナディアはSМ図鑑をプレゼントする。その後、ナディアの部屋に行くと、ネクタイを使って自分の腕を縛る練習をしている。性癖を刺激されたジョンは反応して…。
ほとんど言葉を交わしていない二人だが、2人は仲良くなり、デートやセックスを重ねる。
==以下ネタバレ==
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ネタバレあらすじ
露英辞典を見ながら、たどたどしい英語で「今日、私の誕生日」と伝えるナディア。嬉しがるジョン。
夜、買ってきたケーキで部屋で祝っているところへ、いきなり二人のロシア人男性が訪ねてきた。ナディアの知り合いらしく、ロシア語で再会を喜び合うナディアたち。ジョンわけわからず。
ひとりは英語を喋れるユーリ(マチュー・カソヴィッツ)、ナディアの従兄弟らしい。もうひとりはギタリストのアレクセイ(ヴァンサン・カッセル)。ユーリが通訳をし、ジョンとナディアは初めてまともに会話する。ナディアは、子供の頃に父に双眼鏡をもらった話をする。
なぜか同居となった二人を加えた四人での生活は、それなりに楽しそうだったが、ひとりだけロシア語がわからない状態はきつい。疎外感が増大してきたジョンは、二人に「やっぱり出て行って欲しい」と告げる。二人はおとなしく「わかった。」と答える。
しかし、翌朝、ナディアを縛り上げたアレクセイがキッチンで暴れていた。ユーリの通訳で、アレクセイが「金をよこせ」と要求していることがわかる。
アレクセイのギターケースを手に銀行に出社するジョン。管理権のあるジョンは、白昼堂々金庫からカネを奪いそのまま、彼ら三人が待つ車に乗り込んで走り出す。
が、車が走り出した途端、ナディアはさるぐつわを外しアレクセイとキスをしまくっている。その光景を見て騙されたことに気づくジョン。モーテルで、ギターケースの中のカネを調べ喜ぶアレクセイたち(三人はロシア語で会話)。アレクセイがナディアに「ところで何回、あいつとやるハメになった?2回?3回?」と聞く。ジョンはトイレに縛られている。ユーリがジョンに、各国で同じ手口で詐欺をしていた写真をみせる。三人は婚活詐欺の常習犯だった。
アレクセイは恋人であるナディアとイチャイチャ。しかし、手編みのセーターをアレクセイに渡したナディアが妊娠していることを告げると、途端に態度を変えるアレクセイ。
ジョンの持ち逃げは大々的に報道され、ジョンは追われる身になっていた。
自力で縄を解いたジョンはトイレから脱出。部屋に戻るとナディアが縛られている。男二人はナディアを裏切ってカネを持って逃げたらしい。ナディアの縄を解いてやるジョンだが、いきなり平手打ち!ナディアも応戦し、しばし部屋で格闘となる。「唇が切れたじゃない。」と英語で言うナディアに、ジョンは「?」となる。
郊外のファミレス。流暢な英語でオーダーするナディア。「言葉が通じないほうが男を早く落とせるのよ」と言う。ジョンはナディアを許す気はなく、ボロクソに言葉責めをしつつ、警察に連れていこうとしていた。しかし、警察のロビーでナディアが妊娠していることを知ったジョンは、ナディアを警察に突き出すのをやめる。
まだアレクセイに未練がありそうなナディアに「縄で縛られて逃げられて、そんな男をまだ好きなのか?」と聞くジョン。ナディアは「あんただって縛るの好きでしょ。」と言いかえす。
二人は、お互いのことをケチョンケチョンにけなしあいながら逃亡するが、ナディアが言い過ぎたことで、ジョンが落ち込んでしまう。そんな時、ダッシュボードからジョンがナディア宛てに書いた手紙を発見。それはロシア語で「ぼくの夢は君と話をすること」と書いてあった。ちょっと感動するナディア。
空港までたどり着いた。モスクワ行きの飛行機は三時間後の出発。二人は別れるが、ナディアは「これをあなたに」と包みを渡す。それは、父からもらった双眼鏡だった。
空港ロビーで、アレクセイたちに捕まるナディア。遠くからそれをみかけたジョンは、三人が乗った車を追いかけ、滞在先のホテルまで尾行する。
アレクセイとナディアが言い合いをしている部屋に侵入したジョン。最終的にアレクセイをギターケースで殴って気絶させる。縛られながら「俺の取り分だけでも置いていけ」というアレクセイだが、ナディアはアレクセイのパスポートと航空券まで奪ってジョンと共に逃げていく。
空港で再びの別れ…のはずだったが、別れられない二人。ナディアは「一緒にロシアに行こう」と、アレクセイのパスポートと旅券をジョンに渡す。
税関。「なにを聞かれても『ダー』って言っときゃいいから」と教えられ、ダーダー言いながら税関を通過するジョン。
ナディアは「ソフィアよ。」と本名を名乗る。「僕はジョン」「はじめまして、よろしくジョン。」
モスクワ行きの搭乗口に向かう二人。
つまりこういう映画(語りポイント)
普段、冒頭10分を観て「これはダメだ」と捨てる映画は数えきれないほどあります。冒頭のツカミが面白いかどうかで、ある程度の予測がつくからです。監督のセンスもわかるし。
ただ、その逆は珍しい。冒頭が面白いのにその後が尻すぼみになる映画もそりゃありますが、この映画ほど、面白さにギャップがあるのも珍しいかも知れません。
それほど、冒頭20分が(僕には)相当に面白かった。
そもそも婚活すると決めて、ロシア人専門サイトの「ロシアより愛をこめて」にアクセスするとこからしてツボで(サイトのネーミングも含めて)、その後、いきなり車に酔ってゲ●を吐くニコール・キッドマンや、まったく会話のない無言のやりとり、SМ絡みのエピソード。それらの空気感がおかしくて、ケラケラ笑って観ていました。
二人の生活にロシア人二人が乱入してきて、その後に四人の生活になって…あたりも良かったと思いますし、三人の素性がわかるところも悪くない。ありがちな設定ではあるけど、ツカミとしては面白いです。
ただ、その後が…不思議なほどに面白くない。
原因はきっと、そこまでコメディ⇒ブラック・コメディ…とうまく推移してきたところに、サスペンスとハートウォーミングを中途半端に入れ込んじゃったこと。いや、脚本だけじゃなく演出までどっちつかずになってるから、後半、シリアスにやってる俳優がバカに見えちゃうのです。俳優に罪はない。ああなったらシリアスに演じるしかないから。ジャンル崩壊。
が、俳優陣の魅力でそれなりに楽しめる。
当時33歳、外見の瑞々しさという意味ではピークと言える頃のニコール・キッドマンのお尻…いや、若い美しさを確認できる。まだ可愛いという印象。同じくまだ30代前半だったヴァンサン・カッセル、マチュー・カソヴィッツの男前ぶりも、見ているだけでそれなりに楽しめます。それにしても豪華なキャスティングですね。
脚本の破綻部分を列挙するとキリがないですが、例えば「ナディアが英語を話せないフリをする意味がない」や「勤続10年のマジメな銀行員が、カネを出せと言われて『即、犯罪』という発想になるとは思えない。普通は貯金を渡すだろ。」とか「過去の犯罪の証拠写真を、犯罪者本人がわざわざ持ち歩いている(それで税関を通っている)」とか「妊娠が発覚しただけで長年のパートナーを裏切って置き去りにするって、リスクの方が高いでしょ。」とか。
で、それならいっそ不条理劇っぽく演出してカバーするところでしょうが、ただマジメな演出をしちゃってるから、もうどうしようもない。
ちなみに僕が思う「駄作」は、単に面白くない、退屈という意味ではないです。。訴えたいテーマが見えてこない、ただストーリーを紹介しているだけ、作り手の意志や意欲が感じられない、映画言語(セリフではなく小道具や映像で表現する部分)がない、等。簡単にいうと映画らしくないもの。個人的好みのお話ですが。
ところで、本当のロシア人がひとりもいないロシア人三人組。あれは、本物のロシアの人から見たらどう見えるのでしょう?顔の特徴やロシア語の発音も。もしかして、中国人が思い切り中国なまりの日本語で日本人役をやっているようなものなのでしょうか?ちょっと気になります。
▼ニコール・キッドマンは、プロデューサーも兼ねだしてから、出演作の当たりはずれが激しくなっていった感があります。いろいろ拘りが強い人ゆえに。これもかなり微妙な映画「虹蛇と眠る女」。