【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『ラストタンゴ・イン・パリ』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『ラストタンゴ・イン・パリ』
原題:Last Tango in Paris
1972年 イタリア
監督:ベルナルド・ベルトリッチ
出演:マーロン・ブランド、マリア・シュナイダー

 おススメ度 ★★★★★(5/5)

 映画史上に残る問題作。必見レベル。「自分が何者かわからない若者」と「妻が何者だったのかわからなくなった中年男」が、何者でもないまま、愛し合う物語。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 ある日、パリのアパートの空室で出会った中年の男ポールと若い女ジャンヌ。名前も告げず、過去を知らないまま密室でのカラダだけの関係になる。生きる希望を失った中年ポールと、若さゆえに不安なジャンヌ。傷を癒しあいながらも、やがて訪れる終焉。

 公開当時は4日で公開禁止になる劇場が多発。主演のふたりはワイセツ罪で有罪となるわ、マリア・シュナイダーはこの映画への出演がその後の人生でトラウマとして残り続けたというわ。なにかとお騒がせな問題作。

 アパートの空室。45歳のポール(マーロン・ブランド)は、妻に自殺されて絶望の真っ只中、ふらりと借主募集中の空室に入り込んでいたところ、後から部屋の内見に来た20歳の・ジャンヌ(マリア・シュナイダー)と鉢合わせる。二人きりの室内でポールとジャンヌはヤっちゃう以後、その部屋は二人の密会場所となり、たびたびカラダを求めあうようになる。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 ポールは「名前を言うな」「素性を明かすな」と言い、ジャンヌが自分のことを話そうとすると「言うな」と怒る。 

 ジャンヌにはテレビ・ディレクターの彼氏・トムがいる。トムはジャンヌを主役にドキュメント映画を撮影中。
 ポールは、妻に愛人がいたことを知る。愛人は自身が経営する安ホテルに定住している住人で顔見知りだった。彼の部屋に行くと、妻が自分に買ってくれたガウンとまったく同じガウンを着ている。ジャンヌは、トムに対して「撮影はもう嫌。こんなの嘘だ。」と言い出します。

  相変わらず密会を続けているポールとジャンヌでしたが、ある日、ポールはジャンヌのお尻にバターを塗って変な事をします。ジャンヌ泣く。

 ジャンヌはトムに求婚されてウエディングドレスの試着をする。それでもジャンヌはまだポールに会いにいくけど、ある日ベッドの上にねずみの死骸があってキレます。ポールはさらに自分のお尻に指を突っ込んでくれと変態なことをいいます。

 ポールは、妻の遺体の前に座り、妻に話しかけます。やがて罵倒しはじめます。「このアバズレが!地獄へ落ちろ」などと酷いことを言いながら泣き崩れる。ポールはアパートの家具を引き上げます。それを知ったジャンヌは哀しみます。
 数日後、街でポールに会うジャンヌ。ポールはうって変わって自分のことをペラペラしゃべりだして、ジャンヌを若い頃に良く通ったらしきバーに連れていきます。一緒に生きて行こう、つきあってくれ、というプロポーズ的なことです。二人で酔っ払いめちゃくちゃなタンゴを踊って審査員に叱られますが、ポールはさらに悪態をついてお尻を出します。
 ジャンヌは「もう会えない。これが最後」と言って、ポールの股間に手を伸ばし手でイカせ、そのまま逃げ出します。納得しないポールは逃げるジャンヌを追いかけます。警察を呼ぶよ!と言っても聞き入れず追いかけてくるポール。部屋に入ったところで、ジャンヌは引き出しの中にあった銃でポールを撃ちます。倒れるポール。
 「知らない人に追いかけられた。私をレイプしようとした。名前も知らない人よ。そう、名前も知らない人…。」と、自分に言い聞かせるようにつぶやくジャンヌ。

つまりこんな映画(語りポイント)

 言わずと知れた問題作ですが、今みると性描写に関しては全然マイルドです。わいせつ裁判で主演のふたりが有罪判決になったなんて信じられないほど、なんてことないです。当時がそんな時代だったということですね。
  
 また、2016年になって「ベルトリッチ監督とマーロン・ブランドが共謀して、マリア・シュナイダーに何も告げずに(本当に)レイプをした。」という誤報が出回りましたが(後にベルトリッチが「内緒にしていたのはバターを使うということだけだ。後はすべて台本通り」と釈明している。)それが誤報であることも映画を観れば歴然。マリアは最後まできちんと演技をしている。

 まず冒頭からポール(マーロン・ブランド)が壊れてます。そのまま最後まで壊れたままです。
 この映画の最も残酷なところは、それでもようやく先を見始めて「ジャンヌと暮らしていきたい」「生きたい」と願ったこと、つまり、彼がようやく立ち直ろうとしたことで、それまで若い女を魅きつけていた妖しい魅力が一気に消失注:ジャンヌ目線比)し、ラストの悲劇につながるところ。
  
 妖しい魅力が漂う男→ただの変態おやじ。

    落差ひどい。

 そもそもポールが壊れていた原因は、妻に先立たれた寂しさや絶望感もありますが、愛人に自分と同じ柄のガウンをプレゼントしていたこと。自分の部屋と同じように壁紙をはがそうとしていたこと。そこから妻があくまで自分中心な人だった事がわかりますが、そんなことも含めて「『妻が何者だったか』が今になってわからなくなったこと」なんですね。

 だから、ジャンヌには「お互いに名前も知らないカラダだけの関係」を求めたのです。「何者か」で居てほしくなかったのです。ポールも「自分ではない自分」に成りたかったのかも知れません。何者でもない同士で純粋に求めあいたかった。
 最初、その取り決めにイラついていたジャンヌでしたが、むしろそれが、離れられないほど好きな「気持ち」を育てることになった。
 しかし、ポールが自分からペラペラとしゃべりだした途端にス~っと気持ちが覚めてしまった。そのあたりの、移り気で、ないものねだりで、うまくいかない、人間の気持ちの不確実さ。

 「求めるモノと得るモノ、求められるモノと与えるモノ」
そのバランスで人間の気持ちって動く。時にはまったく逆方向に。

 人間の、人生の、男の、切なさを描いた名作ですね。

 

▼ベルトリッチ監督なら、これも名作

cinema.kamuin.com