【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『ブラック・スネーク・モーン』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

「ブラック・スネーク・モーン」
原題:Black Snake Moan
2006年 アメリカ
監督:グレイグ・ブリュワー
出演:サミュエル・L・ジャクソン、クリスティーナ・リッチ、ジャスティン・ティンバーレイク、S・エパサ・マーカーソン、ジョン・コスランJr)、マイケル・レイモンド・ジェームズ、キム・リチャーズ

 おススメ度 ★★★★★(5/5)

 ポスターのイメージとは違うハートウォーミングな傑作。ほぼずっと半裸のクリスティーナ・リッチ、作品ごとにずいぶんと体形が変わる人ですが、この映画では「細い!」です。ぶっとび女優の魅力全開。個人的に、かなり好きな映画。食わず嫌いせず、まぁ観てみてください。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

    幼少期に受けた虐待のトラウマと、最愛の彼氏の病気(パニック障害)に疲れたレイ(クリスティーナ・リッチ)は、セックス依存症になってしまっていた。日々、パーティで男を漁り、周囲から「誰とでもすぐ寝る女」と思われている。 ある日、車の中でズボンをおろして迫ってくる男に「あんたのちんこ、黒人の半分ね」 と言ってはいけないことを言ってしまい、逆上した男に顔面をグーでボコボコにされ下着姿のままで路上に捨てられてしまう。

    ラザラス(サミュエル・L・ジャクソン)は、元・ブルースミュージシャン。今は引退して南部の片田舎で農夫をしている。過去に結婚はしていたが、妻は、彼の弟と関係をもった挙句、家を出て行ってしまっていた。
    心に痛みを抱えながら孤独な暮らしをしていたラザラスだが、ある朝、いきなり、半裸で顔面血だらけの娘が道端に落ちていたもんだからビックリ。 「さて、どうしたものか?」と思案した結果、そのまま自宅に連れて帰り、逃げないように、ぶっとい鎖でつないで室内に監禁する。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 目を覚ましたレイは、暴れて逃げようとするが無駄。レイの「カラダが欲しいんでしょ?好きにしていいから逃がして」の言葉にも、ラザラスは「自暴自棄になるな。自分を大切にしろ」などと説教をする。

   ラザラスは、レイの心の傷を知り、治療しようとしていた。

  いろいろあって…

  やがて鎖は外されるが、レイはもう逃げようとしない。ラザラスのギターの演奏に聞き入り、ひさしぶりに出演するというライブハウスで踊る。しかし、そこにレイの彼氏・ロニーが病気のため軍隊を除隊されて帰ってくる。ラザラスに銃を向けるロニー。やがてロニーもラザラスの真意を知り反抗をやめる。
 レイとロニーは考えた末に結婚式を挙げることにした。数人でのママゴトのような結婚式だったが、ラザラスたちに祝福され、お互いを励まし合いながら生きていくと決める。
 みんなに見送られた車の中で、パニック障害を発症するロニーに、ラザラスが歌っていた歌を歌いきかせながら「大丈夫、私がついてるから、もう大丈夫」と背中をさするレイ。

つまりこんな映画(語りポイント)

 魅力を作り出すのは意外性。

 半裸の娘が鎖でつながれているポスターや「セックス依存症の娘を、オヤジが鎖で繋いで監禁する映画」と聞くと、普通、ドンパチ殺しあうハードボイルドかSMチックなマニア映画かと思うけど、ところが全然、中身はハートウォーミングな傑作。

 ほぼずっと半裸のクリスティーナ・リッチ。
 「バッファロー66」「モンスター」では、ちょっとポッチャリさんだったけども、この映画では減量したのかスッキリなボディ。相変わらずの鋭い眼光と、かっとんだアバズレぶりがカッコいい。

 サミュエル・L・ジャクソンが、最愛の妻に去られ、コツコツと積み上げてきた幸せが粉々に割れてしまった中年男をカッコよく演じている。

 傷を負って人生を捨てかけていた娘が、本気で想ってくれる人に出会い、本来の素直さを取り戻す。そして、合わせ鏡のように、中年男も生きる希望を掴む。物語は、彼らがそれぞれに立ち直り前向きに生きていこうとするところで終わる。

 

 心に傷を持つ人間たちの再生の物語。
 

 中盤、クラブのシーンでサミュエルが弾くブルースがめちゃくちゃカッコいい!

老年のブルースおやじに、まるで飼い猫のようになついていくクリスティーナ。二人の関係が観ていてとっても心地よい。  


 「鎖」がなにを表しているか。

 前半、暴れまくるクリスティーナを強引に鎖で縛ったままのサミュエル。

この鎖の意味は…親子のあるべき姿」の比喩と解釈します。

 本気で相手のことを想うからこそ、どう思われようと、鎖で繋いででも正しい道を教える。道を外さないように一緒に戦う。これは、親の姿そのもの。お互いが、親からの虐待や、弟に妻を寝とられた過去、等、あえてひどい家族を描いておいて、それによって孤独になった二人がまずある。そこに相対させて、赤の他人であるラザラスとレイの心のつながりを描き、本来の素直さを取り戻す姿を見せる。
 これは、逆説的に「親子愛」を描いているのだろう。

 ラストシーンで、パニック障害を発症して苦しがる彼氏を抱きしめて「大丈夫!わたしがいるからもう大丈夫。」と語りかけるレイの、愛する人の宿命を自分のものとして受け止めて一緒に生きていこうとする決意、あるがままを受け入れる姿…これも親子愛を連想させます。

 そして、親子に限らず…
 本気で想ってくれる人がいれば、人は立ち直れる。ということ。ベタだけども…ベタなことをあえて逆説で描いているところが良い。

 超・意外性の中で、普遍的なテーマを描いた良作。