【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

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3分で映画『エンド・オブ・トンネル』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『エンド・オブ・トンネル』
原題:AL FINAL DEL TUNEL
英題:AT OF THE END OF TUNEL
2016年 スペイン・アルゼンチン
監督:ロドリゴ・グランデ
出演:レオナルド・スバラーリャ、クララ・ラゴ、パブロ・エチャリ、ファデリコ・ルッピ、ワルテル・ドナード
 おススメ度★☆☆☆☆(1/5)
 初期設定とツカミのアイデアは面白いのに、非常にもったいない映画。脚本と演出が破綻している。犯罪、ギャング団、サイコパス、汚職刑事…テイスト的には「レオン」を目指したっぽい雰囲気で、それなりに最後まで楽しめますが、最終的に「なんじゃこりゃ」になりそう。ストリッパーのベルダ(クララ・ラゴ)が結局脱いでくれません。

◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 広いが年季の入った家。車椅子の男・ホアキンは、ヘビースモーカーで、老犬・カシミーロと暮らしている。カシミーロはほぼ寝たきり。ホアキンはネットで「犬を安楽死させる方法」を調べ、毒入りのエサを作る。

 雨の日、セクシーな女性・ベルダが6歳の娘・ベティを連れて訪ねてきた。ホアキンは生活が苦しく家賃を払えないので2階を誰かに貸そうと貸し部屋広告を出していた。部屋を見たベルダは、契約も交わさず一方的に入居を決める。

 カシミーロの件はひとまず保留にし、毒入りエサを隠す

 ベルダは、車椅子のホアキンを気遣うが「ヘルパーや友人が欲しくて部屋を貸すのではない。」と言う。ベルダの職業はストリッパー。

 荒れ放題の家の庭には、壊れた車や滑り台の残骸があった。ベルダがホアキンの昔の写真をみつける。滑り台で楽しく遊ぶ娘らしき女の子、奥さんらしき人、まだ小犬のカシミーロと、楽しそうに写っている家族写真だった。どうやらホアキンは、事故で家族を失くしたらしい。そして自分も車椅子生活に…。

 ベルダの娘・ベティは言葉を発しない。二年前から突然しゃべらなくなったのだと言う。

 ホアキンのためにベランダにディナーを用意し、誕生日のお祝いにダンスを踊ってみせるベルダ。  

 ホアキンは地下室に降り、細かい部品を作ったりの作業をしているが、突然泣き出す。現在の生活や幸せだった過去を想って涙する。

 ふと、地下室の壁の向こうで誰かの声が聞こえる。補聴器を使って会話を聞くと、どうやら壁の向こうに誰かいる。壁に盗聴器とカメラを仕込む。すると、地下室の壁の向こう、この家の地下で、数人の人間がトンネルを掘っていた。やがてそれは、銀行強盗のためのトンネルであることがわかる。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 まるで奥さんのようにホアキンの世話をするベルダ。ホアキンは「地下室で作業をする。あとで見せたいものがある。」と言う。

 夜、彼らの様子を見聞きしているホアキン。すると、リーダーのガリレトに会いに降りてきたのは、なんとベルダだった。ベルダはガレリトの女で奴らの仲間だった。トンネル作業を円滑に進めるために、ホアキンの気をそらすための役割で演技をしていたのだった。

 「奴らは夜しか作業をしない」「起爆装置を作っている」等、情報を記していくホアキン。
 
 相変わらず一言もしゃべらない娘のベティ。しかし、犬のカシミーロに向かって何かをしゃべっている様子を目撃するホアキン。

 彼らの仲間は、ベルタ以外には四~五人だったが、そのうちの若い男が女に計画を話していた疑惑が持ち上がり、警察の手先だと考えたガリレトに地下室で殺される。それを見ていたホアキンは思わず電話機を手にとり警察に通報しようか迷うが、やめる。

 相変わらず、ホアキンを(作戦上)誘惑するベルタ。「私と寝たがる男はたくさんいる。世の中には優しい男がたくさんいるの。」とのたまう。ホアキンは、誘惑に乗るフリをしてベルタのドリンクに薬を混ぜ朦朧としたところをベッドに縛り付ける。計画とベルタの素性を知っていることを告げるホアキン。「あの男のどこがいい?」と、ガレリトが若い男を殺した映像を見せる。それを見て涙を流すベルタ。

 ベティと仲良くなろうとするホアキンだが、ベティは引き続きしゃべらない。

 ホアキンは、床に秘密の穴を開け始める。ベルタに「カネの一部を奪う」と話す。「やめて。殺されるわよ」と止めるベルタ。

 奴らが作業をしない昼間に、床に開けた穴からトンネルに侵入。しかしガリレトたちが作業をしていた。隠れる。彼らの会話では、彼らの関係も決して盤石ではなく、計画のために集められた連中であることがわかる。常に誰かを疑い争っているガリレト。

 ある日、部屋にベティの姿がない。ベティは床の穴から奴らの地下室に入っていた。それを心配そうに監視カメラで見ているホアキン。
 仲間のひとり、グッドマンが現れる。白髪の老人。隠れているベティ。銀行の現金ボックスには「触ると警報が鳴るボックス」等があること、あるボックスは麻薬密売組織のカネだから絶対に手を出すな、。等、注意事項を伝えるグッドマン。彼は情報元らしい。

 奴らに気づかれずに穴に戻ってきたベティを抱き上げるホアキン。
ベティは奴らの仲間のひとりの男の持ち物である時計を盗んできていた。

 まだベッドに縛られているベルダ。ガリレトから携帯に連絡がある。「出ろ。問題ないと言え」というホアキンに、最初は拒否するベルだだが、そこでホアキンはある録音テープを聞かせる。それは犬のカシミーロの首につけた盗聴器。ベティはカシミーロだけには言葉を発して話しかけていたのだ。

 ベティの声「ママの彼氏とゲームをするの。いろいろやらされる。出おママには内。教えたらやきもちを焼くから。男の子と女の子のゲームなの。」ガリレトは6歳の娘・ベティに手を出していたロリコン男だった。その時から、ベティは言葉を話さなくなっていた。事実を知って泣くベルタ。

 トンネルは完成した。あとは決行を待つばかり。

 再びトンネルに侵入するホアキン。爆破装置に細工をし、銀行に忍び込む。ボックスを開け、奴らより先に現金を奪った。そのボックスは、グッドマンが手を出すなと指示した麻薬密売組織のカネだった。

 銀行内に侵入する一味。ガリレトたちは元の部屋にいて、トンネル内に敷かれたレールを通じて運ばれてくる現金を引き上げている。

 と、トンネルが浸水をはじめた。ホアキンが仕組んだことだった。慌てて戻ろうとする実行犯たちだが間に合わない。ガリレトたちは仲間を見捨ててさっさと逃げてしまう。ホアキンは見捨てられた奴らの仲間を一度は助けようとするが、「男がいるぞ」と叫ばれ、思い直して出口を塞ぐ。

 銀行内に取り残され、途方に暮れている者もいる。

 ホアキンは、浸水してくる地下室から上階に脱出。

 ホアキンはベッドのベルタの元へ行き「人を殺してしまった」というがベルタはホアキンを殴り倒し「娘を助けなきゃ。ロープをほどいて」というが「俺が助ける、一緒に行こう」という。しかし「あなたは好きだけど、無理よ」というベルタを、逆に殴り倒すホアキン。

 ホアキンはシャワーで泥を落とし外に出る。外はどしゃぶり。雨で銀行が浸水したと、警察や救急車が集まっている。

 グッドマンに計画の失敗を報告しているガリレト。

 家に戻ったホアキンの元に警察が訪ねてくる。そのうちのひとりはグッドマン。グッドマンは汚職刑事だったのだ。彼らに情報を流し、甘い汁を吸っていた。「雨で浸水した。」ととぼけるホアキン。警察は一通り、部屋を調べて帰っていった。

 グッドマンは、ホアキンの携帯に自分の番号をコールし、なにかあったら連絡をしてくれといって一旦退散する。

 また警察が来た。しかしそれはガリレトたち一味が、警察のフリをしていることは、彼らの動きを全部見ていたホアキンにはわかっていた。しかし、騙されたフリをして対応するホアキン。

 ガリレトに電話をかけ「麻薬組織のカネが盗まれいた。返さないと命はないぞ」というグッドマン。

 警察のフリをしたガリレトに「銀行強盗が穴を掘っていた」「昨日までは親子がいた。今朝。出て行った」と嘘をつくホアキンだったが、ガリレトの視線の先にベティが見えた。

 縛られているベルタの元へいくガリレト。ベルタは起きない。ホアキンに銃を突きつけるガリレト。地下室を調べていた仲間たちも戻ってくる。ベティをひざに乗せ、ホアキンを尋問するガリレト。ベルタを縛っていたことや、トンネルを知っていたことも、すべてを適当にごまかすホアキン。信じないガリレトはホアキンを殴り倒し「顔を見られた。死んでもらうしかない」と言う。

 ホアキンの携帯にグッドマンからコールがある。「今、玄関の前にいる」というグッドマンを部屋に引き入れ「どういうことだ、説明しろ」というガリレトだが、グッドマンもまた「お前がなぜここにいるんだ?」と驚く。
 ガリレトはグッドマンを縛り、ホアキンに「わかるように説明しろ」というが、ホアキンはとぼけ、仲間のひとり、レフティの名前を呼ぶ。「なぜ、こいつがお前の名前を知っているんだ?」と驚くガリレトたち。
 「夜になるとレフティがベランダから入ってきた。ベルタに会うためだ。そして。強盗やトンネルの話をした。そして、お前の部屋から穴を掘って現金を奪え。三人で山分けしようと言った。ベルタを縛ったのもレフティだ。」と作り話をする。
 さらに盗聴していたレフティしか知らない話をする。さらに、ベティが盗んできたレフティの時計を見せて「ここに忘れて行った」という。裏切り者に仕立てあげられたレフティをガリレトが射殺。
 
 起きてきたベルタが、銃でガリレトを撃ち、ベティに駆け寄る。

 グッドマンが起き上がる。銃を向けるホアキンだったが、グッドマンは「あわてるな、死体を四つもどうするつもりだ?」と言い、男たちの死体を自分の車のトランクに入れ「すべてを知るのが俺の仕事だ。血は洗い流せ。カネを半分もらう。そうすればすべてを見逃す。」と取引をもちかける。
 ホアキンは、グッドマンが地下室でガリレトたちと共謀している証拠映像を見せる。グッドマンは一瞬同様したが「そんなものは証拠にならない。」と、ベルタとベティに銃を向ける。
 ホアキンはカネのありかを教え、グッドマンに持っていかせる。しかし、その間、グッドマンは、冒頭でホアキンが作っていた「安楽死用のエサ」を食べていた。

 カネと男たちの死体を乗せた車を運転しているグッドマン。やがて意識が遠のいていき、事故を起こす。燃え上がる車、倒れるグッドマン。

 翌朝、ホアキン、ベルダ、ベティが家を出ていく。カシミーロも一緒だ。ホアキンの手を、娘のベティが握りしめた。

 

つまりこういう映画(語りポイント)

   事故で幸せな家庭が崩壊した車椅子の中年男→子連れのセクシーな女が部屋を借りに来て同居がはじまる。→ 自宅の地下に、勝手にトンネルを掘っている連中がいる。→ セクシーな女は奴らの仲間だった。……。

 めちゃ面白そうです。ツカミの設定はかなり期待できるのです。映画全体の雰囲気も自分的には好み。実際、序盤は面白い。

 おそらくやりたかったことは「妻も子供も失くし人生に絶望している中年が、ふとしたきっかけで物凄く頑張らなきゃいけなくなり、結果、そこで出会った女性と新しい未来へ向かって歩き出す」という流れ。うまく作れば良作に成りえるプロット。

 犯罪、ギャング団、サイコパス、汚職刑事…テイスト的には「レオン」を目指したのかも知れません。

 それだけに、非常にもったいない。

 肝心の二人の心の動きがまったく共感できないのです。難解で理解できないのではなく、説明を排除しているからわかりにくいのでもなく、ただ、脚本が破綻しているのです。

 ホアキンとベルタが「一緒に暮らして行こう」となる理由が皆無。男と女なので、他人が納得する理由なんてなくてもいいという場合もありますが、普通に映画を観て、この二人が好き同士になるとは到底思えない。脚本上、これが致命傷。ここだけでもシッカリ作っていれば、他のことに目をつぶれたかも知れないのに。最も惜しい点。

 子持ちのストリッパー、汚職刑事、ロリコン男…、それっぽい濃いキャラを出しているのだけど、ほとんど活かされていない。

 とってつけたような伏線の回収方法があざとい。

 老犬を安楽死させるために作り置きした毒エサを、最後に悪徳刑事が食べますが、あそこで、刑事がわざわざあのダンゴを食べる流れは、どう考えても無理がある。曲がりなりにも刑事という職業で生きてきた経験豊富な老人が、敵の自宅内で、修羅場の最中に、わざわざ変な食べ物を口にするでしょうか?

 中盤で娘・ベティが盗んできた腕時計が、後半でホアキンのピンチを救いますが、そもそも、ベティが腕時計を盗んでくる理由が薄すぎる。あれをやるなら、腕時計に「ベティが持って帰りたくなる理由」が付加されていないと成立しない。「ベティの好きなアニメキャラが書いてあった」でもいいじゃないか。なんとでも考えつきそうなものを。

 とってつけたような伏線と、無理のある伏線回収。それをドヤ顔で見せられている感じ。

 言葉をしゃべらない6歳の娘ベティ。ホアキンの飼い犬にだけは話しかけるという設定は面白く、飼い犬の首輪に盗聴器をつけてベティの本心を知るというアイデアは秀逸。ただ、結局、ベティはなにもせずに終わる。なんだったの?
 ホアキンとベルタの恋のキューピッドになるでもなし、事件から誰かを救うでもなし、なにかしら重要な仕事をしなきゃダメでしょう。このガキ…いや、娘さんが。

 刑事の「結局、最後は女と運で決まるんだ。」というセリフは好きです。世の男性が妙に納得してしまいそうな面白いセリフだけに、これも本当にもったいない。ホアキンは主に巧妙な嘘を駆使して、悪人たちをギャフンと言わせます。ほぼ自力。まったく「女と運」に助けられてないのです。
 きっと、作ってる側は「女と運で助かった」ように作っているつもりなのだと思いますが、まったく違ってます。せっかくの良いセリフが台無し。

 なによりもったいないのが、せっかく美人でセクシーなベルタがまったく脱がない。

 クララ・ラゴさんというスペインの女優さんで、セクシーなアングルで下着姿を強調してはいるものの、そこまで。結局、まったく脱がずエッチシーンもない。ストリッパーという設定だけに、むしろまったく脱がないのが不自然。脱いでください。

 

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