【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『パーフェクト・ルーム』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『パーフェクト・ルーム』
原題:The Loft
2014年 アメリカ
監督:エリク・ヴァン・ローイ」
出演:カール・アーバン、ジェームズ・マースデン、ウェントワース・ミラー。エリック・ストーンストリート、マティアス・スーナールツ。ローナ・ミトラ、レイチェル・テイラー、イザベル・ルーカス
 おススメ度★★★☆☆(3/5)
 ベルギー映画「ロフト」のリメイク。ストーリーは突っ込みどころも多いのですが、それ以上に、脚本の構成、見せ方が巧いので映画としてのクオリティは高い。普通に面白いです。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 マンションの一室を共同で所有し、秘密の浮気場所として利用することにした五人の妻帯者。それぞれに女性や売春婦を連れ込み、楽しんでいたが…。

 ある日、ベッドの上で金髪女性の血まみれの死体がみつかる。警察を呼ぶと今までの自分たちの浮気が妻や家族にバレてしまう、それは困る、と悩む五人。

 殺されている女は、五人の中で一番のプレイボーイであるヴィンセントの愛人、サラだった。ヴィンセントは、確かに昨夜、サラと部屋で浮気をしていたが、自分はサラを置いて先に帰ったと主張する。「妻たちだ。女たちが俺たちに復讐するために仕組んだんだ」とも考える。

 部屋の鍵を持っているのは五人だけのはずだったが、クリスだけは鍵を売春婦のアンに預けていた。

 その後、五人の過去の回想シーンと、警察での取り調べシーンを交えながら映画は進み、五人とそれぞれの妻たち、浮気相手、全体の人物相関図が見えてくる。

 やがて、複数の人間が絡む「ある策略」と「誤算」があきらかになってくる。

==以下ネタバレ==

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ここがネタバレ!

 事件の発端は、ヴィンセントに冷たくあしらわれた愛人・サラの自殺未遂だった。大量の薬と遺書と共にベッドで倒れているサラ。映画冒頭で、手錠につながれて血まみれで死んでいたサラとは状態が違う。

 言い出しっぺは、ヴィンセントの親友で、部屋での全員の情事を内緒で録画していたルーク。ルークは、自分だけが知っていた秘密=ヴィンセントが他の四人の妻や妹、愛人たちとことごとく浮気している映像を全員に見せる。それにより激怒したメンバーたちは、睡眠薬を飲ませたヴィンセントを裸にして、サラの横に寝かせる。「ヴィンセントのせいでサラが自殺した」ことを明白にして、自分たちにあらぬ疑いをかけられないようにするため。

 加えて「ヴィンセントを懲らしめる」ため。

 アリバイづくりをする四人だったが、部屋にヴィンセントを呼ぶ前のセッティングを任されたフィリップが「派手なほうがいいと思って」サラの手首を切り、血まみれにしてしまう。

 しかし、サラはその時点では死んではいなかった。すでに死んでいると思っていたフィリップがサラを殺したことになる。

 つまり「情事の末の自殺」のはずが「殺人事件」になってしまったことが四人の誤算だった。

 警察の取り調べで、最初は、妻に浮気がばれることをおそれ保身に走っていた四人だったが、最終的には本当のことを話す。しかし、サラが自殺をはかっていたことを証明する遺書は、ヴィンセントを恨んでいたルークが意図的に捨ててしまっていた。
 このままではヴィンセント(あるいはフィリップ)が殺人犯になってしまうと焦ったクリスは、ルークを問い詰める。
 格闘の末、ルークは「妻によろしく」と言い残し、ベランダから飛び降りる。
 
 半年後、
 ヴィンセントは今はマンションで孤独に暮らしている。妻と離婚寸前だったマーティはよりを戻した。フィリップは裁判を控えているという。
 クリスは、惚れていた売春婦・アンと再会。今は仕事をやめたと言うアン。「お茶でもどう?」とみつめあう二人で…幕。

つまりこういう映画(語りポイント)

 脚本構成、見せ方が巧い。
 
 「サラの死体を前に五人で困っている状態」と「警察での取り調べ」「過去の回想」の三つを平行して見せることで、観客へのミス・リードを作り出している。

 まず、警察に調べられたら浮気がばれるから困る、と言っているのだけど、取り調べシーンが入ることで、のちに警察に捕まったのだとわかるのですが、前半を観ている限り、観客には、冒頭の「血まみれで手錠につながれて(ひとりで)ベッドで死んでいるサラ」について供述をしているのだと思わせる。

 しかし、実際には、警察は、四人が仕組んだ「死体の隣には、裸のヴィンセントが寝ている」状態で発見したのだし、かつ「情事の末の自殺」のはずが「殺人事件」として捜査されていることも、後半になるまでわからない。

 それによって、彼らが供述する言葉の意味が違って聞こえるわけで、真相が明かされた後に、あらためて「なるほど」になる。

 何度も書いていることですが、脚本のキモはストーリーそのものではなく「なにを見せるか」「なにを見せないか」「どの順番で見せるか」に尽きる。

 そのあたり、巧い映画です。

 実際、ストーリーは突っ込みどころ満載なのですよ。ただそんなことは映画にとってたいした問題ではない。

 浮気が原因でこんな大変なことになってしまう「男の馬鹿さ加減」を描きつつ、最後はプレイボーイのヴィンセントにバチが当たって孤独になっているとか、お互いの浮気を通り越して寄りを戻した夫妻とか、金持ちの議員とつきあっていた売春婦のアンが、最終的にクリスの元にやってくるところとか。

 なんとなく「良い話」で終わるところも悪くないです。

 しかし放題の「パーフェクトルーム」って。全然パーフェクトじゃないやん、ってところも突っ込ませる狙いなのか?
 原題「ロフト」でいいやん。