【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

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3分で映画『オンディーヌ 海辺の恋人』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『オンディーヌ 海辺の恋人』
原題:Ondine
2009年 アイルランド
脚本・監督:ニール・ジョーダン
撮影:クリストファー・ドイル
出演:コリン・ファレル、アリシア・バックレーダ、スティーブン・レイ、デヴラ・カーワン、ドン・ウィチャリー、キャリー・クロウリー
 おススメ度★★★★☆(4/5)
 ニール・ジョーダン得意の「おとぎ話現代版」。スコットランドの神話に出てくるセルキー(海の妖精)を題材にしている。ファンタジーな雰囲気を全面に押し出しつつも、サスペンス調の「真実」を用意しているところもニール・ジョーダンらしく、それによって良作化している感がある。深みのある話ではないけど、女房に出ていかれたダメ男、そこに現れたワケアリの女、病で車イス生活を送る幼い娘、三人の「家族」の物語。後味良いです。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 漁師のシラキュースが船の上で網を上げると、そこにはなんと意識を失った女の人が釣れていた。慌てて救護するシラキュース。

 意識を取り戻した彼女は「死んだはずなのに、なんで助かったの?」と言う。「病院へ行こう」という男の提案になぜか「誰にも言わないで」と拒む女。名前を聞いても「知らない」という。ひとまず彼女を、今は誰も住んでいない元・母の家に連れて帰り、着替えを用意するシラキュース。

 シラキュースには別れた妻と、腎臓病で車椅子生活を送っている幼い娘・アニーがいた。妻には新しい夫がいる。アニーを透析に連れて行くシラキュース。アニーは新しいお父さんのことが好きではなく、シラキュースを慕っていた。
 ベッドの娘におとぎ話を聞かせる。
「昔、あるところに…」「いつも同じ始まり方だね?」「これがおとぎ話の始め方なんだ。」「良かった時代に…でしょ?」「そう。良かった時代のお話」
 そんな会話から、アニーに「海から現れた人魚姫の話」をする。最初は信じなかったアニーだが、海の精・セルキーかも知れないと言い出し興味を持つ。

 海から現れた名前もわからない女。果たして彼女は本当の海の精なのか?

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 翌日、母の家にいってみると彼女はいた。夢ではなかったんだといい、彼女を乗せて漁に出る。彼女は便宜的にオンディーヌという名前になった。すると不思議なことが起こる。オンディーヌが船の上で歌を歌うと、滅多にとれないロブスターが大漁に捕れた。あんたのおかげだ、といい一緒に市場に売りに行こうというが、彼女はまた「人に会いたくない」と拒む。

 アニーにおとぎ話の続きを話す。彼女が歌を歌うと大漁になりました。と。

 ロブスターを売ったお金でオンディーヌに服と靴を買ってやるシラキュース。「いつまでいる?」と聞くと、彼女は「それは貴方に聞かなきゃ」と答える。

 電動車椅子でアニーが母の家を覗きに来る。オンディーヌをみかけたアニーは「おとぎ話じゃなかったんだ。」と独り言。

 シラキュースは教会へ行き、いつものように神父に禁酒のためのカウンセリングを受ける。もう2年7カ月も禁酒に成功している。そこでオンディーヌの話をするシラキュース。

 アニーは、飲んだくれの新しい父がいる家で、図書館から借りてきたセルキーの伝説の本をよんでいる。

 アニーはシラキュースに内緒でオンディーヌに会いに行く。浅瀬で泳いでいたために、服の上から乳首が透けて見えるオンディーヌに声をかけるアニー。「アリスはネズミにいいました。ますますヘンテコ」アニーの口癖だった。
 さらにアニーはオンディーヌに「わたしの病気を治せる?」「なぜここにきたの?迷子になったの?」と言う。体調が良くないというオンディーヌに「水の生き物なのに陸にあがるからよ。」と言い「隠しても無駄よ。あなたセルキーでしょ?」と本で読んだセルキーの伝説を聞かせる。

 セルキーの伝説…「あざらしの毛皮を失くしたために海に帰れない。」「毛皮をみつけると海に帰れるが、土に埋めると地上で7年生きられる。」「その時、セルキーは七つの涙を流す。」「泣き終えたら、思いがけない幸せがやってくる。」

 漁に出ているシラキュースたち。監視船をみつけて上半身を隠すオンディーヌ。足で舵をとるが、その足をみて下半身を膨らませるシラキュース。オンディーヌが歌を歌うと、今度はトロール網にはかからないはずの大量のサケがあがった。
「ますますヘンテコ」アニーの口癖を言うオンディーヌ。

 シラキュースの船に乗り込んできた監視船の男たちに、オンディーヌを見られる。「これで噂になる」と暗い顔をするオンディーヌ。

 開き直ったのか、一緒に港にいき町に出るオンディーヌ。
「下着が欲しい。食い込むの」というセリフにまた下半身が反応するシラキュース。二人でいるところにアニーが来る。「セルキーが下着を買うの?そっか、貝のブラと海藻のパンティは水中用だもんね。」と納得するアニー。三人でショッピングにでかける。小さな町、初めてみかける美女・オンディーヌはアッという間に町で評判になる。

 シラキュースは元・妻をデートに誘うが、断られる。

 海で泳いでいるオンディーヌとアニー。突然、海中でなにかをみつけるオンディーヌ。アニーは「あざらしの皮ね!みつかったんだ」と言う。
「そう。」と答えたオンディーヌは、アニーと共に、二人だけの秘密の場所に「あざらしの皮」を埋める。「これで七年、一緒に居れる。」

 港で祭りが行われている。妻は今の夫と二人で仲良く参加している。大勢の人たちに混じり、怪しい謎の男がいる。彼はどうやらオンディーヌを探しているようだ。

 アニーが「ブレーキが壊れた」車椅子ごと、海に落ちる。慌てて飛び込むオンディーヌ、男たちの協力もあり、アニーを助ける。

 海からあげたアニーを、妻の元に帰しにいったシラキュースに「だからあんたに預けられないのよ。」と怒る元・妻。荒々しい現在の夫は「あの女はなんだ?人魚?アホか」とバカにする。

 シラキュースはオンディーヌに「ブレーキのせいじゃない。わざとやったんだ。君を確かめるために。」と言う。

 シラキュースがオンディーヌに過去を離す。アル中で妻に愛想を尽かされ、アニーも連れていかれた、と。やり直せばいいじゃないというオンディーヌに「俺はしがない漁師だから、無理だ。」といじける。

 二人はここで初めてキスをして、男女の関係になる。
「漁師と愛し合うとき人魚は泣くのよ。潮の涙を流すの」とのたまう人魚に「君は水中で死んだのか?」と聞く。オンディーヌは「生まれ変わるの、あなたのために、何度でも。」と言う。完全にラブラブ。

 教会に来ているシラキュース。神父に話す。
「秘密を黙っていられない」「彼女をいると運がまわってきた」「それが怖い」「希望を持ち始めている」「なにか素晴らしいことが起こる」と。

 アニーを家まで送っていくと、妻と夫は遊びに出かけていた。仕方なく、二人の元までアニーを送りにいくシラキュース。二人は酔って遊んでいて、シラキュースに悪態をつく。アニーを心配するシラキュースだったが、アニーは気丈に「わたしは大丈夫、置いて行って」と言う。アニーの電動車椅子に乗って「これで帰ろうかな」などとおどける妻。あきらかに「ひどい二人」の図。

 夜、ひとりで家にいるオンディーヌを謎の男が追ってきた。逃げるオンディーヌ。シラキュースが戻ったときにはオンディーヌは家にいなかった。探すと川で身を隠していた。
「男が連れ戻しにきた」と言う。「旦那から逃げて海に飛び込んだのか?」と問い詰めるシラキュース。「追い払え」「それはできないの。」と言うオンディーヌに「願うんだ。願いは叶うとアニーが言っていた。」と励ますシラキュース。

 アニーも乗せた夫婦の車と謎の男の車が衝突事故を起こす。夫は即死した。アニーと妻は病院に運ばれる。

 たまたま現場を通りかかりアニーの車椅子をみつけるシラキュースたち。病院にかけつけると、命を落とした夫にドナー登録があり腎臓がアニーに適合すると聞かされる、緊急手術を受けるアニー。
 妻は後遺症で車椅子生活になった。アニーは助かり、シラキュースが引き取ることになる。

 夫の海葬。骨を海に散らしながらシラキュースに「あの女は嫌い。」という妻。

 禁酒を破り、酒をあおるシラキュース。酔った勢いで、隠れているオンディーヌをみつけ「海に帰れ」と言う。
 船に乗せ島に連れて行く。道中、なにを思ったのか「これ以上、俺にとりつくな」となじる。「とりつくな」と言われたことにショックを受けるオンディーヌ。シラキュースは彼女を島に置き去りにして船で戻ってしまう。哀しみ、海に飛び込むオンディーヌ。

 翌朝、森で酔って寝ていたシラキュースを神父がみつける。
自暴自棄になっているシラキュースは「俺の欠点がわかるか?幸運を避けることだ。」と言う。神父は「不幸になるのは簡単だ。幸せになるには労力がいる」と説教する。

 アニーと母の家に帰るシラキュース。オンディーヌは「海に帰った」と言うが、アニーは「必ず戻ってくる。だって置いたままだもの」と二人で隠した「あざらしの皮」のことを匂わす。
 その時、偶然、アニーが見ていたテレビで、オンディーヌが歌っていた歌が流れる。それを聞いてなにかを感じたシラキュース。

 島に連れ戻しにいく。オンディーヌは海岸で倒れていた。
真実を話せというシラキュースに「アザラシの毛皮をみつけて埋めた。一緒にいたかったから。それがひとつめの真実。あとは聞かないで。」

 さらに問い詰めると彼女は本当の真実を話す。
 オンディーヌは本名をヨアナといい、ルーマニアの麻薬運び人だった。
仲間と密輸中に海上でヘリコプターに囲まれ、泳げない男は麻薬をヨアナに託して海に逃がした。やがて波に流されたヨアナは気を失い、シラキュースの網にかかったと。

 「そこで私は家と家族をみつけた。でももう失った。」
彼は「まだある。帰ろう」といい、一緒に家に帰る。しかし、そこにはアニーと複数の男たちがいた。ヨアナを追ってきた謎の男たちだ。銃で脅し、麻薬のありかを聞く男たち。

 オンディーヌがアニーと二人で海中で拾い土に埋めたのは、アザラシの毛皮ではなく、真空パックにしたヘロインだった。

 隠し場所を教え掘り起こすがそこにはヘロインはなかった。ヨアナがアニーに聞くと、隠し場所を変えたのだという。それは海中にあるロブスター用の網の中だった。
 網をあげるべく乗った船の上で意を決し、アニーと二人で男たちを海中に落とす。泳げない男は溺れ、翌朝、警察に捕まった。

 教会で神父と話すシラキュース。
「来週 彼女の裁判がはじまる。彼女は外国人だ。強制送還を避けるには国籍が必要だ。誰かが彼女と結婚するしかない。」

 アニーが神父に懺悔をしている。
「毛皮は海に捨てた。嘘をついたの。ずっといてほしかったから。」
 
 島、母の家の前、ウエディングドレスのヨアナと、正装したシラキュース。病気が治ったアニーが舵をとり、三人で船を出す。
 海の上で幸せを誓い合う三人。

つまりこんな話(語りポイント)

 網にかかって海から引き上げられてくる美女なんて、ありえない設定も「現代版おとぎ話。ちょっとファンタジー。」と思って見ている分には違和感はない。
 ヒロインが最初に「人に見られたくない」と他人との接触を拒む理由が、犯罪に絡んでいるから、が真相なのだけど、そこを「海の妖精だから、人の目を避けている」と思い込ませるところが脚本的な狙い。
 
 ただ、演出的にいかにもセルキーと思わせるふるまいをするわけでもないから、オンディーヌが普通に人間の女性であることは早い段階でわかる。それでも「もしかして本当に海の妖精なん?」な疑惑は残しつつですが。

 それよりも、彼女を海の精だと信じている少女アニーの姿‥のほうに意味がある。

  いわば「純粋に信じることが大事」「信じる者が救われるべき」なんてメッセージか。

 要は、傷ついた人間たちが、人魚(セルキー)伝説に触発されて、あるいは教訓にして、新しい道を開いていく話。

 「妻と再婚相手」は随分と酷い人間たちのように描かれているし、彼らが不幸になることが相対的に主人公たちのハッピーエンドにつながるという設定は、あからさまな勧善懲悪で深みはない。
 ただ、個人的には、誰もが良い人でよかったね、なんて嘘っぽい設定よりは、悪者は最後まで悪者でいてくれるほうが気持ちが良いし、リアルだ。もちろんそこに「悪者なりの理由」は描かれていいのだけど。

 おとぎ話ベースの映画にありがちな残酷さや不条理さはない。

 最終的には、サスペンス調のネタバレからの普通のハッピーエンド。

 それにしても、アニー役の子役が良い。病気という設定ながら暗い影はなく元気いっぱいな女の子。子役がかわいい映画ベスト100なんてものがあれば、割りと上位に食い込むのではないだろうか。
 普通であれば、主人公にとっての天使は海から現れたオンディーヌということになるのだろうけど、この映画の天使は完全にアニーだ。
 彼女の存在や発言、行動が、大人たちの心を癒し、救いを導き出す。

   ラストシーンである海上結婚式?で船の舵をとっているのがアニー‥という絵がそんな構図をうまく表現しててウマい!

  そしてほっこりします。

 全体的に含みは少なく、唸るようなメタファーも見当たらないのですが、そこはもう単純に、子供の純粋さ、そこに触発されて希望をみつけていく大人たち、そんな映画ということで充分だと思います。

 僕らの日常では、そんなに都合よく海から美女はあがってこない。離婚して別居しつつ自分のほうをひたすら慕ってくれる可愛い娘…も。

 「ちょっと疲れた男たち」必見の夢物語てところ。

 真相ネタバレからのラストに向けて、軽~くハードボイルドタッチな設定が入っている点も含め、個人的には好みの映画でした。