【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

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3分で映画『モーガン プロトタイプL-9』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『モーガン プロトタイプL-9』
原題:Morgan
2016年 アメリカ・イギリス
監督:ルーク・スコット
出演:ケイト・マーラ、アニャ・テイラー=ジョイ、トビー・ジョーンズ、ローズ・レスリー、ボイド・ホルブルック、ミシェール・ヨー
ジェニファー・ジェイソン・リー、ポール・ジアマッティ
 おススメ度★★★★☆(4/5)
 ありがちなSFと思ってスルーしてしまいそうな設定ですが、中身は、ヴァンパイアや狼男に近い、望まずして生まれた者の宿命と悲哀。主役モーガンの女優さんのアクションもカッコよいだけでなく、適度にエグいのが個人的にツボ。生物としての愛情や家族愛を裏テーマに仕込んでもあり。SF設定ながら妙なリアリティにあふれる快作。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 人工知能に遺伝子操作を絡めた、新型生物「L-9」の研究が極秘に進められていた。試作品であるモーガンは、年齢は5歳だが見た目20歳くらいの女性。
 頭にフードを被り、色白の無機質な表情をしている。

 研究室、突然、面談中の女性研究員を殴り倒すモーガン。事故だ。会社は危機管理担当のリー・ウエザースを派遣する。

 リーは山奥に隔離された研究施設にやってくる。リーは、気が強そうで聡明タイプの女性。。

 研究者のエイミーに会う。こちらはどこにでもいる普通の女性。

 襲われたキャシーの病室に行く。キャシーは「事故はモーガンのせいじゃない。彼女の不機嫌にきづかなかった私が悪い。あの子には心がある。部屋に閉じ込めるまでは。」とモーガンに理解を示し、リーに「わかるわよ。あなたは研究をつぶしにきた殺し屋でしょ。」という。否定も肯定もしないリー。

 モーガンはいわゆるロボットではない。遺伝子操作によって生まれた、身体構造は人間と同じ個体。クラシックやジャズを好み、音楽を聴きながらひとりでチェスの駒を動かす。

 モーガンを誕生から知るジーグラー博士によると、モーガンが暴れたのは「外に出たがっているモーガンに、室内での研究延長を告げたから。」
 実は、以前にエイミーが内緒でモーガンを森に連れて行き、森の自然や太陽の光を見せていた。その時から、モーガンは外に出たいと強く思うようになったらしい。手を繋いで森を歩くモーガンとエイミー。

 モーガンと対面したリー。モーガンはリーの名前と肩書き。ここに来た目的まで知っていた。事故は反省しているという。 

 室内で培養され、外の世界にあこがれるモーガンは、やがて研究員を次々に傷つけ、施設を脱出する。。

 彼女を追いかけるリーの正体は?

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 リーは情報収集のために、施設で働く料理人と話をする。良い雰囲気になり、男に軽くキスをされるが、キスをされても反応が薄いリー。

 エイミーがモーガンの部屋に行く。「私はきっと何者にもなれない」というモーガンに「湖に行こう。私たちだけの楽園よ」というエイミー。エイミーはモーガンの親友であり、内心、研究者たちを嫌っていた。派遣されてきたリーのことも。

 本社から新しい研究者が送られてきた。彼いわく「モーガンは電子レンジと同じ。手順通りに接するだけだ」と言い、危険だからと設定されたガラス越しの面談を拒否し、モーガンの部屋に入る。 
 「君は人間か?」と聞かれ「違う。別のなにか」と答えるモーガン。エイミーや他の仲間を「友達」というモーガンに「向こうもそう思っているかな?」と挑発的に接する男。
 テストのつもりで「私が君を破棄すべきだと報告したらどうする?」「どうするかやってみろ。」と促す男に、モーガンが襲い掛かり首元を噛み切って殺してしまう。

 モーガン自身が「エラー」と表現するバグがあった。以前に、森の中で鹿を殺した記憶がよみがえる。
 
 麻酔銃を持って室内に入った別の研究員を蹴り倒す。勢い、モーガンは施設を脱出するが、リーに麻酔銃で撃たれて捕獲される。

 「プロジェクトは打ち切り。翌朝には回収係がくる」というリーに、ジーグラー博士は「長年の研究だ。中止したくない。」という。
 ベッドに縛られたモーガンは「私は頑張った。これからももっと頑張るから。」と泣くが、研究者たちは危険なモーガンを眠らせようとする。

 モーガンは解体される方向になるが、長年、一緒に暮らしてきた研究員たちはモーガンのことが好きで、解体を命じられた研究者は「ふざけんな。俺はやらない」と仕事を放棄。自らの手でモーガンを殺そうとするリーを、背後からエイミーが撃つ。

 リーが目を覚ますと、彼女はモーガンのガラス部屋に閉じ込められていた。研究員は「申し訳ない。君も僕も会社の一員だ。会社のために働くが、ただ、君や本社とは考えが違う。」と言う。

 本社の人間が到着する前に、荷造りをしモーガンと共にどこかに逃げようとする研究チームだったが、モーガンを抱き起こした研究員を、どういうわけか襲い、二人も殺してしまうモーガン。
 ガラス部屋に閉じ込められたリーの元にいったモーガンは「彼らは友達ではなかった。私を殺そうとした。友達はエイミーだけ。」と言い、暴走を始める。

 施設の研究員たちをどんどん殺していくモーガン。

 研究の責任者である女性はコンピューターに「実験の失敗」を告げている。失敗の原因は「より人間らしい仕様を求めたが、兵器としての仕様を越えられなかった。廃棄する。」

 モーガンは兵器だったのだ。

 ガラス部屋を脱出したリーとモーガンの格闘。

 エイミーがモーガンを車に乗せ森に向かう。追いかけるリー。森の中でのカーチェイス。

 森の中、二人で歩くモーガンとエイミー。モーガンは「二人で幸せになれる」というが、エイミーは念のために懐に銃を忍ばせていた。

 湖に着くモーガン。その美しさに「天国ってこういうところ?きっとそうよ。感じる。私、生きてる。」とつぶやき、湖面に写る自分の顔を見る。と、銃声が聞こえた。

 森の中でリーが発砲した音。音の方向に歩き出すモーガン。リーをみつけ、襲い掛かる。格闘。対等に戦うリーだったが、倒された拍子に木の根が腹を貫通し動けなくなる。

 湖に戻ったモーガンはエイミーに「行こう。」というが、エイミーはモーガンに銃を向け「もうやめよう。」と言う。その後ろからリーが襲い掛かり、モーガンを湖に沈めて殺す。
 そして、エイミーを銃殺。さらに、一緒に森に来た料理人の男までも殺してしまう。

 本社。リーの仕事が称えられていた。「犠牲者が出たことは遺憾だが、仕方なかった。彼女は任務を遂行した。L-9は劣ったシステムだ。研究を中止し、資金をL-4に移す。リーは完璧だ。」と言う。

 リーもまた、人間型兵器として試作中の生物だった。

 

つまりこういう映画(語りポイント)

 人工知能ロボットの反乱…という映画はたくさんあって、ありすぎて、あまり観る気も起らないのですが、この映画は「生身である」「生物である」という部分がポイントで、それゆえの「あくまで人間(ではないが人間に近い生物)としての悲哀が描かれている。ロボットやアンドロイド物とはまったく質が違います。ほぼ『ブレードランナー』のレプリカント。

 設定はSFだけど、どちらかというと、ヴァンパイアや狼男に近い「望まない世界に生きてしまっている者の宿命と悲哀」。そこが良い。

 モーガンと研究者の質疑応答のところも、あきらかに「ブレードランナー」を意識しているのがハッキリわかる。

 人間の都合で無理やりに繁殖された犬猫たちのメタファーでもあるのでしょう、外の世界に憧れながら室内に閉じ込められ、精神的に追い詰められる。暴れると殺される。人間の勝手な都合なのに。たとえば、設定を「ペットショップの動物たちの反乱」と置き換えても、ほぼ同じ作品になる。 

 モーガンの暴れ方もほとんどヴァンパイア。喉を噛み切って口の周りが血だらけになるあたり、「モールス」のクロエ・グレース・モレッツに似ている。

 特殊メイクかCG?と思うほどの無機質な顔つきは美しい。めっちゃ鮮やかなアクションや、その強さは、実は人間型兵器として開発されていたというネタと整合性がとれていて、説得力のある伏線になっている。

 また「リーもまた、別プロジェクトで開発された兵器人間だった」というオチも、そもそも人間味が薄い性格設定とか、料理人の男にキスをされてもリアクションが薄いとか、すべてが正攻法の伏線になっていて、設定に嘘がないから好感が持てるのです。
 モーガンが「私には愛情表現が欠如している」と自己分析するシーンがあっての、リーのキスシーンでの薄いリアクション、というコンビネーションは脚本的に巧い。
 
 「時々、エラーが起きて生物を殺傷してしまう」という設定も「だって生物兵器だから。」と聞くと納得ですよね。

 ストーリーもシンプルで、モーガンの哀しさもストレートに表現されていて、長くない上映時間も含め、非常に見やすく、わかりやすい。

 大きなテーマは「生と死」「命」「宿命」でしょう。 

 裏テーマは「家族愛」か。

 モーガンと暮らした研究者たちが、モーガンにすでに家族のような感情が芽生え、廃棄されそうになるモーガンを助けようとするところは「立場や本質さえ違えど、一緒に暮らし、一緒に笑い、そこで芽生える感情が大事。」と云う「家族の在り方」「人と人との接し方」の教訓にも思える。
 
 「一緒の時間を過ごすこと」「一緒に笑うこと」「一緒に泣くこと」が本当に大事。しかもそれは人間に限らない、地球上に生きる生物としての話でもある。

 ちなみに、最終的にほとんどの人間が死ぬ…主人公やその親友まであっさり死ぬ…というダークさが個人的にツボで大好きなセンスです。親友のエミリーが、ただ無条件にモーガンの味方なのではなく「違う生物として」どこかで警戒しているところもリアルで良い。

 ありがちな近未来SFではなく、いろいろリアリティにあふれた傑作