【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。酒でも飲みつつ語りたい。3分で「語りポイント」がわかる映画ネタバレあらすじ集。

3分で映画『刺さった男』を語れるようになるネタバレあらすじ

基本データ・おススメ度

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『刺さった男』
原題:La chispa de la vida
2012年 スペイン
監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア
脚本:ランディ・フェルドマン
出演:ホセ・モタ、サルマ・ハエック、カロリーナ・バング、ブランカ・ポルティージョ、ファン・ルイス・ガリアルド
 おススメ度★★★★★(5/5)
    資本主義、現代社会への痛烈な風刺。ブラック・コメディではあるけども、コメディと思って油断して観ていると、そこに叩きつけられるシニカルなテーマに驚くはず。かなりの秀作。展開も面白いので、文句なしにおススメできます。妻役のサルマ・ハエックがめちゃくちゃカッコいい。

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あらすじ(ネタバレなし)

 失業中のロベルト。元は有能な広告マンだったが、今は失業中。2年も職を探しているがみつからない。あと数か月で破産。それでも妻のルイサ(サルマ・ハエック)とはまだ新婚夫婦のように仲が良い。

 旧友を頼って面接にいくが「友達だからと仕事をやれない」と冷たくあしらわれ、やけくそ気味に高速を爆走し、そのまま、妻との新婚時代の思い出のホテルへ行く。

 しかしホテルはすでに廃業していて、そこでは博物館を建設中だった。貴重な遺跡を揃えた博物館であり、ちょうど市長がマスコミを集めて博物館の素晴らしさをアピールしていた。

 意図せず群衆に巻き込まれてしまったロベルトはそのまま建設中の博物館の上階まで連れていかれてしまう。館内は通行規制がされておりしばらくは外に出ることができない。早く外に出たいロベルトは工事関係者以外は立ち入り禁止の階に行き出口を探すが、脚を滑らせ階下の広場に落下。鉄筋が後頭部に刺さって動けなくなる。

 事故はすぐに公となり、集まっていたメディアが動けなくなったロベルトの周りに集まってくる。救急車も到着するが、刺さった鉄筋は脳に達している可能性もあり、抜くと命が危ない。

 動けないロベルトの周りで、それぞれの思惑と欲に突き動かされた人間たちが右往左往する。

ネタバレあらすじ

 彼を助けるには遺跡を削るしかないとされるが、イメージダウンと遺跡に傷がつくのを恐れる市長は「人ひとりの命より遺跡が大事だ」と言う。

 広告会社の男がロベルトの元にやってきて「持ってくれているだけでいい。それで宣伝になる。」と妻のルイサにビールを渡したり、この状況を独占放送してカネ儲けをしようと企む。これにロベルト自身も大乗り気で、破産寸前から大金が手に入ると、頭に鉄筋が刺さったまま喜ぶ。
 「こんなときに何を言ってるの」と怒るルイサだったが、ロベルトは「子供たちの学費にカネがかかる。これで子供たちが良い人生を送れるんだ」と言う。そんなロベルトにイラつきながらも、あくまでも夫の命を心配するルイサ。

 テレビニュースは「建設中の博物館で男が自殺未遂」と報じられる。今朝、入社を断った旧友社長も「ウチが雇わなかったから自殺されたとなると世間体がやばい。すぐに彼を雇用しろ」と部下に指示を出し、そのためにひとりをクビにしたりする。

 ニュースキャスターの後ろでVサインをする群衆。彼を救出するために頑張る医者さえ、家族に「俺、テレビに映ってたか?ハンサムだったか?」と電話している。

 すぐに病院に搬送しようと主張する医師の提案に、広告マンは「ここに居てもらわないと困る。ここで倒れているから金になるんだ。」といい、市長も表向きは人命が第一とコメントするものの、裏では、良い観光収入になると算段している。

 テレビ局の大物にどうにか高く売りつけようとする広告マンは「人が死ぬところを独占中継できるんだぞ。」と交渉する。局の社長も「ぜひ買いたい」と言い出すが、金銭面で渋る。

 交渉がうまく進んでいないと聞かされたロベルトは、ルイサに「また失敗か。ずっと失敗ばかりだ。悪かった。」と謝るが、ルイサは「あなたの人生は失敗じゃない。私を、家族を幸せにしてくれたじゃない。成功なのよ。」と言う。現場には、彼らの息子と娘もやってきた。

 ルイサは、ついに広告マンを殴り、ひとりの女性キャスターに話しかける。彼女は小さな局のスタッフだったが、取材を進めながらもら妻ルイサのことを気にしていた。ルイサもそれを感じていて「同じ女性として」彼女に賭けた。「おカネはいらない。ただし、撮ったテープを私にちょうだい。彼の最後の形見になるかも知れないの」と独占取材を許可する。

 ロベルトには「20万ユーロになる」と嘘をつくルイサ。その言葉に「やった。これで家族を幸せにできる」と喜ぶ。そんなロベルトを抱きしめるルイサ。

 独占取材が行われ、ロベルトは「自殺未遂ではない。家族は幸せに生きている。家族がいなければ、私は生きていけない。」と語る。ロベルトの言葉に涙を流しながらマイクを向ける女性キャスター。同僚のスタッフに「これは仕事だ。後悔するぞ」と言われながらも、撮ったテープをルイサに渡し、その場を去る。

 医師団は、現場に臨時の手術室を作り、鉄筋を抜いて緊急手術を行う決断をした。希望は薄い。でもやるしかない。数名でロベルトを鉄筋から抜くと、ロベルトの後頭部からは大量の血が流れ出し、みるみる顔から血の気が失せていく。

 翌朝、ロベルトは死んだ。

 遠巻きに眺めていた群衆も静まり返り、それまでカネと欲に突き動かされていた人たちも複雑な表情を浮かべている。テレビ局の社長は取材テープを買い取るために大金をアタッシュケースで持参していた。

 大勢が見守る中、ルイサと二人の子供たちは悲しみながらも悠然と歩きだす。テレビ局社長に、一瞬、テープを差し出すような素振りをしたルイサだったが、大金が入ったアタッシュケースを思い切り蹴り飛ばし、踵を返す。

 怒りの表情で歩いていくルイサの表情から、エンドロール。

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つまりこういう映画(語りポイント)

 怪女優のイメージが強いサルマ・ハエックが普通の妻の役をやってるだけでちょっと意外。あり得ないくらいのスタイルも、今回はほぼ露出なし。冒頭の自宅のシーンで少し胸の開いた服を着ているところがあるくらい。それでも、観終わった後は「なるほど」と納得するキャスティング。役柄は違っても「カッコいいオンナ」な設定だったからです。ちょっと歳はとっちゃいましたが…。

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 物語は、資本主義や広告業界への皮肉。加えて「お金がすべて」な世の中や、自分の利益しか考えない人間たちを強烈に風刺。

 テーマは社会風刺と家族愛。

 頭に鉄筋が刺さって死にかけながらも、終始お金のことを気にするロベルトは「社会にすっかり痛めつけられ毒されてしまった庶民」でしょう。周りの人間だけでなく、刺さった本人までがそうであることが、この映画のポイントでもある。
 「そうじゃない人」は少なくて、妻ルイサと子供たち、女性キャスター、警備員、くらいか。そこがルイサの哀しさ、やりきれなさを最大限に助長させている。

 ルイサは、夫をそんな風に変えてしまった世の中に対して、心底憤っている。それでも、なにがあっても、あくまでも夫を愛している。「あなたの人生は失敗じゃない。わたしを幸せにしてくれたから。家族を愛してくれたから。」という言葉に嘘はなさそう。ルイサのぶれない姿勢がカッコいい。ラスト、大金入りのアタッシュケースを思い切り蹴り飛ばすところは痛快です。

 コメディと思って油断して見ていると、思いがけずシニカルなテーマを叩きつけられ、鈍器で頭を殴られたくらいの衝撃を受けるはず。もちろん、良い意味で。

 「世の中はお金がすべて。」は本当だ。放っておいてもいつかは死ぬ人間より古代の遺跡が大事なのも、ある意味事実だ。人間のちっぽけさ、人生の儚さを痛感して涙が出る。

 しかし、同時に「世の中、お金じゃない。」も間違いなく本当。強がりでもいい、理想でもいい、そんな想いが完全になくなったら、僕らはいよいよ「人間」ではなくなるのかも知れない。

 ラストカット、サルマ・ハエックの怒りの表情が、そのまま、この映画の「表情」でもある。