【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『マリリンとアインシュタイン』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『マリリンとアインシュタイン』
原題:Insignificance
1985年 イギリス
原作:テリー・ジョンソン
監督:ニコラス・ローグ
出演:テレサ・ラッセル、マイケル・エミル、ゲイリー・ビジー、トニー・カーチス、ウィル・サンプソン
 おススメ度★★★★☆(4/5)
 マリリン・モンロー(らしき女優)とアインシュタイン(らしき科学者)と、マリリンの夫であるジョー・ディマジオ(らしきプロ野球選手)マッカーシー(らしき上院議員)4名の、ホテルの一室での一夜の会話劇。原作は舞台脚本とのこと。
 彼らの栄光と苦悩をシュール&コメディタッチで描いていますが、最後にはやや予想を超えたショッキングな展開もあって驚きます。マリリンがエロくて良いです。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 映画の撮影現場。「七年目の浮気」(らしき映画)の撮影が行われている。マリリン・モンロー(らしき女優)が地下鉄の通気口の上に立ちスカートをまくりあげている。
 アインシュタイン(らしき科学者)はホテルに滞在している。マッカーシー(らしき上院議員)から、反共産主義の公聴会への出席を要請されているが断っている。
 マリリンの夫であるジョー・ディマジオ(らしきプロ野球選手)は、奔放な妻・マリリンに手を焼いているらしく、苦虫を噛み潰したような顔でバーで酒を飲んでいる。

 ※以下「らしき」割愛。劇中に役名は一切出てこないため、便宜上、マリリン・アインシュタイン・ディマジオ・マッカーシーとします。

 撮影を終えたマリリンは、送りの車から抜け出し、深夜の3時、ホテルのアインシュタインの部屋を訪ねる。マリリンは、野球ひとすじで学のない夫のディマジオが嫌いで、頭の良いアインシュタインに好意を抱いていた。

 アインシュタインの興味を引こうと、ホテルにある小道具を使って覚えたばかりの相対性理論の説明を始めるマリリン。

 以下、ホテルの一室での、ある一夜の出来事…。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 アインシュタインは、人気女優のマリリンが突然部屋に来たことに驚くが、彼女が頑張って相対性理論の知識を披露しはじめると、細かい部分を補足しながら嬉しそうにつきあう。

 どうして深夜の3時に?と聞くアインシュタインに「(毎日撮影があるので)私が自由になるのはこの時間だけなの。」と言う。

 しかし「君がここにいるなら僕はバスタブで寝る」と、間違いが起きるのを避けようとする。マリリンは「お話をしているうちに仲良くなれるかと思ったのに。」と残念がる。

 マリリンの回想では、子供の頃、友達数人に時計を奪われている。

 アインシュタインの時計は、なぜか8時15分で止まったまま。

 同じホテルの別の部屋では、上院議員のマッカーシーが商売女を部屋に招いている。

 マリリンに押し切られ、同じベッドで寝ることに同意したアインシュタイン。ズボンを脱ぐ。マリリンもドレスを脱ごうとした、その時、ホテルのドアが激しくノックされる。

 「誰だ?知り合いか?」と聞くアインシュタインに「56試合連続ヒットを打った男よ。」と答えるマリリン。

 夫のディマジオがシビレを切らし、マリリンを連れ戻しに来たのだ。最初は意味不明の外国語で応対してごまかそうとするが無理だった。部屋に入ってくるディマジオ。アインシュタインのことを「お前、精神科医だろ。」と言う。ディマジオによると、マリリンが精神科医に行くと、必ず翌週に医者のほうから誘いが来る。こいつが誘惑してるからに違いない。こいつは精神科医が好きなんだ、と言う。

 対するマリリンは「あなたはバカだから嫌い」と言い放つ。野球選手としてスーパースターのディマジオだが、マリリンはワールドシリーズの自慢話にはもう飽きたらしい。

 ディマジオは常にガムを購入し、おまけのカードに自分が出てこないかをチェックしている。野球選手の人気は野球カードに使われるかどうかでわかると言う。過去に4回ほどカードになったことが自慢だ。

 ディマジオはマリリンとの離婚についてすでに弁護士に相談もしていて、マリリンの素行だと問題なく離婚できると言われている。離婚するか?と迫るが、マリリンは嫌がり、ディマジオと帰ることにする。

 帰り支度でマリリンが洗面室に入っている間、男二人は、敵対心も消えた様子でしんみりと会話する。どうやら、マリリンは華やかな女優の姿とは裏腹にカラダがボロボロらしく、妊娠しても必ず流産してしまうという。

 案の定、洗面所で貧血を起こし倒れるマリリン。ベッドに寝かせる男二人。

 マリリンは妊娠しているらしく、ディマジオに「今度は大丈夫。産みたい」というが、ディマジオは「どうせ流産だ。」とあきらめている。

 朝方、マリリンひとりが寝ている部屋に上院議員のマッカーシーが部下を連れて押し入ってくる。ベッドに居るのがアインシュタインではなく、有名な女優にそっくりの金髪美人がいて驚くマッカーシー。裸にバスタオルだけのマリリンのカラダを舐めるように見つつ、アインシュタインの研究資料を押収しようとするマッカーシー。
 色仕掛けで書類を守ろうとするマリリンだが、マッカーシーに腹を殴られ「お前のカラダなんて書類一枚の価値もない」と言われる。

 ベッドにうずくまり苦しむマリリン。下半身から血を流れ出す。 

 戻ってきたアインシュタインはマッカーシーからの要請をあらためて断ると、研究資料をホテルの窓から捨ててしまう。

 部屋を出ようとするマッカーシーと、ディマジオが鉢合わせする。「どうして俺が妻の部屋にくるたびに違う男がいるんだ」と室内に押し戻そうとするが、アインシュタインが仲裁し、マッカーシーは去っていく。

 ディマジオはマリリンに「俺は頭の悪いフリをしていただけだ。もう頭の悪い会話はしない。やり直そう。」と言うが、またしても流産してしまったマリリンは希望を失くし、別れるという。
 「お前の希望はなんだ。」と聞くマッカーシーに「私はただ行きたいだけ。」と泣く。

 気を取り直したマリリンは、今日の仕事のために台本を持ちセリフの練習を始める。それを見ていたアインシュタインを、8時15分、いつものように幻想が襲う。閃光に散る広島の街。焼けただれる子供。「(私は)子供を殺した…。」とつぶやき震える。「貴方はそんなことはしてない。」というマリリン。
 アインシュタインは自分が開発に関わった原爆が、広島の惨劇を生んだ事実に苦しめられていた。
 幻想の中、ひっくりかえるホテルの部屋、マリリンが白い衣装ごと燃え上がる。

 幻想が終わり、マリリンは明るく「じゃ、行ってきます。バーイ♪」と手を振る。笑顔で手を振り返すアインシュタイン。

 

つまりこういう映画(語りポイント)

  終始、マリリン(らしき女優役の女優さん)がエロかわいい。

それだけでもホノボノと観ていられる。 

 劇中に、実名どころか役名も一切出てこない。役名がないのは舞台劇では良くあることで、役名がない理由は「必要ないから」という単純な理由である場合が多い。この映画の原作は舞台劇らしい。

 あくまで「らしき」人たちの物語。

 マリリン(らしき女優)は、その美貌とエロさを武器にした処世術には長けているのだが、反面、実はカラダが弱く、忙しい女優業をこなすうち、精神的にも問題が生じていた。妊娠しても必ず流産してしまう。
 
 ディマジオ(らしき野球選手)はもちろんワールドシリーズでも活躍したスーパースターなのだが、野球以外の世界を知らず、妻のマリリンに「バカは嫌い」と言われている。

 アインシュタイン(らしき科学者)は、核開発に関わってしまったこと、そのために広島の子供たちを殺してしまったという後悔と、朝8時15分に見る「焼け落ちる町」の幻想に苦しんでいる。

 「栄光の裏には苦悩がある」という構図はわかりやすい。

 ただ苦悩を描いているだけなら観ていて苦しかったはずですが、僕は「それぞれに生き方(活き方)はある」というポジティブなメッセージにも思えました。

 マリリンは色気以外に取り柄がなくても、女優で成功してる。ディマジオはバカでもいい、ホームランが打てればスーパースターだ。アインシュタインは研究が不本意に使われることに目をつぶれば、それで好きな宇宙の研究に没頭することもできる。彼らはそれぞれに多大な幸せを手にしている。

 それが並みの成功ではないから、反動による苦悩も大きくなるだけのこと。バランスはとれているのです。

 SNSで他人のリア充をうらやみ、まるで自分が無能な人間のように思えて落ち込む現代の人々への「君らしく生きればいいじゃないか。」的なメッセージにもなるのではないでしょうか。

 そして、一旦は3人の中で「前向きに生きて行こう」という結論に帰着しかけた時に、すべてをぶち壊しに登場するのが、マッカーシー(らしき上院議員)。これはもう「理不尽」「権力」を象徴するメタファー的存在でしょう。

 ただ利益を追求する彼の前では、マリリンの色仕掛けも通用せず、妊娠しているお腹にパンチを喰らい苦しむ。アインシュタインは、自らの研究を「彼らに渡すくらいなら」と窓から捨てるしか抵抗の術を失くす。

 どう転んでも抵抗できないなにか大きなもの。
 その下で苦悩するちっぽけな人間たち。

 ラスト近くのアインシュタインの幻想シーンは、コメディらしいラストを想定して観ていただけに、そのショッキングな描写に驚く。特に日本人の僕らにとっては衝撃的だ。

 が、それも、その後にすかさず挿入される数秒のカットに救われる。

 明るく「バーイ♪」と部屋を出ていくマリリン。それに応えるアインシュタインの笑顔。すかさず流れるポップなエンディング曲。その間、3秒くらいか。
 まるで「湿っぽく考えてるヒマはないぜ。明るく行こう!」と言われたかのように、一転して心地良くなる。

 陽と陰のバランスが良く、テーマの割りに決して暗くならない。

 終始「見せそうで見せない」マリリンの健康的なエロさもGOOD。

 おススメの良作。  

 ちなみにエレベーターボーイ役の俳優さんは「カッコーの巣の上で」のチーフ。