【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

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3分で映画『待つ女』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『待つ女』
原題:7ans
2006年 フランス
監督:ジャン=パスカル・アトゥ
出演:ヴァレリー・ドンゼッリ、ブリュノ・トデスキーニ、シリル・トロレイ
 おススメ度★★★★★(5/5)
 七年の刑期で服役中の夫。面会に通う妻。妻の浮気相手は看守。異常な三角関係には、想像のはるかナナメ上を行く事情があって…。かなりマイナーなフランス映画、おそらく、今後この映画が世間で話題になることはないだろうけど、機会があれば、ぜひ観ていただきたい「男女の在り方」を問う秀作。エロいです。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 夫が七年の刑期で服役中のメイテ。

自宅でアイロンがけをするメイテ。荷物を持って出かけた先は…刑務所。夫への面会だった。しかし、夫・ヴァンサンは面会禁止になっていた。

 刑務所の前でメイテに話しかける見知らぬ男。懲役7年の兄が中にいるという。メイテは相手にせず去っていく。

 翌朝、ひとりの部屋で起きるメイテ。憂鬱な表情。アルバイト先の保育施設で、友達の子、ジュリアンと遊ぶ。

 夫と面会。前回は食堂で喧嘩をして独房に入っていたらしい。新しい仕事をみつけたと報告するメイテ。

 夫のいない日々が続く。時折、香水の匂いがする夫のシャツを嗅いで寂しさを紛らわす、孤独な日々。

 面会。「スカートの下は何を履いてる?ノーパンか?」と聞くヴァンサン。メイテはヴァンサンにキスをするが、監視係のおっちゃんが遠慮がちにノックをして二人をけん制する。

 外。また、いつかの男が話しかけてきた。寂しさに負けたのか、メイテは男の車に乗る。男の名はジャン。車内で股間をさわる。恍惚の表情を浮かべるメイテ。

 帰宅すると、友達が子供を連れて遊びに来た。「彼氏や愛人はいないの?心のやすらぎは大事よ。」という友達。

 ジャンとカーセックスしているメイテ。完全なる浮気。帰り際「話がある」と呼び止めるジャン。ジャンは「本当は看守なんだ。」と告白する。

 メイテに声をかけてきた浮気相手は、夫の刑務所の看守だった。

 ▼▼以下ネタバレ▼▼

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ネタバレあらすじ

 面会。教習所に通いだしたと言うメイテ。でも成績が悪い。昨日は「止まれ」の標識を見落としたというと「考えずに条件反射で止まるのさ。」と言うヴァンサン。残り1分が告げられるが「新しい面会担当には気に入られてるみたいだ。だからあと数分大丈夫」。

 面会担当の看守は…ジャン。ジャンの顔を見て動揺を隠すメイテ。

 メイテは怒っていた。面会後、ジャンが外で待っていて「七年、一緒に過ごせるじゃないか」と迫るが「嫌よ。夫を愛してる。」と早足で去るメイテ。

 夫のシャツの匂いを嗅ぎながら、自慰をするメイテ。

 面会。明日で服役が一年になる。履いていたパンティを脱いでヴァンサンに渡すメイテ。「食費に100ユーロ入れてある。苦労はさせない」と言う。外に出ると、ジャンが車で待っていた。車に乗るメイテ。森の中に車を止めている。(おそらく)愛し合っている。

 ヴァンサンの昔の友達に会いにいくメイテ。「もう足を洗った」という友達は、元・クスリの売人だったようだ。「緊張をほぐすのに必要なの。」とお金を渡すメイテ。

 刑務所内の喫煙所。煙草を吸いながら話しているジャンとヴァンサン。「捨てられるのが怖い。子供もいないし。」と不安な胸中を吐露する。黙って聞いているジャン。ヴァンサンは以前にメイテの写真をジャンに見せたことがあった。「いい女だろ?もう一回(写真を)見るか?」というが。「もう百回は見たからいい」というジャン。

 また「妻の香水は刺青のようだ。クリスマスに買った高いやつ。俺のシャツにもいつも香りが移っていた。」と話す。

 シャワーを浴びているヴァンサンを「早くしろ」とせかすジャン。「ゆっくりさせろよ。デートの予定でもあるのか?」と言うヴァンサンに、図星なのか、動揺した素振りのジャン。

 自宅で香水の瓶を割ってしまうメイテ。もったいないとばかり、こぼれた香水を首筋にたくさんつける。
 
 刑務所、昼飯の時間。ジャンが近くにいるときに「今日のメシは香水の香りがするな」と意味ありげに言うヴァンサン。

 身体検査で、ヴァンサンが持っていたクスリがみつかった。メイテからの秘密の差し入れだった。「彼女も(犯罪者にして)道連れにする気か」と怒り、クスリを没収するジャン。

 メイテに会い、ヴァンサンが持っていたクスリを手渡すジャン。メイテは「いい加減に理解して。私は夫を裏切れない。嫌なら別れて。」と言う。
 面会。妙にジャンの話題を出すヴァンサン。どうやら気付かれていると感じたメイテは「話がある」と立ち上がるが、ヴァンサンは「聞きたくない」と去っていく。

 カーセックスをしているジャンとメイテ。ジャンはメイテが声を出さないことに不満なのか「あえがないのか?」と言うが、それは、二人の情事をテープレコーダーに録音していたからだった。レコーダーに気付いたメイテが「どうしてそんなことを?」と聞くと、ジャンは「ヴァンサンに頼まれてる」と答える。

 面会。いきなりメイテに張り手をかますヴァンサン。「わかってるな」というとメイテは無言でうなづく。

 部屋でレコーダーの音声を聞いているヴァンサン。隣にはジャンがいた。「お前の声ばかりじゃないか。愛撫が足りないんだ。最初は舌で愛撫するんだ、俺みたいに。」と文句を言う。

 

 部屋でひとり。突然泣き出すヴァンサン。叫ぶ。また泣く。

 今度は堂々とレコーダー回してカーセックスするジャンとメイテ。
 
 面会。免許の試験は落ちたという。理由は犬をひいたため。

 ジャンの自宅を探し出したメイテ。「ここはダメだ」というジャンだが「抱いてほしいの」というと、メイテは部屋に入ってどんどん脱いでいき、裸でベッドにうつぶせになる。「そのままやって」。「こんなの君じゃにない。娼婦みたいだ。」というジャンに「夫とアナタがそうさせたのよ。」という。

 結局、ベッドで愛しあうが、途中でやめて録音を止めるメイテ。「夫のためにやってるの?」「僕たちだけのためだ。」と癒しあう二人だったが、メイテが「録音を夫に聞かせたい…」とつぶやくと、ジャンはいじけてしまい「帰ってくれ」と言った。

 帰り際、ジャンのコートから車のキーを持ち出すと、勝手に車を拝借し、山道まで走っていく。しかし、山道で居眠りしているところを警官にみつかり、無免許運転で捕まってしまう。拘置所まで迎えにくるジャン。「ひとりでいるな」とメイテの家まで来て、中にあがる。しばらく無言で居たが「…帰る」と言い出ていく。

 刑務所内。「いつ妻とあう?」「もう会わない」「約束したろ。関係を続けろ。」と言い合う二人。ジャンが「彼女は空っぽだ おまえのせいだ」と責めると、ヴァンサンは「メイテは常に俺の味方だ。お前は制服を着たただのペニスだ」となじり、取っ組み合いのケンカになる。他の刑務官が来て止める。事情を知らない刑務官は「懲罰だ。」と意気込むが、ジャンは不問にすると言う。

 面会…に来ていないメイサ。

 ヴァンサンが入院している。見舞いに来たジャンはレコーダーを返す。どこかに行ってしまったらしき妻の行方を聞くヴァンサンだが、ジャンは「本当に知らない」という。「探せよ」というヴァンサンだが、ジャンは別の刑務所への異動が決まったらしい。ジャンは「気をシッカリもて。」と言って去っていく。

 列車に乗っているメイテ。ジュリアンをつれてスキー場に来ていた。
そこにジャンが来る。友達に居場所を聞いたらしい。異動になると告げるジャン。 メイテは、ヴァンサンが自殺未遂を起こしたと聞いて動揺する。
 「自業自得だ」というジャン。「捨てられたら楽なのに。でも忘れられない。」とメイテは言う。「(ここに来たのも)夫に頼まれたの?」と聞くとジャンは否定し「お別れをいいにきた。」と言う。二人はロッジのベッドで愛し合う。

 ジャンの去り際、メイテは「聞きたいことがある。夫の服役の理由を知ってるの?」ジャンは「犯罪履歴は知らない」と言い、去る。

 面会に並んでいるメイサ。呼ばれる順番が早くなっている。メイサの後にも、いつものように、面会に並ぶ「待つ女」たちの姿…。

 つまりこういう映画(語りポイント)

 これぞフランス映画という趣き。

 冒頭から、メイテが無言でアイロンがけをするシーン。その後も、夫のシャツの匂いを嗅ぎながら自慰をするとか、セリフがなくとも、メイテが夫を愛していることが充分に伝わってくる。言葉ではない映画言語のオンパレード。

 説明も最小限に抑えてあり、普通に考えたら理解不能な「異常な三角関係」の中、半ば観客が想像するしかない「三人の心情」が、この映画のミステリーになっている。

 簡潔に流れを書くと…七年の刑期で服役中の夫、週2回の面会、妻を誘惑する男、浮気相手は看守だった、情事の声を録音する男、しかしそれは夫の指示でやっていたこと、妻が他の男に抱かれている声を聞く夫、事実を知る妻、本気になってしまう男、精神的に壊れてくる夫、妻が面会に来なくなり夫は自殺未遂、男は他の刑務所に異動、妻と男別れる、再び面会に通いだす妻。

 謎…ヴァンサンの服役の理由。

 劇中、夫が何故、七年の刑期を受けているのかについては言及されない。そこに、なにかしらの事情がありそうな描写が、ラスト間際にあります。。

 ジャンが別れを告げて去っていく時「夫が服役した理由(罪)を知ってるの?」と聞きます。ジャンが「罪の内容は知らされない」と答えると、どこか安心したような表情になる。わざわざ走ってきて、男を引き留めてまで、それは、是非聞いておかなければいけない事だった。僕にはそう見えました。

 うがった見方をするなら、例えば「メイテを助けるために服役した」「メイテの家族をかばって服役した」等、つまり「人として、絶対に裏切れない義理」が絡んでいるのではないか、と推測できる。

 妻は「夫を捨てることができなら、どんなに楽か」と言います。ただ愛しているから、夫だから、だけではない理由がきっとある。

 そもそも「なにかしらの事情」が前提にあると考えれば、夫の理解不能な行動も、少しは辻褄があってくる。  

 夫・ヴァンサン

 行動原理は「妻を愛する想い」と「妻に愛されていることを確認し続けたい想い」「妻に捨てられるかも知れない不安を解消したい。」

 最初からヴァンサンがすべてを仕組んだのか、浮気に気づいて途中から指示したのか、どちらにも取れるのですが、いずれにしろ「妻に張り手をくらわす」「看守に指示をする」行動は『支配欲』。妻が自分を見捨てるのではないかという不安を解消したいがために、自分が掌握できる範囲の中で、妻の性欲を(他の男を使って)満たす行為は、インフルエンザの予防接種のようなもの。微量の毒をもって免疫を作るという発想だったのかも知れません。そこには「最終的には、妻が俺を裏切るはずがない」という「うぬぼれ」があった。ヴァンサンの一番の失敗要因は「うぬぼれ」にある。

 「妻が他の男と浮気している声を聞いて何が嬉しいの?」と普通は思います。もちろん僕もまったく理解できない。ただ、世の中には「寝取られ願望」なんてものもあり、それはほんの少し、ほんの少しだけ、理解できなくもない。

 ともあれ、そんな彼の強気な想いは「妻が面会に来なくなった」という事実ひとつで、人生を悲観して自殺未遂を起こすまでに急落する。極めてもろいものだった。

 看守・ジャン

 ジャンは比較的マトモな感覚を持っている。常に罪悪感を感じながら行動し、妻メイテを本気で好きになってしまったのは、肉体だけの関係に耐え切れず、心を求めたから。非常にマトモな心理。メイテが「録音を夫に聞かせたい…」とつぶやいたのを聞いて、あからさまに嫉妬するところも、きわめて普通の感情。彼がマトモであり大人であることが、映画の救いになっている。

 妻・メイテ

 夫を愛しているのは最初から最後まで変わらない…のだけど、上記のように「どうしても夫を捨てられない、なにかしらの事情がある」「愛し続ける義務に縛られている」と考えると、身体だけではなく、本当は心までジャンに傾斜したかったが必死に我慢して耐えていたのも理解できる。それがわかる描写としては、メイテはジャンに抱かれながらも「決して喘ぎ声を出さない。」

 彼女の中には、ジャンへの肉体的な愛と、ヴァンサンへの精神的な愛が混在していて、その距離感が彼女を苦しめる。ジャンとの別れを決意したとき、それまで抑えていた「喘ぎ声」を解禁。それは、最後にしてやっと心のあるセックスを満喫しましたの巻。「もう大丈夫。これが夫を捨てることにはつながらない」との安心感から。

  セックスは心が伴うから気持ちが良いもの。精神的な満足感ありき。だから、自分たちの行動を正当化したい気持ちも含め、どんな経緯であれ、人はそこに「心」を求める。それゆえに苦しむ。

 映画が言いたい事は、結婚も恋愛も含めて「男女の在り方に対する問いかけ」でしょう。最終的に、メイテが夫の元に戻っていく結末が救いではある。

 教習所に通うがなかなか免許がとれないメイテ、無免許運転でつかまるエピソードは、男に従属するしかできない、自立できない女たちのメタファー。

 激しいエッチシーンがあるわけではないけど、ところどころで出てくるセックス描写がめちゃくちゃエロい。地味にリアルだから、逆にエロい。

 マイナーなフランス映画で、おそらく、この映画が今後注目されたり世間で話題になることはないでしょう。でも、相当に良くできた秀作。機会があれば、いや、機会を作ってぜひ観ていただきたい映画です。