【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『42~世界を変えた男~』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『42~世界を変えた男~』
原題:42
2013年 アメリカ
監督:ブライアン・ヘルゲランド
出演:チャドウィック・ボーズマン、ハリソン・フォード
 おススメ度★★★☆☆(3/5)
 人種差別の本質を描いた作品…とも言えますが総合的には、可もなく不可もなく楽しめる映画。

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◆目次

 

簡単にいうとこんな話(ネタバレなし)

 1947年、ドジャースのGM・リッキーは、意図的にチームに黒人を入れようと提案する。見出されたアフリカ系アメリカ人のジャッキー・ロビンソンが、差別や偏見と戦いながら一流になっていく話。 

ネタバレあらすじ 

名門ドジャースのGM・リッキー(ハリソン・フォード)は、チームに黒人を入れようと思い立つ。「これから野球界は変わっていく。その先陣を切る」という事だった。チーム内外で反対の声が噴き出る中、ジャッキー(チャドウィック・ボーズマン)とマイナー契約をする。
 ジャッキーを呼んだリッキーは「これから大変な目にあうだろう。ひどい野次は当たり前。ホテルに君の部屋はないし、シャワー室では避けられる。悔しい想いをすることになるが、耐えられるか?」と聞く。
「やり返す勇気もない男になれってことですか?」と詰め寄るジャッキーに「やり返さない勇気を持つ男になれ。」と諭す。

 飛行機のチケットを購入しようとすると「もう売り切れた。」と言われるが、その横で白人が席を確保して搭乗口に向かうのが見える。仕方なしに丸一日かけてバスでフロリダへ向かうジャッキー。彼を迎えたのは黒人の記者。リッキーから、ジャッキーの記録係と世話係を頼まれたという。
 オープン戦で活躍したジャッキーに、メジャーであるドジャースへの昇格の話が出るが、ドジャースのチーム内では「黒人をチームに入れるな。」という嘆願書への署名が集められていた。それを知ったドジャースの監督は深夜に選手を食堂に集め「黒だろうが黄色だろうが縞模様だろうが、勝つために彼をチームに迎え入れる。文句あるか。」と一喝する。
 ドジャース入りしたジャッキーだが、特に差別意識が根強い地域へ行くと選手全員のホテルが「黒人がいるから」という理由でキャンセルされていたり、相手チームの監督に執拗に野次られたり、内角攻めを食らったり、向かい風にさらされる。

 吹き荒れる論争や世論を背に受けて、時にはダッグアウトでバッドを叩き折って泣き崩れることもあったが、チーム内外に常に仲間や味方はいてフォローをしてくれる。どんどんとジャッキーを受け入れるチームメイトたち。野次やひどいプレーに対して「報復してやる。次の打者の頭を狙え。」などと息巻くチームメイトに「報復はするな。アウトにするんだ。勝つんだ。」というジャッキー。
 ドジャースは優勝します。めでたしめでたし。

つまりこんな話(語りポイント)

 人種差別を題材にした感動映画はアメリカで定期的に作られる。奴隷制度を描いた映画なら、まずはとことん迫害に遭い、誰もが「酷い」と感じる状況があり、そこから頑張る姿を描くのだけど、この映画が違うところは、あくまで野球の話であり史実を割りとクールに描いているところ。登場人物がほぼ実在の人なので、あまり悪者にも描くわけにいかない…という事情もありそう。
 最初から、ジャッキーは恵まれている。まずもって最高責任者であるリッキー(ハリソン・フォード)が絶対的な味方として存在するし、早い段階で、黒人排除の嘆願書に署名を集めている選手たちを、監督が一喝するシーンがある。つまり、権力を持った人たちが最初から仲間なんですね。
 チーム内でも、街中でも、優しい言葉をかける白人も常に何割か居て、メジャーに昇格したときには記者がこぞって取材に来る。スターなんです。決して寄ってたかって酷い目に遭わされているわけではないのです。ひどいのは「野次」くらいのもの。


 …と、あえて書いたのですが、その「ひどいのは野次くらいのもの」「たいして酷い目にあってないじゃん。」というのが、僕のような、島国で育った黄色人種の、人種差別を実感として知らない者の短絡的な感想なのです。そして、そこが差別というものの最も重要な問題かも知れない。

 当の本人にとって「野次くらいのもの」がどれほど心を傷つけ、人間の尊厳を冒涜するものなのか…は、当事者にならないとわからないのだと思います。

 誰もが「かわいそう」と言う状況って、意外に幸せなのです。だってそれは「痛みを理解してくれる人がいる」ということだから。

 それより本当に辛いのは「たいしたことないじゃん。」「なに腐ってるの?頑張ればいいじゃん。」などと軽く言われてしまうこと。痛みの本質を理解されにくいことが、人間にとって一番辛い。

 どれだけ仲間がいても、励ましてくれる人がいても、根本的に人の尊厳に係わる部分で、我が身を罵倒する人間がひとりでも存在したら、それは「それだけで」耐えられないくらいのストレスになる。

 そういう意味で、人種差別の本質をかなりリアルに描いた映画なのかも知れない…と推測してます。推測するしかできませんが。

 最初のほうに出てくる「やり返す勇気のない男になれっていうんですか!」の問いに対するハリソン・フォードのセリフ「やり返さない勇気を持て。」なんて言葉はとても良いセリフで、普通は心に刺さる名言なのだと思います。ただ、それさえ、当事者にとってはどう感じるのか。あまりに説教くさい言葉は、時には机上のキレイごと…にしか聞こえない場合がある。

 その答えは後半に出てくる。相手監督のひどい野次に、ダッグアウトでバッドを折って泣き崩れるジャッキーは、同じようなそれっぽい言葉をかけたハリソンに「あなたは差別されたことがありますか?」と言う。
 ハリソンは「ない。ないからわからない。」と肩を落とす。一番好きなシーンでした。

 人種差別ってなんなのか?実感として理解できない環境に育った僕ら日本人には、この映画のことを語る資格なんて、本当はないのかも知れない。