【映画で語ろう】カムシネマ★3分で語れるようになるポイント【ネタバレあらすじ】

映画を観たなら語りたい。映画の紹介から、ネタバレあらすじ、著者の独断と偏見による「語りポイント」まで。

3分で映画『26世紀青年 ばかたち』を語れるようになるネタバレあらすじ

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基本データ・おススメ度

『26世紀青年』
原題:Idiocracy
2006年 アメリカ
監督:マイク・ジャッジ
出演:ルーク・ウィルソン、マーヤ・ルドルフ、ダックス・シェパード、テリー・クルーズ、アンソニー・“シトリック”・カンポス、ジャスティン・ロング、アール・マン
 おススメ度★★★☆☆(3/5)
 「26世紀、人類はみんなバカになっていた。」という設定のブラックコメディ。愚かな人間や現代社会に対する風刺が強烈に効いている。笑えるだけでなく、妙に納得できる未来描写や、最後はちょっと感動もありの傑作。トランプが大統領に就任した時、この映画が話題になったとか。なるほど。

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◆目次

あらすじ(ネタバレなし)

 2005年。軍部は極秘に「人類冷凍保存実験」を行おうとしていた。成功すれば人間の永久保存が可能になる。

 被験者に選ばれたのは2人。男はジョー。特に野心も欲もなく普通に働く男。被験者に選ばれた理由も「なにからなにまで普通だから。」だった。加えて「一人っ子、家族なし」であり理想的な被験者だという。

 女はリタ、売春婦。マネージャーであり彼氏でもあるアップグレイドという男を怖がっていて、カラダを売っては男に貢いでいる。彼女もまた家族がなく孤独だった。リタは実験に協力する交換条件として起訴の取り下げを要求した。

 実験期間は一年。「じゃ一年後に会おう」と棺桶に入れられ冷凍にされる二人。が、直後、担当の将校がワイセツ罪で捕まり、それをきっかけとして一年と待たず軍は壊滅。実験は放置されたまま忘れ去られていった。

 二人が目を覚ましたのは2505年。500年も冷凍保存されていたジョーたちが見たものは「人類がみんな救いようのないほどバカになっている世界」だった。

==以下ネタバレ==

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ネタバレあらすじ

 廃墟となった元・軍の建物の敷地で目覚めたジョーは、わけもわからず町をさまよう。

 2005年以降、科学は進化し、世の中はどんどん便利になっていった。しかし進化と知能は比例しなかった。コンピューターの発達により考える必要のなくなった人間の知能はどんどん低下していき、発達した科学や知識は、薄毛の研究や男性機能の改善にばかり注がれるようになった。今や知性人は絶滅危惧種だ。

 バカになった人類は、欲望に任せて誰とでもどんどん子供を作っていき、めちゃくちゃな家系図になっている。

 テレビ番組もお笑いばかりになり、街のカフェのメニューは「手コキ・ラテ」「セックス・コーヒー」的に、必ず性風俗と合体した商品。

 人々の言葉は乱れ、ギャル語やスラングが当たり前になっているため、ジョーの話し方は相手にはカマ言葉に聞こえた。具合が悪くなり病院へいったジョーだが、そこはまるでディズニーランドのミッキーの家みたい。検査や治療ももちろん適当。今年のオスカーを独占した映画は、ただお尻を90分間映している「ケツ」という映画だった。

 ATMをいじっていて逮捕されるジョー。裁判にかけられるが、裁判官も弁護士もみんなバカなのですぐに有罪になり、刑務所に送られる。

 一方、リタは女を売りに稼ぐことがバカ相手には絶好だと気付き、町の男に適当なことを言っては、一切ヤラせずにおカネだけ払わせる手口で、当座のおカネを得ていた。
 
 ジョーは刑務所で罪人判別用のタトゥーを入れられ、知能テストを受けるが、小学校低学年レベルの簡単なものだった。脱走するのも簡単だった。看守もみんなバカだからだ。あっさり逃げ出したジョーは。自分を刑務所に入れた弁護士に文句を言いに行く。

 フリートは、弁護士とはいえ見た目はただの遊び人の若者。もちろんバカ。ジョーは「2005年から500年もたってるんだ、タイムマシンくらいあるだろ?」と聞くと、フリートは「ある。ただし料金が高いし、ここから遠い。」と答える。ろくに計算もできないフリートに適当なことを言って「80億ドル儲かる」と嘘をつき味方につける。警察が追って来るが、フリートがごまかした。

 フリートの車でタイムマシンのある場所に向かう途中、街でリタをみかけた。合流。しかし、ジョーのタトゥーが検知器にひっかかり警察にみつかってしまう。車を捨てて逃げるジョー。リタとはぐれてしまう。

 再び警察に捕まったジョーは、ホワイトハウスに連れていかれる。知能テストの点数が物凄く「天才がいる」とされ、大統領が興味を持ったという。プロレスの大会で四回も優勝したという黒人マッチョの大統領が登場し、ジョーに「内務長官になってくれ」と依頼するが、ジョーは「そんなことはできない。そして天才でもなんでもない。」と断る。

 大統領の演説。食料不足、砂嵐に悩まされる街…、解決されない問題点に群衆がブーイングをあげる中、「解決方法がある。知能が桁はずれな男がいある。そいつにすべて解決させる。もう大丈夫だ。約束する。できなかった場合は男を処刑する。」と宣言。喝采する群衆。

 ジョーはひとまず大統領の依頼を請けたフリをしながら、なんとかタイムマシンの場所までたどり着こうとする。

 そんな中、食糧難や砂嵐の理由が判明する。ブローンド社が自社商品であるゲータレードを売るために、世界保健機関を買収し「水は害だ。飲んではいけない。水を失くす。」と嘘の情報を世界中に流布したらしい。
 そのため、世界中の人の飲み物はゲータレードになり、植物に与えられるのも水ではなくゲータレードが良いとされた。 

 それによって草木が絶滅し、食糧難と砂嵐を発生させたのだった。

 

 ジョーは「作物を育てるには水が必要だ!」と訴えるが、理屈で説明しても誰も理解できないため「俺は植物と話ができる。彼らが水がいいと言ってる」と説明すると誰もが納得した。

 ホワイトハウスの部屋でジョーとリタが休んでいる。リタは「アインシュタインも民衆をバカだと思っていたのかな?だから原爆を作ったのね。」と言う。そこに、民衆が大挙して抗議に来る。ジョーの施策により、ブローンド社のの株価が暴落、国民の半数が失業したらしい。

 また刑務所に入れられるジョー。

 疲れたジョーは、リサに「フリートに頼んで君だけタイムマシンで帰れ」「2005年の人たちに、ちゃんと勉強しろ、本を読めと伝えてくれ」と言う。
そしてリサには「なにがあっても絵を描き続けろ。」と。

 ジョーは、格闘ゲームのようなシチュエーションで処刑されようとしていた。処刑は、ブローンド社提供のテレビ番組で生中継されている。

 2005年に戻る準備をしているリサ、そこにフリートが来てテレビをつける。ジョーの処刑を知る。畑から出てきた芽をもって会場へいき、大統領に「見て。ジョーは正しかったの」と訴えるが聞いてもらえない。

 ジョーの相手はビーフストリームというラスボスになった。

 マイクを持ったジョーは、観衆に「僕は君たちを助けようとした。失業のことは知らなかった。助けようとした人間を殺すような世界に住みたいか?水をやれば作物はできるんだ。」と叫ぶが、観衆は言っている意味がわからない。

 偶然、畑に芽がでている光景が会場に映し出される。映像で見て、ジョーの言葉を理解した観衆。ジョーにトドメをさそうとするビーフを、大統領が殴り倒し「たった今、恩赦を出す。こいつは無罪だ」と宣言する。

 無事に無罪となり、タイムマシンで帰ることにするジョーだが、リタは
「私は残る 昔の荒れた生活に戻りたくない。この時代でイチからやり直す。スターバックスででも働くわ。」と言う。しかし、解決方法がなく困っている人々を放っておけなくなった、ジョーもこの時代に残る決意をする。

 しかし、結局、フリートの言っていたタイムマシンとは遊園地のアトラクションのことだった。タイムマシンは最初からなかった。

 ジョーは大統領に、リタはファーストレディーになった。

 ジョーとリタの3人の子供は世界一賢い子になった。副大統領になったフリートには8人の妻と32人の子供ができた。世界一アホな子たちだった。
 
 ジョーの演説。「僕らの時代には知能があった。でも残念ながら、使い方を間違えたようだ。これからみんなで勉強しよう。そして今度こそ正しい世の中を作っていこう!」拍手喝采する民衆たち。

つまりこういう話(語りポイント)

 コメディではあるが「人間がバカになったらこうなる」描写に妙にリアリティがあって笑えます。

 求めるものは快楽のみ。支配するのは暴力。バカだから扱いやすい群衆。プロレス出身のマッチョが大統領なのも「権力=暴力」のメタファー。

 「男どもを動かすのはおカネとセックス、そして暴力。」「テレビは低俗なお笑いばかりになる」なんて、2505年を待たずとも、2017年現在でも似たようなものだ。アメリカ大統領はドナルド・トランプだし。支配者たちの真意を理解できないまま情報操作されて喜々として従う民衆も。

 「現状への警鐘」という風刺劇の基本。何も考えずに笑って観ていても、なにがどう風刺なのかがわかりやすい。

 主人公たちの「この時代に残る」という最後の決断も充分に理解できる。

 ジョーとリタ。現在の生活や現状に行き詰まり、孤独に震えながら生きていた人たちが、騒動に巻き込まれ、そこで仲間ができ、なにかしらの問題と対峙することで否応なしに頑張らばきゃいけなくなると。結果、あらたに生きる希望を得ると云う構図も、観客に夢と勇気を与える映画の王道的な手法。

 ハチャメチャなブラック・コメディではあるけども、映画の作り方としては、意外なほどしっかりしている秀作。